同業他社で「おもてなし規格認証」というマークを入り口に張っているところがあります。興味があるので詳細について教えてください。(リフォーム業)
「日本再興戦略2016」では名目GDP600兆円に向けた成長戦略を掲げていますが、その達成のためにはGDPの約75%を占め、その規模が今後も拡大すると見込まれているサービス産業の強化が必要不可欠です。
ところが運輸や卸・小売り、宿泊、飲食、医療、介護・保育などのサービス産業は、対人コミュニケーションを基本とするだけに、どうしても製造業などに比べ労働生産性が低く推移してきました。そこでサービス産業の生産性底上げを目的とする施策の一つとして8月から開始したのが、サービスの質を見える化する仕組みである「おもてなし規格認証」制度です。
認定を受けようとする事業者は、認定機関である一般社団法人サービスデザイン推進協議会が開設しているホームページを通じ、「クレジットカード決済に対応しているか」「外国語でサービス内容を説明するツールや表示を用意しているか」「お客さまや従業員の健康に配慮した取り組みをしているか」など30の認証項目について自らチェックします。このうち15の項目について条件を満たしている、あるいは今後の取り組みを予定していれば無料で認定を受けることができます。認定を受けた事業者は認証マークと「おもてなし規格認証登録証」の電子データが送信され、フロントや受付、自動ドアなどの入り口に掲出したり、名刺や会社パンフレットに自由に記載したりすることができるようになります。
建設業や税理士事務所も登録
制度を開始してから2カ月が経過し、これまで約1400件の登録がありました。3分の1を占めた宿泊や飲食産業、15%程度の生活関連サービス・娯楽産業などが上位となりましたが、以外なところではリフォーム業を含む建設業、運送業や税理士事務所などからも登録がありました。「おもてなし」でイメージしやすいホテルやレストランを展開する事業所にとどまらず、対人コミュニケーションが重要視されるすべての業種に関係する認証制度といえます。
またこの制度は来年度から、「ミシュランガイド」のようにサービスの質がランクアップする仕組みを予定しており、将来的にはISOのような国際規格化を目指しています。
この認証を取得した企業は、認証項目をチェックすることで、自分たちの強み・弱みを把握し、自社のサービス水準を「見える化」することができます。
さらに認証制度の有無で消費者がサービスの質を判断するようになれば、他社との差別化にもなります。チェックする認証項目にはインバウンドやITについての項目が多いので、インバウンド消費の拡大や海外展開への布石としての活用も期待できるでしょう。
また登録証に記載するチェック項目は従業員が目で見て確認できますので、経営戦略を共有することによるモチベーション向上も見込めます。安倍晋三首相もスピーチで「30万社の認証取得を目指す」と発言しています。生産性の向上を目指すサービス産業の経営者は取得を検討してみてはいかがでしょうか。