縁の下の力持ちといえる試験機器製造業。半世紀以上の業歴をもつ関西機器製作所は業界内で名前の知られた存在だ。2年前に代表に就任した安田勝則社長は最新業績をタイムリーに把握し、社員に粗利を公開して打ち手を討議させるなどの改革を施してきた。粗利率の向上にとどまらず、社員の計数意識の醸成、残業時間の削減まで大きな効果が得られたという。

産業の土台をささえる500種類の試験機を生産

関西機器製作所:安田社長(中央)

関西機器製作所:安田社長(中央)

──長い業歴をお持ちだとか。

社長 祖父が試験機器の製造販売を始めたのが1951年。以来、コンクリート強度試験機、道路用アスファルト耐久試験機などさまざまな試験機を製造しています。建物や道路を新たにつくるとき、地盤となる土やアスファルトの強度試験が欠かせません。当社の試験機は液状化が起こるメカニズムを研究したり、道路の経年劣化に伴う強度調査などに用いられています。近年ではマンションの耐震偽装が問題となり、性能試験の重要性があらためて認識されてきています。

──製品の販売ルートは?

社長 基本的には商社を通して全国各地の企業に販売しています。製品点数はざっと500種類ぐらいです。製品の設計、製造、組み立て、出荷まで一貫して自社工場で行えるので、お客さまのご要望にスピーディーかつ的確に対応できるのが強みです。大学をはじめとした研究機関とも取引があり、ことし1月には近畿大学と共同で製作した試験機で特許を取得しました。

──試験機の性能を担保するための取り組みをお聞かせください。

専務 例えば重量を計測する試験機では、わずかの誤差もなく重量を表示する正確性が極めて大切です。その正確性を検査する工程を校正といいます。当社の校正部門は国家認証である「JCSS認定」を一軸試験機について取得しており、JCSS認定ロゴマーク入りの校正証明書を発行できます。この認証は海外でも通用し、技術力の証しとしてアピールしています。校正部門の社員は修理が必要な時は現地を訪問して対応するなど、メンテナンスも担当しています。

──技術力の継承が大切ですね。

社長 ベテラン社員の技術力継承が一番の課題で、業務においてマンツーマンで若手社員に教えています。働きたいという意思のある間はいつまでも働いていただいて構わないというのが当社のスタンスで、75歳の従業員が最高齢です。

──定年は設けていないと。

社長 一応ありますが、働きたいうちは働いてくださいと話しています。目指しているのが残業ゼロ、完全週休2日、有給休暇完全消化で月間平均残業時間は約10時間まで減ってきました。毎月行っている「戦略会議」では月間の粗利額を伝えて、粗利率を上げる方法や残業時間を減らすための方法を社員に話し合ってもらっています。

──取引先の新規開拓はどのように?

社長 ニッチな業界のため、取引先企業や大学の先生から紹介をいただくケースが多いですね。ただ近年は会社のウェブサイトを営業マンと位置づけ、製品紹介動画の制作に力を入れているところです。若手社員が制作チームを立ち上げ、主に稼働中の製品をデジタルカメラで録画し映像をアップしています。まだ取り組みはじめたばかりですが、商談獲得につながっています。
 また、年に1回開催される「コンクリートテクノプラザ」という展示会を視察してコンクリートの新材料、新工法に関する情報を仕入れています。ゼネコンなどの大手企業社員と情報交換したり、業界の動向を探る機会として活用しています。

──地元高校の「ソーラーカープロジェクト」を支援されているとききました。

社長 社員の母校である生野工業高校機械工作部の活動を資金面からサポートしています。同クラブでは制作したソーラーカーでスピードや航続距離を競うコンテストに出場していて、車体には部員さんが考えてくれた当社のロゴマークがプリントされています。試験機や機械製造の分野に関心を持つ生徒さんが増えるとうれしいです。

戦略会議で業績を公開し社員自らが考える風土に

──『FX2』導入のいきさつは?

社長 税理士法人テイタスさんとのお付き合いが始まったのが会社設立後間もないころです。3枚複写伝票による記帳から始まり、月次監査でいろいろご指導いただく過程で自計化システムの『FX2』を提案していただきました。導入はとても早い時期だったと思います。

──経理体制を教えてください。

社長 1名の経理担当者が日々の伝票入力を一手に担っています。ことし1月に経理担当者が代わったばかりですが、市販の会計ソフトの操作経験があり、監査担当の小池さんのご指導により『FX2』の運用にすぐに慣れてくれました。

小池 当事務所には仕訳辞書機能をフル活用するという方針があり、日常的に発生する取引の借方、貸方科目、課税区分などをあらかじめ登録しています。今では仕訳辞書の新規登録やメンテナンスまで自主的に行っていただいています。

──商品点数が多いので販売、請求業務も大変では。

社長 従来は母が売上伝票、仕入れ伝票、請求書を1枚ずつ書いていました。こちらもテイタスさんに『FX2』に仕訳を連動できるカシオの販売管理システム『楽一』を紹介してもらい、経理業務同様システム化しています。

西本 請求書発行などの販売管理業務を省力化できたのはもちろん、売り上げ、仕入れに関わる伝票を『FX2』に漏れなく仕訳連動できる点を評価していただいています。

──『FX2』で活用している機能というと?

社長 ふだん利用しているパソコンに『FX2』『楽一』ともにインストールしていますが、《変動損益計算書》の画面を見て売上高、粗利率は日々チェックしています。4111~4113の勘定科目コードに「商品売上高」「製品売上高」「検定売上高」という名称をそれぞれ設定し、粗利率の高い製品売上高と検定売上高の推移に特に注目しています。私と専務が業績を日々把握するだけでなく、社員にも業績をガラス張りにして、例えば製品売上高が伸びているのにもかかわらず粗利率が低下した原因などを話し合ってもらっています。

──そうしたことを話し合う場が戦略会議ですか。

社長 そうです。《変動損益計算書》で前年同月や目標額と対比した最新業績がひと目でわかるようになり、助かっています。粗利率を毎期1%ずつ引き上げることを目標にしていて、前期は47%にまで向上できました。

──どんな施策を打たれたのでしょう。

社長 《変動損益計算書》をもとに粗利率の高い製品の販売に注力したのがひとつ、それと昨年、念願であった「電気部門」をつくり、従来は外注していた電気設計業務を内製化できたのが大きいですね。これによりお客さまとのコミュニケーションがスムーズになり、納期を短縮できました。さらに『楽一』で日々の売り上げを営業担当者がチェックできる体制をつくり、社員に計数意識が浸透してきていると感じています。

──粗利を重視して改善を図られてきたと。

社長 私自身もともと業績数値の見方を熟知していたわけではありませんが、テイタスさん主催の「経営者塾」に参加し会社の数字に関心を持つようになりました。同塾では、仕事の終わった平日の夜に専務と参加し、粗利率の重要性をたたき込まれました。

西本 安田社長の素晴らしい点は会社の業績に常に関心を持ち、結果に対する原因を把握してご自身で説明できるところです。そうした姿勢が金融機関からの高い評価につながっていると思います。

社長 現在は主に2行の金融機関と取引していますが、計数面を評価していただいていると感じます。金融機関の融資担当者にすぐに提出できるよう、私のデスクの棚に会社の《変動損益計算書》をいつも準備しているんですよ。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社関西機器製作所
設立 1960年8月
所在地 大阪府大阪市鶴見区今津南2-4-26
売上高 2億8,000万円
社員数 27名(パート含む)
URL http://kansaikiki-s.co.jp/

CONSULTANT´S EYE
限界利益率を10年で10%引き上げる
税理士法人テイタス 監査課 巡回監査士 小池知明
大阪府大阪市城東区中央1-11-3
TEL:06-6933-4351
http://www.tkcnf.com/fmc/

 関西機器製作所様と当社は創業以来、約45年にわたりお付き合いさせていただいます。同社は長年の歴史と確固たる実績に基づいた堅実な経営を受け継いでおり、かつ新製品の研究開発をはじめとした新たな取り組みに積極的にチャレンジしています。

 数百万円以上する高額な大型機器も扱われているため、原価管理がカギとなります。当社が関与させていただいて以来ご提案しているのが、変動損益計算書をベースとした限界利益の向上です。安田社長も常に限界利益を意識されており、この10年間で限界利益を10%引き上げられました。無駄なコストを削るなどの改善活動を不断に行い、より良い製品開発に取り組まれてきた成果だと思います。

 システムの活用面では、安田社長は『FX2』による業績管理体制を構築し、損益を日々タイムリーに把握されています。月次監査では今後の事業見通しをしっかりおうかがいする時間を設けています。『継続MAS』システムで策定した予算を『FX2』に登録し、常に目標数値を念頭に置いて経営に取り組まれています。

 今後は安田社長が次代を担う社員を育成し、業界発展のため、関西機器製作所様がさらに成長されるようご支援していきます。

掲載:『戦略経営者』2016年9月号