所属する業界団体が作成したパンフレットの表紙を自社ウェブサイトに掲載したら、身に覚えのない写真販売会社から使用料の請求が来ました。支払う必要はありますか。(建設業)
多くの場合、写真は著作物にあたります。スナップ写真やカタログ用に撮影された商品の写真(いわゆるブツ撮り)も裁判の場では著作物とされることが通常です。ゆえに、他人が著作権を有する写真を許諾なくウェブサイトに掲載する行為は、著作権(正確に言えば、複製権と公衆送信権)を侵害する行為となります。
今日、印刷物やウェブ向けに素材写真を販売している会社が多数ありますが、これらの会社は、利用者との契約に基づいて、所定の料金の支払いを条件に写真の著作権の許諾(ライセンス)を行っています。
ご質問のケースでは、業界団体がパンフレットで使用するという条件の下に料金を支払い、素材写真販売会社からライセンスを受けたものと思われます。通常は、そのライセンス条件には他社がウェブサイトに掲載することまでは含まれていないと考えられますので、写真の掲載を継続したいのであれば、写真販売会社の要求にしたがい所定の料金を支払う必要があるでしょう(『戦略経営者』2016年8月号P37図参照)。
故意・過失がなくとも著作権侵害は成立しますので、仮に著作権で保護されているとは知らなかったと反論しても、少なくともウェブサイトへの写真掲載をやめる義務はあります(やめるまでの掲載期間において損害賠償の責があるかは状況次第です)。故意による著作権侵害は刑事罰対象ともなり得るため、写真販売会社の要求を無視して掲載を継続することは決して行うべきではありません。なお、特に使用料が法外である場合等、写真販売会社を語った詐欺行為である可能性もないとも言えませんので、念のため請求元が正当な会社であるかの確認は必要でしょう。
このようなケースを防ぐためには、ウェブサイトで使う写真やイラストは、独自に撮影・作成し、自社が著作権を有することが確実であるものを使用するか、素材販売会社から正規に購入することが必要です。ウェブサイトの制作は通常は社外に委託することになるでしょうが、その場合には業務委託契約において、著作権上問題のない素材を使用すること、そして、万一問題が生じた場合には、受託側が責任を持つことを明記しておくことが必要です。
なお、著作権を放棄する等によって写真やイラストの素材を無償提供している人や組織もいます。もちろん、その中には正当なものも多いのですが、他人の著作物を勝手に無償と偽っているケースもないわけではありませんので、利用側には一定の注意義務があります。検索エンジンの画像検索機能を使用すれば、ウェブ上に類似の画像があるかどうかはすぐわかります。著作権フリーと称した素材であっても、素材写真として販売されているものの勝手な流用ではないことを確認することも必要でしょう。
ウェブサイトでの他人の著作物の無断利用は、過去から常に著作権侵害に相当する行為でしたが、実際上はやや大目に見られていた傾向があったため軽く考えられがちです。しかし、最近では素材写真販売会社が素材の無断使用に対して厳しい態度を取ることが多く、訴訟となったケースもありますので、決して軽く考えないことが必要です。