中小企業にも「健康経営銘柄」のような制度が設けられると聞きました。制度の概要と動向を教えてください。(製缶板金業)

 経済産業省では「日本再興戦略」の一環である国民の健康寿命延伸策として、企業による「健康経営」の取り組みを促進しています。健康経営とは、従業員等の健康保持・増進の取り組みが、企業の収益性等を高める投資であるとの考えのもと、従業員の健康管理を経営的な視点で捉え直すことを指します。

 健康経営の推進により、従業員の活力や生産性の向上、組織の活性化をもたらし、結果的に企業業績の向上につながることが期待されます。また、国民のQOL(生活の質)向上や医療費適正化といった社会課題の解決に資するものと考えられます。

 平成26年度には東京証券取引所と共同で「健康経営銘柄」が選定、公表されました。健康経営銘柄とは、東京証券取引所の上場会社の中から健康経営の取り組みに優れた企業を業種区分ごとに選定し公表するものです(1業種につき1社)。ことし1月には「健康経営銘柄2016」として花王やブリヂストンなど25社が発表されました。長期的な視点で企業価値を計る投資家にとって重要な指標となるでしょう。

 選定にあたっては、経済産業省による「健康経営度調査」の回答結果が用いられました。健康経営の取り組みが経営基盤から現場施策までのさまざまなレベルで連携されているかという視点から、5つの評価項目(経営理念、組織体制、制度実行、評価、法令順守)と財務面でのパフォーマンス等が勘案されています。

今年度に500社を認定

 今回の健康経営度調査は上場企業を対象に行われましたが、非上場会社も回答して、評価結果のフィードバックを受けることができます。回答した企業には上場企業と同様の基準で評価されたサマリーが送付されるので、自社と同じ業種における立ち位置を把握することができます。具体的な課題も明示されるため、改善策を立案する際、参考資料として活用したいものです。

 健康経営を推奨する動きは中小企業へ広がることが予想されます。中小企業基盤整備機構のサイト「J-Net21」によれば、中小企業を対象とした「健康経営優良企業認定制度(仮称)」が2016年度に開始されます。資本金1億円未満、従業員300人未満の法人、約381万社が対象となる見込みです。

 このうち約500社を優良企業として認定する予定で、政府系金融機関による低金利での融資が受けられる等のメリットが期待されています。従業員の健康診断の受診、メンタルヘルス対策、過重労働の防止計画などが評価項目となり、経営者自身の健康診断受診の有無も対象とすることが検討されています。

 経済産業省では、今後も健康経営促進に関連した取り組みを継続させるようです。経済産業省および中小企業基盤整備機構などのウェブサイトで情報収集をしていきましょう。急速に進む少子高齢化のもと、上場・非上場にかかわらず全ての企業にとって、健康経営は戦略的に取り組むべき経営課題であることは間違いありません。

掲載:『戦略経営者』2016年7月号