「ROWEN(ロウエン)」の名で高級スポーツカーからミニバンまでカスタムパーツの企画、製造を行っているE.Rコーポレーション。同社を率いる樋江井尊吉(ひえい たかよし)社長は計画に基づく経営を推し進め、着々と業績を伸ばしてきた。ロウエンのブランド戦略と、毎月開催している業績検討会の効果について語ってもらった。
専属モデラーの手による独創的デザインで魅了
E.Rコーポレーション:樋江井社長(中央)
──「ロウエン」の名前の由来をお聞かせください。
樋江井 僕自身、スーパーカー世代でフェラーリをずっと応援していました。海外自動車メーカーはフェラーリは「馬」、ランボルギーニは「牛」といったように明確なイメージを打ち出しています。どんな動物が好きなのか考えたときに、オオカミが思い当たりました。オオカミというとどこか狡猾(こうかつ)な印象がありますが、海外ではシルバーウルフなどと呼ばれ統率力のある動物というイメージがある。それから色の中では赤が好きなので、オオカミと炎をかけあわせて「狼炎」とネーミングしました。
──インパクトのある外観ですね。
樋江井 バンパー回りのパーツにLEDライトを取り入れたり、ひと目でロウエンとわかるデザインをうりにしています。クルマ好きにもさまざまなタイプの人がいて、洗車が趣味の人もいれば、タイヤホイールをいつもピカピカにしておかないと気がすまない人もいる。われわれは外観でアピールしたい人たちの心をとらえる製品をつくっていきたいと考えています。
創業当初は自動車メーカー各社の手足となりいわば下請けとしてOEMをメーンに行ってきました。第10期を過ぎたころ、事業内容を見つめ直し、サラリーマンをやめてやりたかったのはこれじゃないと。なんのバックボーンもありませんでしたが、オリジナルメーカーとしてやっていこうと決めました。
──豊田市というとトヨタのお膝元ですが、ラインアップはトヨタ車が多いですか。
樋江井 国内主要メーカー、海外人気車種向けのパーツはひと通り揃(そろ)えていますが、トヨタ車は売れている車種が多い分、必然的に装着率は高いです。なかでもプリウスは発売時期によって7種類のカスタマイズモデルをラインアップしているため、一時期プリウスのイメージが強くなってしまい、ミニバン用のパーツもデザインするようになりました。
──デザインはどなたが?
樋江井 国内の大手自動車メーカー出身のモデラーと自分がおもに担当しています。専属のモデラーが在籍しているのがうちの大きな強みで、この部分のデザインをこうした方がいいとか欲が尽きないのが悩みですが、すぐに対応できるのが内製化してよかったところです。ちなみにロウエンのアイデンティティーのひとつである、LEDライトパーツの金型は国内の工場でつくっています。集中力の増す夜更けにデザインについてあれこれ考えを巡らすのが一番楽しい時間ですね。
──展示会にも意欲的に出展されているとか。
樋江井 最も規模の大きい展示会は例年1月に開催されている東京オートサロンです。ことし展示したのはトヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」、レクサス「RC F」、BMW「M4」の4台。昨年からマフラーの製造にも進出したため、製品の一部を展示しました。
期間中はできるだけ展示スペースに出て、来場された方からナマの声を聴くようにしています。よく話しかけるので、モーターファンやカメラ愛好家の人たちに人気があるんですよ(笑)。地元の名古屋ではオートトレンドというイベントがあり、ロウエンのブース目あてにお越しいただける方がたくさんいます。
──フルコンプリートカーになるともう1台クルマを買えるぐらい値が張る場合もあると聞いたことがあります。
樋江井 当社はそこまで高くありませんが、いろいろなパーツを付けると100万円ぐらいかかります。狙っているのは他社より若干高い価格帯。高品質を掲げているのでお客さまの目もきびしい。品質に見あうだけの対応力を兼ね備えたコンシェルジュとして社員を育成するのが目下の課題です。
リアルタイムの業績把握で勘による経営から脱皮
──井上会計事務所と顧問契約を結んだ当初から『FX2』を利用されていると聞きました。
樋江井 井上先生とは事務所を開業される前、別の会計事務所に勤務されていたころからのお付き合いです。4年前の顧問契約時、先生に勧められて導入しました。
──立ち上げはスムーズにいきましたか。
樋江井 井上先生に借方、貸方の意味からはじまり、簿記のしくみをイチから親身に教えていただいたので、問題なく利用を開始できました。家内が経理担当者として毎月800枚ほどの仕訳を一手に入力しています。
井上 当時、奥さまは子育てをされ大変な時期だったと思いますが、とてもがんばっていただき操作をマスターしてもらいました。以来、『FX2』に入力していただいた数字を元にした業績検討会を毎月開催しています。
──業績検討会で話し合う内容は?
樋江井 今期の売上目標に対する進捗(しんちよく)を確認して対策を話し合うことが多いですね。巡回監査が終わり月次の業績が確定した後、当社で開催していますが、今まで井上先生と面談するのをパスした月はありません。検討会では《変動損益計算書》の画面を会議室の壁にプロジェクターで投影してもらい、売上高の内訳をくわしく分析しています。売上高科目は①OEM②OB(オリジナルブランド)③倉庫の3種類に分けています。当社では一部スペースを貸し倉庫として部品メーカーなどに貸し出していて、その売り上げは③に集計しています。
藤本 月末の巡回監査では『巡回監査支援システム』を活用して伝票内容をくまなくチェックしています。イレギュラーな取引がないかぎり、修正事項はほとんどないです。
──自計化された効果はいかがでしょうか。
樋江井 『FX2』を利用する前は業績がわかるのがどうしてもおくれがちで、数字にあまりリアル感を持てず、なんとなくカンピューターに頼る経営をしていました。今はリアルタイムで伝票入力しているので、勘定科目の推移を注視していれば期末の業績を予測できます。
──重点的に見ている科目は?
樋江井 自動車雑誌にもよく取り上げてもらっているので、広告宣伝費が予算の範囲内に収まっているかを確認しています。近年、月刊誌だけでなく、不定期で発行される車種専用のムック本にも広告などを出していたので広告宣伝費がかさんでいました。今期は予算を超えないようコントロールして金額を抑えられたのが大きかったです。今後、カーボンパーツなどの内製化も進めるつもりですが、開発費が先行投資になるのは注意すべき点として念頭に置いています。
──目標、予算策定の流れを教えてください。
樋江井 井上先生に前年比売上高目標などに関する質問をいくつか投げかけてもらい、単年度の短期経営計画を毎年作成しています。目標値は少し大風呂敷なところがありますが、周りの人たちに目標を公言すると心に火がつくんです。2016年3月期は目標だった10億円の売上高をクリアできそうです。
井上 『継続MASシステム』で目標値を作成し『FX2』に予算として登録しています。樋江井社長は海外の展示会にも足を運ばれたり、世の中のニーズを察知する能力に非常にたけています。大風呂敷とおっしゃいましたが、とても緻密にできた風呂敷なんです。
──抱負をお聞かせください。
樋江井 国内にとどまらず、世界中から認知されるトップブランドになるのが第一。そして、ゆくゆくは社内カンパニーのように事業部を独立させるため、経営を任せられる人材を育てたい。再来年に第20期を迎えますが、年商20億円達成という目標に向かって進んでいきます。
(本誌・小林淳一)
名称 | 株式会社E.Rコーポレーション |
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設立 | 1999年4月 |
所在地 | 愛知県豊田市堤本町山畑7番地 |
売上高 | 10億1,000万円(28年3月期見込み) |
社員数 | 20名 |
URL | http://www.rowen.co.jp/ |
CONSULTANT´S EYE
井上秀彦税理士事務所 所長税理士 井上秀彦
愛知県名古屋市守山区喜多山南14-7-2
TEL:052-778-9364
http://inoue-tax.tkcnf.com/
私がE.Rコーポレーション様の税務顧問に就任したのは、4年ほど前です。井上会計事務所を開業する前、会計事務所に勤務していたときに担当していたご縁から、独立開業後も支援させていただくことになりました。毎月の巡回監査において心がけている点は、経理を担当されている奥様との会話を通して、樋江井社長のニーズを的確に把握することです。そして、監査時に察知した問題点を後日開催される「月次業績検討会」において議題として取り上げ、社長とともに打ち手を検討しています。
業績検討会時に利用している『FX2』および『継続MASシステム』は社長から高い評価をいただいており、予実モニタリングのツールとして活用しています。E.Rコーポレーション様では昨年からマフラーの製造に進出されるなど業績が年々伸長しているため、システムに登録する部門構成や勘定科目設計を毎年のように試行錯誤しているのが実情です。したがって、『FX2』の前年同月比較機能をフル活用していただくためには、今後、会社の現状に合致したシステム設計を整える必要があります。部門ごとの年次予算策定と、予算に基づく月次モニタリング体制を築き、採算ラインを正確に把握することが、経営判断において何よりも重要であると言えます。
私が当企業と出会った当時の売上高は3億円ほどでしたが、現在では10億円に達しています。このような目覚ましい成長は樋江井社長の持つバイタリティーと行動力、奥様をはじめ多くの社員の方々の努力の結実といえるでしょう。厳しい経営環境にあって成長を続けている企業の税務顧問であることを誇りに感じ、われわれも業務品質の向上を図り、会計をベースにした経営アドバイスを行っていきたいと考えています。