ウェブサイトや会社案内パンフレットの制作など企業経営をクリエーティブ面からサポートするリズレイ。高橋聡社長は会社設立後すぐに『FX2』を導入、限界利益率を重視した堅実経営を継続している。顧問税理士の小城麻友子氏を交え、TKCシステムの活用法や今後の経営戦略について聞いた。

リズレイ:高橋社長(右)

リズレイ:高橋社長(右)

──会社設立の経緯について教えてください。

高橋 ウェブサイト制作やパンフレット制作を手がけるデザイン会社に勤務していました。学生時代から独立願望が強く、加えて勤めていた会社の経営状態が悪化したこともあり、5年間勤務した後の2009年に当社を設立しました。

──社長はデザイナー出身ですか。

高橋 いいえ。もちろんクオリティーの良しあしは分かりますが、実は今でもデザインの実務はやっていません。企画やディレクション、クライアントとの折衝を含む営業を担当していました。また前職では会社の財務内容を知る立場にもあり、営業の数字をどうやって管理したら整理しやすいか常に考えていました。もともと数字が大好きで、月単位で売り上げと粗利をきちんと把握できるようなオリジナルの資料を作成したりしていたことが、会社を立ち上げたときに大いに役に立ちましたね。

──現在の業務内容について教えてください。

高橋 ウェブサイトのデザインが6割、紙媒体のデザインが4割のバランスで年間120件前後の案件を受注しています。紙媒体はジュエリーメーカーからチラシやDMなどの制作を依頼されるのと、マイナビさんから会社案内や入社案内の制作でお仕事をいただくケースが多いですね。一方、ウェブサイトはマイナビさんとセブン&アイフードシステムズさんの2社の大口取引先が売り上げ全体の半分を占めている状況です。

──営業スタイルは?

高橋 既存のお客さまのリピートやご紹介による新規開拓がほとんどですね。私は足を使ったり電話でアポイントをとったりという泥臭いことはあまり得意ではありません。ですからこちらから積極的に働きかけるプッシュ型の営業はほとんどしたことがないのです。まずは既存のお客さまに当社とデザイナーを気に入ってもらうことが第一。そこがきっちりできれば、つながりや紹介で顧客は広がっていきます。

──顧客に選ばれ続けている理由はなんでしょう。

高橋 クオリティーを高水準に保つためデザイナーが進化し続けているのが強みになっています。特にウェブ業界は変化のスピードが速いので、飽きられないよう積極的に新しいものを取り入れ、それを当社ならではのセンスで処理するよう心がけています。また既存のお客さまに対し、プロの視点から気づいたことを率直に提案できるような親密な関係を構築できているのも大きな特徴ですね。

黒字経営の継続を支える変動損益計算書の理解

──小城先生が関与されるまでのいきさつについて教えてください。

高橋 税理士紹介サービスを通じて顧問税理士を決めたのですが、3人目に面談したのが小城先生でした。私は人を見る目には自信があるのですが、もう即決でしたね。会社の大切なお金の情報を預けるわけですから、税理士に必要なのは何よりも誠実さです。小城先生は第一印象で他の誰よりも信用できると直感しました。

小城 そんなに褒めていただいてありがとうございます(笑)。漠然とした経営ビジョンしか持っていない、あるいは「全部まかせたから適当にやっておいて」という社長が少なくないなか、高橋社長はそうではありませんでした。具体的な話の内容は覚えていませんが、「ぜひ顧問をしたいな」と思ったことは記憶しています。

高橋 そう思われたのは、確か面談時に自前で作成した資料を見せたからかもしれません。

小城 そうそう、収支表をすでにご自分で作られていたことにはびっくりしました。起業したての社長でそこまでできる人はほとんどいませんから。

──システムの導入も顧問契約された頃のタイミングですか。

高橋 そうですね。1期目から『FX2』と『PX2』(戦略給与情報システム)を導入しました。毎月私が入力作業を行っていますが、仕訳辞書や現金出納帳から入力するだけで小城先生に情報を伝えることができるという単純明快なシステムは非常に使いやすいと感じています。

── 一番気になる経営指標は?

高橋 やはり粗利(限界利益)ですね。経営者にとってここが最も気になり、いかにこれを確保するかは常に気を配っています。私は1%、2%の粗利率が低い仕事をやればいくらでも売上高は伸ばせるという考えなので、売り上げは正直まったくといっていいほど気にしていません。

小城 売り上げの金額は高いけれど利益率の低いシステム開発案件について「本来当社がやるべきことではないから、これを除いた売り上げ/粗利の推移を把握したい」と要望されるなど、やはり「分かってらっしゃるな」と感心させられることが多いですね。つまり変動損益計算書の考え方をきっちり理解されているということです。

──粗利を増加させるためにはどのような打ち手を?

高橋 単価を高くするのは簡単ですが、継続してお取引させていただいているお客さまに「リズレイって高いな」と思われ他社と相見積もりをとられてしまうのはまずい。ですから当社では、どんな案件でも必ず何年も前のケースを振り返ったうえで誤差の出ないよう細心の注意を払って見積金額を計算しています。クライアントから「前回よりも価格が高いじゃないか」と突っ込まれたときに納得していただけるだけの説明ができなければなりませんからね。値引きの要請は多分にありますが、見積金額に精度があれば後は何とかなるものです。

──後は経費のコントロールが鍵を握りますね。

高橋 はい。当社の外注先はカメラマン、ライター、印刷会社、システム開発会社で、主には最初の3つになりますが、外注先から「リズレイの仕事はいつも安いな」と思われてもまずい。例えば2回連続で安価で依頼せざるをえなかった時は次回で少し金額を上乗せするなど、最大限協力していただいた方に配慮しています。しかしやはり出せないものは出せない時があります。当社も利益をきちんと確保しなければならないので、ここのところの調整がやはり難しいですね。幸い今期は外注費を要する案件が少なかったこともあり、粗利率は90%を超える高水準となっています。

小城 経費に対して非常にシビアなのは特筆すべき点でしょう。「それは社長の私的な利用では」と疑われるような経費の使い方をしている中小企業の経営者は少なくありませんが、同社は交際費も同業他社よりは随分少ないと思います。かといって適切な経費の使用が売り上げの拡大に結びつくこともしっかり理解されており、使うべき所ではきちんと使っている。そのあたりのバランス感覚が非常に優れていると思いますね。

高橋 年度の初めは特に経費を抑制するようにしていますね。半期を過ぎる頃にならないと「今期は黒字でいけそうだ」という感触をつかめないからです。

──月次監査ではどのような話し合いをされていますか。

小城 内容について間違いはほとんどないので、単月および累積での売り上げや利益率などのご報告をさせていただき、その他お困りごとがあればその都度相談をお受けするといった感じですね。ちなみに今日は「PXまいポータル」と「Web給与明細サービス」のご案内をさせていただきました。月次監査で初めて数字を確認する社長には詳細に説明する必要がありますが、高橋社長はすでに収支表を作成して財務内容を把握されているので、テストの答え合わせをやっているような感覚ではないでしょうか。

TKCシステムのフル活用で都銀からの低利融資実現

──TKC会員事務所の関与先企業限定で三菱東京UFJ銀行が提供しているローン『極め』を利用されているとお聞きしました。

高橋 小城先生からこの商品についてご紹介していただき、昨年から融資を受けています。資金的には余裕があったのですが、政府系金融機関以外の民間銀行との取引実績がまだなかったこともあり、都銀からの融資が実現すれば会社の信用度が上がると思い借り入れを行うことにしました。利率もかなり低いですしね。

小城 TKCシステムのフル活用で条件項目だけでなく、優遇の3つのポイントも全て満たしていたのでご提案しました。申告書に添付する内訳書には、三菱東京UFJ銀行から低利率で融資を受けていることが記載されますから、見る人が見れば「この会社はいい会社なんだな」とすぐに分かります。

──今後の計画についてお聞かせください。

高橋 現在は社員のうち誰か1人でも退職したら仕事が回らなくなるような状況なので、そうした心配を軽減するために、自分の目の行き届く範囲の10人前後、最低でも6人くらいまで人員を拡大したいですね。そのためには売り上げを増やす必要があります。既存のお客さまの広がりはやや飽和状態にあることから、費用はかかりますが、マッチングサービスに登録して新規開拓に力を入れていくことを検討しています。

(本誌・植松啓介)

会社概要
名称 株式会社リズレイ
設立 2009年2月
所在地 東京都渋谷区代々木1-21-16 アジリア代々木J’s 303
売上高 約1億円
社員数 3名
URL http://lizray.co.jp/
顧問税理士 顧問税理士 小城麻友子
小城麻友子税理士事務所
東京都文京区小石川5-3-4 ラ・ヴェリエール文京4階A号室
TEL:03-5844-6635
URL:http://ogimayutaxoffice.tkcnf.com/

掲載:『戦略経営者』2016年1月号