「よろず支援拠点」という言葉を最近耳にするようになりました。これまでの制度との違いや特徴について教えてください。(機械加工)

 全国385万の中小企業、中でもその9割を占める小規模事業者は、地域の経済や雇用を支える極めて重要な存在であり、経済の好循環を全国津々浦々まで届けていくためには、その活力を最大限に発揮させることが必要不可欠です。

 しかしながら、小規模事業者は、人口減少、高齢化、海外との競争の激化、地域経済の低迷といった構造変化に直面しており、売り上げや事業者数の減少、経営層の高齢化等の課題を抱えています。

 そこで国は、地域の中小企業・小規模事業者の支援体制を強化するため、平成26年6月から、地域の支援機関と連携しながらさまざまな経営相談に対応する「よろず支援拠点」を各都道府県に整備しました。

 よろず支援拠点は各都道府県の支援センターや商工会議所、商工会連合会に設置されており、中小企業・小規模事業者が抱える売り上げ拡大や経営改善等に関する経営上のさまざまな悩みの相談に、マーケティング、IT、デザイン、財務等に関する知識や豊富な経験を持つ専門家が、具体的なアドバイスの提供や地域の多様な機関との連携支援などを通じて、課題の解決にあたっています。

 よろず支援拠点へのひと月あたりの相談者は、開設当初に比べて2倍近く増加しており、半数以上は売り上げ拡大にかかわる悩みを抱えています。最近では全国で1月当たり約2万件を超える相談があり、平成26年11月に実施した利用者満足度では84%が高く評価しています。

売り上げ15%増の事例も

 よろず支援拠点が行った支援の実例を2つ紹介します。冬場が名物のカニ料理を目当てにしたお客でにぎわう一方、夏場には客足が遠のく地域旅館から相談がありました。よろず支援拠点では、地元には夏場でもおいしいカニがいることをカニ好きの既存顧客にPRするようアドバイス。写真やデザインの専門家の協力を得て作成した効果的なDMでPRした結果、1カ月で70万円を売り上げ、対前年比15%増加の年間売り上げを達成しました。

 また生活食器の量産を行う焼き物の窯元からは、新しく開発したセラミック鍋の販売に関して相談がありました。価格設定やホームページ等での商品特性のPR方法等をアドバイスし、実践した結果、新聞やTVで多数取り上げられて6カ月待ちのヒット商品になりました。

 このようによろず支援拠点では、相談者の課題に対して、具体的なアドバイスはもちろん、課題を解決するまで寄り添う支援を行っています(『戦略経営者』2016年1月号P42イメージ図参照)。

 よろず支援拠点は「何回でも」、「無料」で利用することができます。経営上の悩みがある経営者の方は近くのよろず支援拠点に足を運んでみてはいかがでしょうか。詳細はURL(http://www.smrj.go.jp/yorozu/087939.html)を参照してください。

掲載:『戦略経営者』2016年1月号