ソフトウエアの受託開発からPOSシステムの開発販売、ITエンジニアの派遣まで企業経営を技術面でサポートするNIS。金子博幸社長は会社設立当初から『FX2』を活用し、資金繰りを重視した堅実経営に取り組んでいる。情報システム事業部の曽我則仁氏と川又愛子氏を交え、POSシステムの販売戦略を中心に話を聞いた。

質店向けPOSシステムが主力製品の柱に成長

NIS:金子社長(中央)

NIS:金子社長(中央)

──事業内容を教えてください。

金子 中小企業から上場企業までのお客さまに対して、事業のさまざまなお手伝いをしています。具体的にはシステムの開発および改善提案、ECサイトの構築、ITエンジニアの派遣などです。人と人とのつながりを大切にして革新的なサービスを提供していきたいという思いを込め、ネットワーク・イノベーション・サービスの頭文字を取り、NISという会社名にしました。

──自社で開発したPOSシステムを扱われていると聞きました。

金子 ウィンドウズ端末で動作するPOSシステム「POSible(ポッシブル)」を提供しています。市販されているPOSシステムは通常、ひとつの画面にさまざまな機能が盛り込まれていることが多いのですが、ポッシブルではシンプルな操作性をうりにしています。売り上げ管理はもちろん、顧客情報や在庫、台帳の管理まで行える点を高くご評価いただいています。お客さまのご要望に応じて、柔軟にカスタマイズできるのも特長です。

──業種別のバリエーションはありますか。

金子 ニッチかもしれませんが、質屋やリサイクルショップ向けのバージョンを展開しています。

──質屋向けとはユニークな着眼点ですね。

金子 発売当初はもっぱら小売店向けに販売していましたが、ある質屋のお客さまからいろいろなご要望をいただきながら、カスタマイズを加えていき、質屋向けのバージョンが完成したという経緯があります。今では質屋、リサイクルショップのお客さまが半数以上にのぼっています。

──特徴点は?

曽我 操作が簡単であることに加え、ウィンドウズ端末で動作するので汎用性が高い点があげられます。社内でネットワークを組んでいる場合、1台のパソコンを親機の役割をになうサーバーに見たて、複数台のパソコンで運用できるのもメリットです。

──最近ではタブレットを利用しているお店も見かけます。

金子 ポッシブルもウィンドウズ搭載のタブレットに対応しています。アンドロイドの方が開発コストをより安く抑えられますが、機種によって動作が異なり不安定な面があります。お金の出入りを管理するシステムであるため、最も安定したOSであるウィンドウズを選択しました。

──どんなルートで業務を受注していますか。

金子 以前からお取引いただいているお客さまから新たな案件のご相談をいただいたり、当社ウェブサイトやメールで「こんなことで困っているから提案してほしい」といったお問い合わせをいただいています。

──営業担当者はおられますか。

金子 10年以上営業経験のあるベテランの担当者がおり、取引先からお客さまをご紹介いただいたり、新規開拓活動を行っています。社員一人ひとりに会社を代表する意識を持ってもらうため、原則、全社員の名刺に「営業」の文字を印字しています。私も社長会や営業会などの集まりに出席して営業活動を行っているほか、展示会にも出展して製品をPRしています。

──どのような展示会ですか。

金子 昨年はIT・エレクトロニクスの総合展「CEATEC(シーテック) JAPAN」でポッシブルを展示しました。企業関係者だけでなく、大学教授などさまざまな業界の人たちにブースにお越しいただき、新たな商談のきっかけが得られました。

──具体的には?

川又 たとえば機械装置のレンタルを行っている企業の方は、ポッシブルの在庫管理機能に着目され、機械の貸し出し管理に活用できないかといったご相談をいただきました。展示会への出展は当社の認知度アップにつながっていると感じています。

資金の入りと出をおさえ早期に打ち手を施す

──吉川顧問税理士の関与のきっかけをお聞かせください。

金子 NISを起業する前、15年間、ソフトウエアの開発とITエンジニアの派遣業に携わってきました。当時から吉川先生とお付き合いさせていただいており、TKCの財務会計システムを利用していました。そのため、会社設立時に『FX2』を導入するのに何の迷いもありませんでした。

──『FX2』の使い勝手はいかがでしょう。

金子 経理担当者が1人で月間400~500枚の仕訳を入力していますが、とくに不便な点はなく、助かっています。監査担当の熊田さんに頻繁に発生する仕訳を仕訳辞書機能にあらかじめ登録してもらい、操作方法を熱心に指導していただいたのでスムーズに利用を開始できました。

吉川 NIS様では設立当初から『PX2』(戦略給与情報システム)や『継続MASシステム』による経営計画の策定、書面添付も実践していただくなど、TKCシステムをフル活用し堅実経営に役立てていただいています。

──ふだん、どんな画面を確認していますか。

金子 『FX2』ではシステムの画面よりも帳表をチェックすることが多いですね。《部門別利益管理表》や《勘定科目残高推移表》を印刷し、売上高はもちろん、限界利益や外注費などの費用科目の変動をよく見ています。取引先ごとの内訳を把握するため、売上高や売掛金科目には枝番を付け、50社ほどを登録しています。役員との経営会議のときも、これらの資料を活用しています。

──どのような部門分けをされていますか。

金子 ①情報システム②受託開発③受託開発POSレジの計3部門を設けていて、最近①をさらに細分化し東京、大阪の2カ所に分けました。ITエンジニアの派遣にともなう売り上げは①に分類しています。

──黒字経営を続けるうえで心がけている点は?

金子 とくに注視しているのは会社の資金繰りです。ITエンジニアの派遣事業を例にとると、常駐先での業務が終了して入金されるのが取引先によって1~2カ月後までばらつきがあるので、入出金予定をスプレッドシートで管理しています。ITエンジニアの派遣については3カ月~1年間の契約期間がほとんどですが、5年近く常駐している社員もいます。

──熊田さんが巡回監査で訪問する際も資金繰りについて打ち合わせをされていると。

金子 ええ。月次データをチェックいただいた後、たとえば新たに入社した社員がお客さまを訪問して注文をいただくのはいつごろになりそうかや、目標に対する売上高の確認と対策など、将来について話しあう機会が多いです。

マイナンバーの管理にはPXまいポータルを活用

──吉川先生の事務所から日ごろどんな支援を受けていますか。

金子 先日、マイナンバー制度に関するセミナーを社内で開いてもらい、マイナンバーの適正な取扱方法、注意点などを熊田さんに教えていただきました。社員たちも「マイナンバーって何?」という状態だったので、ありがたかったです。セミナーの中で情報提供していただいた、マイナンバーを安全に保管できる『PXまいポータル』は利用したいと考えています。
 また、吉川先生の事務所は当社から徒歩1~2分ととても近く、なにかトラブルがあるときにすぐに来ていただけるので、非常に安心感があります。

──今後の構想をお聞かせ下さい。

金子 これまで中途社員の採用に力を入れてきましたが、近年ではエンジニアの採用がむずかしく、新卒採用に重点をシフトしています。来年は5名ほど優秀な新卒社員が加わる予定です。新たな人材の力を武器にお客さまとのパイプをさらに強固なものにして、システムの拡販に努めていきたいです。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社NIS
設立 2009年4月
所在地 東京都豊島区南池袋1-18-1 池袋三品ビル3F
売上高 約5億円
社員数 80名
URL http://www.nisc.co.jp/
顧問税理士 顧問税理士 吉川 透
吉川会計事務所
東京都豊島区南池袋2-18-9 マ・シャンブル南池袋401
TEL:03-5953-3788
URL:http://www.yoshikawa-kaikei.com/

掲載:『戦略経営者』2015年12月号