職場の受動喫煙防止対策をしたいと考えています。その進め方や、国の支援制度などを教えてください。(電子機器製造)

 昨年6月に公布された労働安全衛生法(安衛法)の受動喫煙防止対策の規定が、今年6月1日に施行されました。安衛法では「受動喫煙」を「室内またはこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう」と定義し、事業者に労働者の受動喫煙を防止するため、事業場の実情に応じ適切な措置を講じる努力をするように求めています。今般の安衛法改正により、これまで快適な職場づくりの一環としてとらえられていた「受動喫煙防止対策」が、労働者の健康の保持増進のための措置として明確に位置付けられました。

【効果的な進め方】
 職場の受動喫煙防止対策を効果的に進めていくためには、社内で受動喫煙防止対策の担当部署等を指定し、その部署を中心に十分討議したうえで組織的に進めていくことが大切です。そのためには経営者、管理監督者、労働者がそれぞれの役割を果たしつつ、協力して取り組むことが必要です。

【施設・設備】
 受動喫煙防止の施設・設備(ハード面の対策)については、事業場の実情を把握・分析した結果を踏まえ、実施することが可能な労働者の受動喫煙の防止の措置を検討し、最も効果的な措置を講じることが必要です。
 具体的には、一般の工場・事業場では、屋外喫煙室の設置(屋内全面禁煙)や喫煙室の設置(空間分煙)が考えられます。ただ、レストラン、ホテル等の顧客が喫煙できることをサービスに含めて提供している場所では、顧客の喫煙を制限することが難しいこともあります。そのような場合には、喫煙可能区域を指定したうえで当該区域における適切な換気を実施することが考えられます。
 なお厚生労働省の通達(平成27年5月15日付け「労働安全衛生法の一部を改正する法律に基づく職場の受動喫煙防止対策の実施について」)の別紙「受動喫煙の防止のための措置を講じる際の効果的な手法の例」に詳しく示されているので参考にしてください。

【国の支援事業】
 受動喫煙防止対策について、国は次の支援事業を行っています。
①助成金制度
 労災保険の適用事業主である中小企業者が、一定の要件を満たす屋外喫煙所または喫煙室を設置する場合、宿泊業および飲食店に限っては一定の要件を満たす換気装置を設置する場合も、その費用の2分の1が助成されます。この助成金を受けるためには、工事の着工前に各地の労働局の認定を取ることが必要です。
②電話相談・講師派遣
 「社内の意見がまとまらない」「助成金を活用したいけれど、要件を満たしているか分からない」「設置した喫煙室の具合が悪い」等々の受動喫煙防止対策に関する問題点について電話で相談できる制度です。必要に応じて専門の労働衛生コンサルタントを現地に派遣して指導を行うほか、社内研修や団体の会合にも講師派遣を行っています。今年度は日本労働安全衛生コンサルタント会が国から委託を受けて実施しています(相談ダイヤル050─3537─0777)。
③測定機器の貸し出し
 事業場内の空気環境の把握のためにデジタル粉じん計、風速計等の無料貸し出しが行われています。今年度はアマランが国から委託を受けて実施しています(申込受付ダイヤル050─3642─2669)。

掲載:『戦略経営者』2015年9月号