改正労働者派遣法が衆議院で可決されました。派遣労働のあり方が今後どのように変わるのか、主なポイントを教えてください。(食品卸売業)

 改正労働者派遣法が平成27年6月19日に衆議院本会議を通過しました。このまま参議院も通過すると、今年9月に施行される予定です。今回の法改正の主なポイントには、以下のようなものがあります。

①専門26業務の撤廃
 現在、派遣労働の業務は、ソフトウエア開発などのいわゆる「専門26業務」と、それ以外の「一般業務」とに分かれています。一般業務は同じ職場で3年が上限。専門26業務については期限の制限なく派遣に任せることができましたが、これが撤廃されます。そして、次の2つを軸とする新たな制度に見直されます。
(1)事業所単位の期間制限:派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受け入れは3年が上限。
(2)個人単位の期間制限:派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受け入れは3年が上限。
 これは要するに「同じ人の同じ課への派遣は3年が上限」ということです。裏を返せば「3年ごとに人を代えれば、どの業務でもずっと派遣労働者に仕事を任せられる」ということにもなります。

②原則3年だが延長も可能
 (1)について、原則3年の派遣期間を期間経過満了1カ月前に過半数労働組合等の意見聴取でさらに延長することが可能になります。また、同一企業で別部門に異動した場合には3年を超えて就業することもできます。

③派遣労働者の雇用安定
 特に専門26業種の人には「雇い止め」のおそれが生まれるため、雇用安定措置として派遣会社(派遣元の会社)に対し、「派遣先の会社に直接雇用するようにお願いする」「新たな派遣先を紹介する」「自分の会社で無期雇用する」などの雇用継続措置をとることが義務付けられます。
 また、計画的な教育訓練やキャリア・コンサルティングを通じて、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを推進することも義務付けられるようになります。

④派遣事業の健全化
 特定労働者派遣事業(届出制)と一般労働者派遣事業(許可制)の区別を廃止し、すべての労働者派遣事業が許可制となります。
 なお、派遣労働者の雇用安定とキャリアアップに関する③の派遣元の義務規定への違反に対しては、許可の取り消しも含めて厳しく指導されるようです。

26業種の派遣労働者は影響大

 今回の法改正で大きく影響がでるのは、なかなか正社員として採用されることがかなわずに、派遣の仕事を余儀なくされている専門26業種の派遣労働者です。これまで無期限に働くことができたのに部署変更、労使の意見聴取による同意がなければ、3年間で派遣期間が終了してしまうからです。ただ今後、少子高齢化がさらに進むと労働者不足になるのは間違いありません。派遣社員に正社員並みの能力があると判断されれば派遣先企業が採用する可能性は高いし、採用されなかった場合でも3年ごとに別の派遣先で正社員採用されるチャンスが生まれると、今回の法改正を前向きに捉えてほしいものです。

 いずれにせよ今回の法改正が、派遣労働者の働き方を変えるきっかけになることは確かでしょう。

掲載:『戦略経営者』2015年8月号