4月から食品に関わる新たな制度が導入されたと聞きました。認証を取得するにあたり、どのような点を注意すればよいでしょうか。(飲料製造)
機能性表示食品制度とは、安倍晋三首相が掲げる成長戦略の1つとして、4月に施行された食品表示法に創設された表示制度です。「特定保健用食品(トクホ)」、「栄養機能食品」につづく、第3の健康食品と言われることもあります。
国の審査を合格したトクホは「おなかの調子を整える」といった決められた保健の用途(効能効果)を表示することができます。また、栄養機能食品では「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」とか「ナイアシンは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です」等の表示ができますが、注意喚起表示も必須です。
そして機能性表示食品は、トクホと異なり、科学的根拠や安全性の確保などについて国の審査がありませんが、トクホと同様「目の健康に役立ちます」といった表現で「身体の部位」を用いて機能を表示することができます。ただし、「高血圧の人に」「脳卒中を予防」「近視がよくなる」といった「治療」「予防」「診断」を連想させる表示や、「美白」「増毛」のような意図的な健康の増強、科学的根拠に基づいていない機能性に関する表示は禁止されています。
審査がないため、開発費や販売価格をトクホよりも抑えられ、開発期間も短くなります。トクホと類似した表示ができるので「トクホより大きな市場になるのでは」と期待する声も聞かれます。
中小企業には高いハードル
当初、この制度の最大の効果は、事業者の費用負担が少なく、中小企業や生鮮食品の生産者も容易に参入できる点にあると言われていました。しかし、国の審査がないとはいえ、消費者庁に機能性の根拠を届け出る義務はあります。届け出る資料は、主に安全性の確保と機能を証明するための科学的根拠の考え方などですが、審査基準はトクホと同等か、それ以上に厳しいかもしれません。
安全性の確保には、食経験の評価やHACCPなどの高度な品質管理の実施が条件になっています。科学的根拠を導くためには臨床試験を行うか、世界中の文献を精査しなければなりません。専門分野の科学者スタッフがいない中小企業には、ハードルがとても高い印象を受けます。調査を外注する方法も考えられますが、費用は計り知れません。生鮮食品に関しても生産者だけでは、提出書類を書くこともままならないでしょう。
さらに、機能性表示食品のみに義務づけられる表示が16項目もあり、小さな商品の場合、義務表示だけでパッケージが埋まってしまうおそれもあります。制度導入当初は、健康食品の参入が多くなると思われます。
事業者が届け出た情報は、消費者に一部公開されますが、安全性や科学的根拠の審査を行わないので、その内容が信頼できるかどうかわかりません。
消費者庁は必要に応じて調査を行う方針ですが、どのような場合に調査を実施するのかは不明です。情報が公開されるといっても、民間の消費者グループなどが信頼性を調べることは容易ではありません。あまり調査が行われないとなれば、米国と同じように事業者のやりたい放題となり〝ウソつき商品〟が氾濫し、健康被害が頻発する懸念もあります。
信頼性が確保できなければ、やがて消費者から敬遠されてしまいます。事業者は襟を正すことを忘れず、国も取り締まりを強化する必要があります。