今年創業20年を迎えるPEACEは、愛知県内を中心に電気工事を手がける企業だ。臨機応変に新たな事業を展開する伊藤孝広社長(48)が放つ次の一手は、防犯カメラのレンタル事業。決断を下した背景には、『FX2』を活用した正確な業績把握と、綿密な経営計画があったという。

伊藤イズムの浸透で強固な信頼関係を築く

PEACE:伊藤社長(左)

PEACE:伊藤社長(左)

──日ごろどんな電気工事を手がけていますか。

伊藤 道路照明の設置から病院等の非常電源装置の設置にいたるまで、一般・特殊工事全般を請け負っています。最近では、名鉄瀬戸線の旭前駅ロータリーの照明灯設置を施工しましたが、駅を利用するたび自分の作品だといつも思っています(笑)。

──とくに注力している分野を教えてください。

伊藤 防犯カメラを活用した見守り事業ですね。飲料自販機コーナーに設置するタイプは30台ほど稼働していて、公共施設を含めると100カ所以上の実績があります。近年、防犯カメラの利用用途は「監視」から「見守り」にシフトしていて、カメラのレンタルサービスも始めたところです。

──具体的には?

伊藤 ネットワークカメラで録画した映像をクラウドサーバーに保存し、パソコンやスマートフォンで再生できるサービスです。一般住宅の防犯用途だけでなく、遠く離れた場所で暮らしている高齢の親御さんや留守中のペットの見守り、倉庫の監視など幅広くご利用いただけます。通常の防犯カメラでは1秒間に30~40コマを撮影しますが、お客さまから多少性能は落ちても手軽に利用できるカメラが欲しいというご要望をいただき開発しました。簡単に設定できるのもアピールポイントです。

──レンタル料金は?

伊藤 カメラ、サーバー利用料込みで月額1000円です(初期設定費は2万円)。商品化にあたり、さまざまな種類のカメラを試しましたが、この価格設定は破格だと思います。先行利用いただいている方々からご意見をいただいて改善を加え、4月から本格的に販売します。

──伊藤社長自ら施工現場に赴いていると聞いています。

伊藤 ええ。防犯カメラを設置する際、あわせて外灯を提案したり、施工現場に付随するあらゆる電気工事を提案できるのがうちの強み。かつ私自身が現場監督をするので、施工前に打ち合わせた内容と、仕上がりが違うといったトラブルが起こらないのもメリットだと思います。

──奥さま以外に従業員はおられないそうですが、施工はどのようにしていますか。

伊藤 協力会社に外注に出すケースが多いですね。ひと口に電気工事といっても、工場、店舗、夜間工事など業者によって得意分野は異なるため、私がいわば指揮者となり適した会社を手配しています。現場では施工担当者に「伊藤イズム」を徹底的に教え込んでいます。

──伊藤イズムとは?

伊藤 関係者に対する気持ちのよいあいさつの仕方や現場の整理整頓方法など、技術面というよりマナーに関する指導ですね。ただ単に電気工事をするというスタンスでなく、自分の家の新築工事だと思って作業に臨むよう、いつも言い聞かせています。当社ではふだんこれといった営業活動をしていません。一つひとつの現場の積み重ねが評価されリピートで発注いただいたり、新たなお客さまの獲得につながっていると考えています。

──創業のいきさつをお聞かせください。

伊藤 10代のころから鉄工所作業員、トラック運転手などさまざまな職業を体験してきました。高校時代に取得した電気工事士の免許を生かし電気店で働いているうちに、現場監督や設計する立場を目指したいという思いが強くなり、PEACEの前身であるイトウ電工を立ち上げたのが平成7年です。以来力を入れて取り組んできたのが、電気工事にとどまらない分野の資格を取得して自分自身のブランド化を図ること。「第1種電気工事士」「1級電気工事施工管理技士」はもちろん「ファイナンシャルプランナー」「エネルギー管理士」などトータルで40種類ほどの資格を保有しています。

業績見通しを高め「黒字体質」に転換

──三宅(顧問税理士)先生とは平成18年に顧問契約を結ばれたと聞きました。

伊藤 知り合いの社長から先生を紹介されたのがきっかけです。当時は毎年赤字で給与も十分に支払えない状況でしたが、三宅先生にお願いしてから一貫して黒字経営を続けています。三宅先生は当社にとって経営全般を指導していただけるパートナーのような存在です。

──顧問契約当初、どんなアドバイスを受けましたか。

伊藤 まずキャッシュフロー経営に切り替えるよう提案され、節税目的で加入した生命保険や積み立てを解約するなど、不要な支出を見直しました。
 つぎに経営計画を立てるようすすめられました。経営は水モノだから計画など必要ないと思っていましたが、先生から経営計画の重要性を指導していただき、毎期計画を立てるようになりました。以前より売上高は減ったにもかかわらず、黒字に変わり、手元に資金も残る。なんで?という気持ちでしたね。ふだん活用している『FX2』が経営の道しるべになっていると感じています。

──経営計画を策定する流れを教えてください。

伊藤 当社は9月決算ですが、申告が終わる12月初旬に計画を作成しています。事務所の壁に《変動損益計算書》の画面を映し、三宅先生と監査担当の伊藤さんと勘定科目ごとの支出内容について議論しながら各月のキャッシュフローを確認し月次利益計画をつくっています。それ以外にも中長期の事業計画をつくっていて、新たな事業構想がある場合は資金がショートしないか綿密に確認したうえで着手するようにしています。防犯カメラのレンタルサービスもこうした検証をへて開始する事業です。

──経営計画を立てるメリットは?

伊藤 資金が必要になる時期を正確に予測でき、借り入れなどの手当てをして臨めるので安心感が違います。『FX2』を利用する前は、行き当たりばったりでしたから。金融機関からの信用も厚くなり、事業所新築のための資金を低金利で借りられました。

──『FX2』のどのような画面をよく見られますか。

伊藤 《売上高推移グラフ》画面で前年比売上高をよく確かめています。ひと目で業績が伸びているのがわかると、モチベーションがぐんと上がります。決算3カ月前の6月の月次監査では、期末着地点の予測とともに納税額を打ち合わせています。根拠のある数字を元にタイムリーに指導していただけるのはありがたいですね。

三宅税理士 事務所の監査担当者には『巡回監査支援システム』を使って、各企業の業績の推移や相談事項を報告してもらっています。伊藤社長はビジネスのアイデアを常に構想されており、こまめに連絡をいただき相談に対応しています。いかなるときも現状にとどまることなく、前に進むのみという姿勢が伊藤社長のすばらしいところです。

──『FX2』の使い勝手はいかがでしょうか。

伊藤美幸経理担当 頻繁に発生する取引を仕訳辞書に登録できるので、入力ミスが減りました。売掛金には30社ほど取引先を登録し、会社ごとの残高がわかるように区分けしています。

伊藤浩隆監査担当 『FX2』への伝票入力は奥さまが担当されていますが、TKCのデータセンターにデータを随時バックアップしていただいています。自分のパソコンに復元し、入力科目などを確認してから監査に臨めるため助かっています。

──抱負をお願いします。

伊藤 「変化に対応したものが生きのこる」をモットーに、攻めの経営を続けていきたいです。まずは防犯カメラのレンタル事業を軌道に乗せたいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社PEACE
設立 1995年11月
所在地 愛知県尾張旭市向町2-6-5
社員数 1名
URL http://www.eco-peace.co.jp/

CONSULTANT´S EYE
業績予測の精度を高めアグレッシブ経営を支援
巡回監査担当 伊藤浩隆
税理士法人 泉
愛知県名古屋市東区泉1-1-35 ハイエスト久屋ビル3F TEL:052-212-5061
http://tkc-nf.com/zeirishihoujin-izumi/

 PEACE様とは顧問先企業からのご紹介により、平成18年11月からお付き合いさせていただいています。当事務所では経営者が真に活用できる経営計画の策定支援に力を入れており、『継続MAS』を活用した月次計画の策定を標準業務にしています。また毎月、巡回監査のため企業におうかがいし、キャッシュフロー、予算実績対比、予測貸借対照表などを説明し、正確な決算着地点、納税額予測に役立てていただいています。

 伊藤社長は当初、売り上げがあるにもかかわらず、手元に資金が残らない点を悩まれていました。顧問契約時から月次計画の策定を経営に取り入れていただき、事業年度開始時に伊藤社長と奥さまと経営戦略を話し合い、月次利益計画を作成、巡回監査では『FX2』で予実対比をしています。計画に対する進ちょくを正確に把握するためには、早期の月次決算が欠かせません。そのため毎月上旬にはおうかがいし、請求書への現場名記載などを重点的に確認しています。当事務所で関与後は毎期黒字経営を続けられており、2013年には本社社屋を新築されました。

 今では伊藤社長自身が長期経営計画を作成されており、相談をいただくたびに『継続MAS』で利益、資金繰り等を検証し、最終決定を行っています。事業内容も電気工事にとどまらず、防犯カメラを用いた見守り事業へと拡大しています。伊藤社長の意欲的な経営方針に対応するため、『継続MAS』は必要不可欠なツールだと考えています。かつて社長は「できない理由を考える時間があったら、できる方法を考えたほうが有効だ」とおっしゃっていました。PEACE様のアグレッシブな経営をサポートするため、『継続MAS』と『FX2』をフル活用し、良き相談相手としてともに歩んでいきたいと思っています。

掲載:『戦略経営者』2015年4月号