就職活動の開始時期が今年度から「繰り下げ」(後ろ倒し)になったといいます。それが中小企業の新卒採用にどんな影響を与えるか教えてください。(事務用品卸)
2016年度新卒採用がスタートしました。今年度から新スケジュールになり、採用広報活動が3月1日、選考活動が8月1日にそれぞれ開始となります。
「就活の繰り下げ」が行われた背景には、就活の早期化・長期化による学業阻害の問題があります。数年前までは、大学3年生の10月(のちに12月に変更)に採用広報活動が、大学4年の4月1日から選考活動が開始されていました。内定がなかなか出ない場合、大学生活の後半がほとんど就活で終わることになります。会社説明会や選考のために講義を抜けなくてはならないことも問題となっていました。もうひとつは、留学の促進です。従来のスケジュールでは留学から帰る時期の関係で就活に間に合わないことがありました。これらを考慮した上での取り組みです。
もっとも、始まる前から、この通りに進むかどうかは疑問視されていました。就活開始前にHR総研が企業に対して行った調査によると、新スケジュールが守られると予想している企業は9%にすぎず、53%の企業は守られないと思うと答えています。この就活時期繰り下げの影響を論じる際には、本当は表面上のスケジュールと、実際に進むスケジュールに分けて考えなくてはならないと言えるでしょう。
その前提で、中小企業が受ける影響について考えてみましょう。選考開始時期が大学4年の8月にずれる分、大手の選考が一段落し、学生の目が中小企業に向く時期が遅くなる可能性があります。求人が回復し、売り手市場化が進んでいることもあり、中小企業が採用を開始する頃には採りたいと思っていた層の学生には既に内定が出ているおそれもあります。また、8月1日の選考開始に対して、中小企業がややフライング気味に採用したところで、あとから大手企業に内定者をとられる可能性もあります。
このように、就活時期繰り下げは中小企業の採用活動をより不利なものにする可能性があります。余談ですが、就活時期繰り下げを検討する会議において、大企業を中心とした組織である経団連は、当初は中堅・中小への影響が懸念されると提言していました。
中小企業が取るべき対策とは
では、中小企業が取るべき対策とは何でしょうか。まず、就活時期繰り下げとは関係なく、採用のための基礎力をアップさせましょう。具体的には、まずは企業の魅力の抽出、プレゼンテーションや面接のスキルアップです。そのうえで学生とのつながりを再考しましょう。大手も含め、現在注目されているのは大学とのつながりです。採用ターゲットとしたい大学で、個別に説明会を開く、求人票を送付するなどの取り組みを行ってみてはどうでしょうか。
さらには、インターンシップの実施です。中小企業ならではの、仕事をひと通り体感できるプログラムで学生を迎え、接触するとともに、認知度アップを図るのです。
一番大事なことは学生に納得してもらうことです。学生は中小企業に対してただでさえマイナスイメージを持っています。可能な限り、企業のことをガラス張りにして伝え、納得してもらいましょう。
就活の時期がいつになろうとも、当たり前のことをやり切ることこそが成功への近道です。そのことをぜひお忘れなく。