小ロット多品種のダンボール箱1個から注文を受け付け、業界の常識を覆す超短納期の製造販売体制を確立している有村紙工。5%成長を20年以上も維持する優良企業が給与計算と労務管理のために導入したのが『PX2』である。有村誠社長と総務・経理を束ねる有村千恵子常務に話を聞いた。

ダンボール箱1個から驚きの短納期で販売

有村紙工:有村社長(右から2人目)

有村紙工:有村社長(右から2人目)

──ダンボール箱の製造販売を手がけられていますが、強みはどんなところにあるのでしょう。

社長 創業当初からダンボール箱1個から注文を受け付け、できる限りお客さまのご要望に応えるという姿勢を追求しているのに加え、短納期を徹底していることです。業界では通常ご注文いただいてから中2日で納品するのが一般的ですが、当社では常識を覆す「中ゼロ」政策を強力に推進してきました。これは夕方の5時までに発注があれば翌日に納品するという体制です。

──その仕組みが実現できた理由は何ですか。

社長 材料の仕入れと製品の納品体制をいかに整えるかが鍵になります。必要なトラックの台数を確保したうえで、24時間の生産体制を持っている大手メーカーと話し合い、夜間でも材料を調達できるような仕組みを構築してきました。このような充実した配送体制をとることで、たとえば近場のお客さまから「大量のダンボール箱の保管に困っている」という情報を聞けば、「短納期のデイリー納入ができるので当社に切り替えませんか」とご提案できるわけです。当社にも在庫も持たなくて済むというメリットが生じます。

──短納期という武器でソリューションを提供するようなイメージですね。

社長 そうですね。私が最も興味を持っているのは、お客さまがどんなことに困っているかということ。商材はダンボール箱で共通ですが、取引先のお悩みや困りごとは本当に多種多様です。たとえば「今使っている箱の材質が弱くてね」と打ち明けられたお客さまに対しては「形状と素材を変更すればコストを変えずに丈夫な箱をご提供できますよ」とこちから提案する、ここが当社の一番の強みですね。経営理念でも「物流のトータルコーディネーターを目指そう」というスタンスを明確に掲げています。

──営業活動はどのようにされていますか。

社長 新規受注の大半はお客さまのご紹介によるもので、ほとんど飛び込み営業はしません。あとはタウンページですね。

──タウンページとは意外です。

社長 高齢者の方などは今でもタウンページで注文されますよ。たとえば小さな商店から「急きょ10個使いたい、サイズは縦横××センチ。おたくは作れますか」と問い合わせがきます。金額ベースでは月に50~60万ですが、われわれは基本的にお客さまの顔をしっかり見る商売。そうしたきめ細かい対応を続けていると、「うちの親会社は大量にダンボールが必要だから紹介してあげるよ」といって大口の取引を獲得するようなこともあります。

──しかし小口の注文は手間がかかるのでは?

社長 コンビニエンスストアはなぜもうかるのかというと、必要なものが常に確実にあるから。だから本当は缶コーヒーを買いにきたのだけどついでにおにぎりを買ってしまうというような消費者心理になってしまうのです。製造業としてもそうした部分は見習いたいですね。
 先日は、30年も使っているひな人形を詰めるダンボール箱が欲しいという個人のお客さまからの問い合わせがあり、その日のうちに3箱を作って販売したことがありました。少々値段は張りますが、お客さまが「とても大事にしていたものを丁寧にしまいたかったので、むしろ安いくらいです」と言っていただきました。品物を取りに来られたお客さまなどは工場でダンボール箱が生産されている様子を見てびっくりされていきますので、当社の良い宣伝にもなります。こうした一つ一つの仕事を今後も大切にしていきたいと考えています。

安心感がまるで違う充実のサポート体制

──『PX2』とアマノ社の勤怠管理システム『TimeP@CK(タイムパック)』を導入された経緯について教えてください。

社長 一番の理由は、新たに導入する『FX4クラウド』にマッチングしたシステムと機械に切り替えるのが自然だと考えたからです。これまで使っていたカード読み取り式タイムレコーダーを使う他社製システムでは、勤怠管理と給与計算で別々のソフトが必要になって面倒でしたが、『PX2』では『FX4クラウド』と連動しているのでとてもシンプルに使えるようになりました。給与関係は租税公課が頻繁に変わる分野なので、税理士の先生と連携を密にとっていたほうがよいという思いもありましたね。

──従来システムでは満足がいっていなかったと。

常務 税率が変更になった時などにCD-ROMが送られてきて、自分で読み込んでバージョンを更新する手間が必要でしたが、その際タイムレコーダーのデータをうまく読み込まない誤作動が起こることがありました。そうした更新のタイミングはみなさん同じですから、サポート窓口に電話してもなかなかつながりません。結局原因は分からずじまいで、業務に大幅に支障を来たし困ることがありました。

社長 現在は山内(謙輔監査担当)さんに定期訪問に来てもらえるときにその都度対応してもらっていますから、とても助かっています。

──40人ともなると計算業務はかなり煩雑になると思いますが、切り替えられた効果はいかがですか。

常務 以前は丸1日かけるつもりで臨んでいましたが、『PX2』に切り替えてからは半日で済むようになりました。山内さんにきちんとチェックしてもらえるので安心感がまるで違いますね。

社長 給料の部分は経営に直結するので確かに最初は「変えてしまって大丈夫かな」と不安はありました。しかし実際やってみると、経理に長けている人が常に横にいるのでまったく心配する必要はなかったと感じています。何回か打ち合わせした後にデモを行い、それから正式移行するというスケジュールで進めましたが、想像よりもスムーズに2~3カ月で切り替えは完了しました。

──勤務形態別の管理などはされていますか。

社長 現状はそんなに複雑ではなく、残業がつくかつかないかという程度です。しかし新しいシステムではたとえば定時が異なる勤怠形態をAパターン、Bパターン……と簡単に設定できますので、業務量も拡大していることから、現在夜勤の勤務形態を導入することを検討中です。もしそうすることになれば「給与体系を変えたいんだけど」と山内さんに相談すればすぐに変更できますが、これが今までのシステムではそうはいかなかったでしょう。

──『PX2』の「戦略情報」タブのメニューには経営分析機能がありますが、利用状況は?

中根武顧問税理士 まだはじまったばかりなので十分に使いこなすまでには至っていません。とにかく1年間は通常業務で回してみて、それから活用の幅を広げていきたいですね。ただ同社では事務の手作業がかなり多かったのですが、自計化することによって随分効率化が図られるようになりました。今後は『FX4クラウド』など他のシステムとの連携機能をより活用できればベターだと思っています。

──人件費総枠の予算化などはどうしていますか。また労働分配率の傾向はいかがでしょう。

社長 基本的に全体の人件費総額は前年をベースにして、業績に連動させてボーナスで調整するというやり方ですね。営業職などでは5%程度歩合給を取り入れています。

山内謙輔監査担当 残業が拡大傾向にあるので、粗利に占める労働分配率が少しずつ上がっていますが、そんなに急激に上昇しているほどではないですね。

社長 リーマンショックでボーナスが半減したりしたことは確かにありますが、人件費削減や時短をしたことは1回もありません。社員も10人いたら10人それぞれ考えかたが違います。定時になったら早く帰りたいと思う社員もいれば、残業してもいいからとにかく稼ぎたいと思う社員もいる。そうした社員の思いにできるだけ対応してあげるのが経営者の仕事だと考えているので、正確な残業時間の把握・給与計算を行い、人件費の総額を毎月確認することが必要です。

──今後の事業戦略についてお聞かせください。

社長 より付加価値を高めるため、PC機器の梱包などに使用する複雑な形状をしたダンボール製緩衝材の製造販売に進出し、新たな収益源とすることに成功しました。また現在は物流拠点と第2工場が別々の場所にあるのですが、それらの機能を統合してより効率化を図るため250坪2階建ての新工場を現在の本社工場隣に建設中です。実は当社は私が入社して以来、売上高の5%成長を25年にわたり続けていますが、新工場の稼動で大手が手がけたがらない仕事を得意とする当社のスタイルにさらに磨きをかけながら、今後もこのペースを維持し続けたいですね。また私は創業者である父から会社を継いだ2代目ですが、15年ほどかけて息子たちへ万全な形で事業承継するための準備も着々と進めたいと思っています。

(本誌・植松啓介)

会社概要
名称 株式会社有村紙工
設立 1969年3月
所在地 埼玉県入間郡三芳町上富844-2
売上高 12億円
社員数 40名
URL http://www.arimurashikou.com/
顧問税理士 中根 武
中根税務会計事務所
東京都豊島区駒込1丁目12番16号
レジデンス六義園1階
TEL:03-3945-8594
URL:http://www.nakanekaikei.co.jp/

掲載:『戦略経営者』2014年12月号