コピーから製本までを手がけ、図面・契約書などのハードカバー製本を得意とするフォアマインズ。木村広幸社長(55)は、いち早くデジタル業務部門を立ち上げ、文書の電子化ニーズに対応してきた。近年では計画に基づく経営を推し進め、財務体質の強化に力を注いでいる。

職人技と技術の融合でデジタル時代を勝ち抜く

フォアマインズ:木村社長(左)

フォアマインズ:木村社長(左)

──印刷業を手がけられているそうですが、御社の立ち位置を教えてください。

木村 高性能のデジタル機を使ったコピー、およびデータの入出力を主力業務にしています。商業広告などの印刷物は一般的に印刷会社に依頼するものですが、そこまで多くの部数を必要としないときはコピーの方がコストを抑えられます。加えて製本も手がけているのが、当社の特徴です。

──創業時は製本業からスタートされたそうですね。

木村 私自身、前職では製本業務に携わっていて、総勢4人のメンバーが製本やコピーなどの強みを持ち寄り、フォアマインズを設立しました。会社を興した平成4年当時、大手企業を中心にコピー機が普及しはじめました。当社を「町なかのコピー屋さん」と見なす方もいて、他社と差別化するため製本部門を前面に打ち出したのです。コピーから製本まで一貫して手がけられる会社はあまりなかったため、重宝がられました。

──依頼する側にとって安心感があります。

木村 お客さまのニーズをふまえ、迅速に対応できる小回りの良さが当社の強みと言えるかもしれません。

──手がけられている製本の一例を挙げていただけますか。

木村 測量会社や建築事務所から注文いただいた公共工事の設計図、完成図などの図面、あるいは契約書を製本化することが多いです。市役所などの年度末である3月にかけてもっとも忙しくなります。

──製本には高度な技術が必要とされるのでは……。

木村 製本には「クロス巻き製本」「観音製本」「契約書製本」などさまざまな種類があり、用途に合わせ最適な方法を選択しています。製本業務に長年携わっている社員も多く、手作業による製本には希少価値があります。

──具体的には?

木村 たとえば文字打ち機で一文字一文字を表紙に配置する業務です。見栄えのする文字配置や文字間のスペース取りなど、これまでの経験を生かしデザインのアドバイスもおこなっています。 

──文書のデジタル化という流れに対しては、どんな手を打たれていますか。

木村 創業後ほどなくしてパソコンが急速に普及し、平成10年にデジタル業務部門を立ち上げました。官公庁が発注する工事などの最終成果を電子データで納品する「電子納品」の依頼が増えており、要項にのっとりデータ作成しています。また自治体の書庫に保管されている文書などの書類をスキャナーで読みとり、PDF形式に加工して納品する業務も手がけています。

──営業担当の方はいますか。

木村 5名の営業スタッフが1人あたり10社ほどの取引先を担当し、日々ルート訪問しています。横浜市や千葉市など近隣他県の企業も含まれ、カバーするエリアは広いです。ご要望をうかがって次回の業務に役立てたり、展示会用の大型パネル製作など新たなご注文をいただくこともあります。

──8月決算を間近に控え、今期の見通しはいかがでしょうか。

木村 昨年から野口先生と経費削減策について話し合っていて、今年の5月以降、実行に移しているところです。工場の2階にある事務所を半分ほどの広さに縮小し、老朽化した電話やパソコンを整理しました。来期にはその成果が反映されてくると期待しています。

金融機関が評価するシビアな経営計画

──日ごろ『FX2』をご利用いただいていると聞いています。

木村 5年前から利用しています。野口先生とのお付き合いは10年近くになりますが、先生から熱心に勧められ導入しました。

──以前は市販の会計ソフトを利用されていたそうですね。

木村 長年X社の会計ソフトに伝票入力をおこなっていました。顧問税理士事務所が変わると同時にシステムも突然変わってしまうと経理担当者がとまどうため、しばらくはX社のソフトを使いつづけていました。入力がある程度終わった段階で野口先生に来社いただき、資料を持ち帰って会計事務所で監査してもらうというスタイルでした。期限を決めていなかったぶん、数字を把握するのに少し時間がかかっていました。

──現在も毎月、野口先生が訪問されていますか。

木村 ええ。巡回監査の訪問日までに『FX2』に前月の伝票をひと通り入力しておくというのが習慣になっています。経理担当者が毎月400枚前後の仕訳を日々入力しているので、会社の業績を確認するのにタイムラグがなくなりました。毎月中旬までには前月の業績を把握できています。

野口 『FX2』の利用をお勧めした当時リーマンショックが起こり、フォアマインズ様の売り上げに少なからず影響がありました。売り上げが伸びていないときほど、自社の数字を早く知っていただきたいという思いがあり、『FX2』への切り替えを提案しました。今では発生主義に基づき、タイムリーに伝票を入力していただいています。

──業績を確認する際、どのような点を注視されていますか。

木村 ふだん利用している自分のパソコンで『FX2』の画面を開き、取引先ごとの売り上げ、経費科目を対前年や目標値と比較しながらチェックしています。各営業担当者がスプレッドシートに受注金額を入力していて、サーバにデータ保存し社内で共有しています。営業担当者にはそれぞれ専用のパソコンを用意しています。仕事の依頼もメールで届くので、パソコンがないと仕事になりませんから。

──よく確認する『FX2』のメニューは?

木村 《変動損益計算書》や《要約貸借対照表》の画面から月次の売上高グラフをよく見ます。勘定科目ごとの金額を前年同月と比較し、大幅な増減があるときは仕訳にさかのぼり原因を調べ、対策を検討しています。決算期末の業績見通しが立てやすくなりましたね。

──毎期、目標も立てられていると?

木村 野口先生にご提案をいただき、3年ほど前から経営計画を策定しています。新規取引先の開拓見込みや経費削減策などを話し合い、中期計画と短期計画に落とし込んでいます。売り上げが年度末あたりに集中するため、9月から12月にかけて資金繰りがきびしくなる傾向があります。金融機関から確実に融資をしていただく上でも、事業計画を立てる必要がありました。

──金融機関に経営計画書を提出されているわけですね。

木村 決算が確定する例年10月に取引している金融機関に赴き、経営計画書の中身を説明しています。売上・経費計画をシビアに立てており、信頼性は徐々に高まってきていると感じています。そもそも以前は金融機関に経営計画書を提出するという発想自体ありませんでした。

野口 フォアマインズ様では社長の話されたとおり、売り上げが集中する時期があるため、資金繰りが非常に重要な課題です。実現可能性の高い経営計画を立てるベースにあるのが『FX2』といえます。

──今後の事業見通しはいかがでしょう。

木村 6年後の東京オリンピック開催に向け、道路などのインフラ整備が進むことが見込まれ、当社の経営にも少なからずプラスになると見ています。公的な保存文書の電子化ニーズはいっそう高まってくるでしょうから、一つ一つの仕事を着実にこなしながら継続的なお付き合いができればと思っています。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社フォアマインズ
設立 1992年
所在地 東京都品川区西五反田7-16-1 アーベイン末広ビル
TEL 03-5496-8251
売上高 1億8000万円
社員数 13名
URL http://www.fourminds.co.jp

CONSULTANT´S EYE
毎月の予実管理に基づき着地点が明確に
代表社員 税理士 野口大樹
税理士法人ブレイス
東京都板橋区徳丸3-2-9-105 TEL:03-3936-8581
HP:http://www.tkcnf.com/kato-office/

 フォアマインズ様とは、平成18年度、第14期の決算から関与させていただいています。当初は、市販の会計ソフトを利用されていました。顧問税理士事務所が変わると同時に会計ソフトを変更し、経理業務に混乱をきたすのは避けたいという木村社長のご意向により、数年間利用を続けられていました。しかし、リーマンショック等の影響もあり「できるだけ早期に正確な数字を把握したい」という考えをお持ちだったことから、『FX2』のご利用をおすすめし導入いただきました。

 フォアマインズ様の特徴として、売り上げが年度末にかけて集中する傾向があります。売上高の季節変動が激しいため、月次決算を行い現状をしっかり把握するととともに、正確な売り上げ予測を立てられるかが非常に重要です。木村社長とじっくり話し合うため当事務所に来所していただき、社長の売り上げ予測をおうかがいしたうえで経費、利益計画などを提案し、『継続MASシステム』を活用して毎期、短期経営計画を策定しています。

 かつ、金融機関に対して決算書とともに「経営改善計画書」を提出し、評価をいただいています。『FX2』を利用していただきたかった理由として、『継続MASシステム』を使いたかったという点がありました。これら二つのシステムを併用することで、予実管理が可能となり、毎月の巡回監査において決算予測を立てやすくなりました。

 フォアマインズ様がさらに発展を遂げられるよう、TKCシステムの活用を段階的に提案し、経営の意思決定のご支援を引き続き行っていきたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2014年9月号