新入社員教育にあたって「メンター制度」を導入しようと考えています。うまく機能させるためのポイントを教えてください。(医薬品卸)
メンター制度とは、指導・相談役となる先輩社員が、新入(若手)社員の特にメンタル面のサポートをする仕組みのこと。簡単にいえば、担当者(メンター)となったお兄さんやお姉さんがいろいろ相談に乗りながら、新入社員(メンティー)の不安や悩みを解消してあげるための制度です。近年、メンター制度を導入する企業が増えているのは、若年層の価値観の多様化や、コミュニケーション能力の低下が顕著になってきたことなどが背景としてあります。
メンター制度をうまく機能させるためのコツは、まず「メンターの選び方」にあります。同じ部署の先輩社員をメンターにするやり方も決して間違いではありませんが、できればまったく別の部署から選んだほうがよいでしょう。考えてみてください。新入社員の悩み事といえば、日常業務をおぼえるための苦労や、同じ部署内での人間関係に起因することが多い。だとすれば、毎日顔を合わせている上司やOJTの担当者よりも、第三者的な立場にいる他部門の先輩社員のほうが何かと相談しやすいのです。
また、年齢や社歴の近い先輩社員をメンターにすることもお勧め。今どきの若い社員は上下のコミュニケーション、つまり自分とは違う世代の人との付き合い方をよく分かっていません。実際、「上司とどう接してよいのか分からないで困っている」という悩みを抱える新入社員も多いのです。他世代との付き合い方を教えてあげるためにも、年齢のちかい社員のほうが彼らの気持ちをよく知っているだけに適任といえます。
もちろんメンターを選ぶ際には、その社員に後輩の「悩み相談係」になれるだけのホスピタリティーがあるかどうかも大切な要素。きちんと新入社員の面倒をみてあげられるだけの「心の余裕」をもった人を選ぶべきでしょう。
離職率低下のメリット
ひとりの新入社員につき、ひとりのメンターがつくのが基本ともいえますが、複数名の先輩社員で面倒をみるというやり方を採用しているところもあります。都内で人材コンサルティング事業を営むレイス(港区赤坂)では、社会人経験3年目以上の社員が「里親」、入社2年目以上が「里兄・里姉」の役割を担い、「里子」である新入社員のメンタルフォローをする「里親制度」を採用しています。この"疑似家族"でのランチ会や飲み会を定期的に開催し、新入社員の悩みに親身になって応えてあげています。複数メンバーで相談に乗ることによって、より多角的なアドバイスができているのは言うまでもありません。
メンター制度をしっかり機能させることができれば、若い社員の離職率低下などの効果が得られます。せっかく採用した社員にすぐに辞められてしまうのは、会社にとって大きな損失。長期間継続して社員を育てていくためにも、メンター制度は重要な役割を果たします。また、新入社員が一人前の戦力になるよう指導・育成にあたる先輩社員にとっても、メンター制度はマネジメントの技術を身に付けるためのよい訓練になります。これらのメリットが期待できるメンター制度をぜひ効果的に運用してください。