オホーツク海随一の毛ガニ水揚げ量をほこる北海道枝幸町。真冬にはマイナス30度に達する酷寒の地に、熱い支持を集める婦人服店「ヨシヤ」がある。戸田道雄社長(58)は「『SX2』をベースにしたきめ細かい在庫、顧客管理が着実に成果を生んでいる」という。

ミセスのハートをつかむ商品をリーズナブルに提供

マル道よしや:戸田社長(右)

マル道よしや:戸田社長(右)

──衣料品を販売されていますね。

社長 おもにヤングミセスやミセス向けの婦人服や宝飾品を販売しており、60代のお客さまがもっとも多いです。この年齢層の方々はご主人が会社を退職されたり、お子さまが結婚されたりと人生の節目をむかえ、なにかと洋服が要りようになります。私たち夫婦も20代から当店を運営してきたので、ちょうど同年代に当たりますね。

──当初、総合衣料品店としてスタートされたとか。

社長 先代がとなり町で衣料品店を創業したのがそもそもの始まりです。私が後を継ぎ、マル道よしやを設立しこのお店をオープンしました。当時は衣料品全般を取り扱っていましたが、大型スーパーの進出やテレビショッピング、インターネット販売といった新業態の販売店の影響をうけ、婦人服をメーンとした店舗に転換したのです。2年前には稚内市にオンリーブランドの婦人服を扱うショップを開店しました。

──婦人服に絞ったねらいを教えてください。

社長 当店の商圏である紋別以北の地域は住民の高齢化が進んでおり、みなさまのニーズに対応するためです。現在は婦人服が売り上げの大半を占めていますが、一部オーダーメードによる紳士服も扱っています。
 婦人服の場合、店頭に並べる約半年前にメーカーさんに発注をしています。桜の開花がオホーツク圏では例年5月10日ごろで、関東、近畿エリアより1カ月ほどおそく、10月には初雪が降ります。季節商品の展開サイクルが短いぶん、不良在庫とならないよう気を配ることが大切です。

──在庫ロスを生まないようにするためには……。

社長 仕入れる商品の選定は、ベテランの社員であってもなかなか難しい仕事です。『SX2』の前年の売り上げデータから商品サイズ、カラー、価格等を分析し、発注精度を高めるようにしています。

──独自におこなっているサービスはありますか。

社長 顧客の会員さま向けに「よしやスタンプカード」という会員カードをつくり、スタンプ数に応じプレゼントを差し上げています。カードには『SX2』の得意先コードをバーコードとして貼り付け、顧客情報の管理にも役立てています。
 ウインドウズが発売される前からマックのパソコンを使い、ちらしやPOPをつくったりしていました。毎年、ファッションショーやファンのつどいなどの催しを定期的に開いたりしていますが『SX2』の利用が軌道に乗りはじめてからは、イベントを大々的におこなうよりも日々の接客、販売により力を入れています。リーズナブルな商品を豊富に取りそろえているのも当店のうりのひとつです。

POSレジ機能を付加し「減量経営」を実現

──『SX2』を導入されたいきさつを教えてください。

社長 8年前、蝦名会計さんからご紹介をいただいたのがきっかけです。以前は顧客、売掛金管理を市販ソフトでおこなっていましたが、ソフト会社のサポート担当者と疎遠になり困っていたところでした。

──使ってみていかがでしたか。

社長 導入後3年間は『SX2』で請求書を発行していませんでした。というのもいったん売り掛けで販売したあと、クレジット入金と現金入金の区分け処理があったり、仕立て代が追加計上されたりするつど、新たな請求書を求められることが多かったため、手書きや使い慣れたソフトで対応していたのです。
 その状況が変わったのは、分散入力ができるピア・ツー・ピア機能を使いはじめてからです。従業員が『SX2』で日々の取引を確認できるようになり、POSレジに見立てた活用法を思いつくきっかけにもなりました。いまでは他のソフトを使うのをいっさいやめ、『SX2』のみで販売、在庫、顧客管理をおこなっています。

──『SX2』が登録されているパソコンをPOSレジとして代用するとはユニークなアイデアですね。

社長 『SX2』に伝票入力するさい、コード一覧画面で取引先や商品を検索して探しだすのがひと苦労でした。なにしろ取引先は2,000件、2万アイテムありますからね。コンビニなどでPOSレジを見かけるたびにうらやましく感じていましたが、中小企業がそう簡単に購入できる値段ではありません。
 あるときバーコードリーダーを買ってきてパソコンにつなぎ、面白半分にたばこなどのバーコードを読み込んでみたところ『SX2』で認識できてしまったんです。蝦名会計さんやTKC旭川センターの担当者にも手伝っていただき、取り扱っているすべての商品をバーコード化し、バーコード付きの値札と会員カードをつくりました。蝦名先生のアドバイスにより特許を申請し、1月に「会計管理補助システム」として登録されました。

──具体的にはどんな効果がありましたか。

社長 商品在庫数を正確に把握できるようになったのが大きいですね。お客さまや取引先さまから在庫確認の問い合わせをいただくと、以前は売り場や倉庫内を探しまわっていましたが、『SX2』の画面をひらけば正確な数字がわかるので、即座に回答できるようになりました。ここ3年間で在庫数が5分の1ほどに圧縮でき、棚卸しにかかる時間と労力も劇的に変わりました。取引先さまも「あのお店はしっかり在庫、販売管理ができている」と感じ、商品を安心して納めてくれているのではないでしょうか。道内の辺境の地にありながら、東京のメーカーもどんどん商品を納入してくれるようになりました。
 当社のような規模の大きくない会社では経理の専任者を置くことはきびしいので、社員全員が簡単に使いこなせるシステムであるという点が非常に大事だと感じています。空の状態の連記式領収書が出てこなければ、なおさらいいのですが…(笑)。

──『SX2』の出力帳表で活用している資料は?

社長 店舗のバックオフィスで毎朝開店前に社員をあつめ、お茶講のような会議をしています。《売上推移グラフ》や《売上推移表》、《売掛金残高一覧表》などを回覧し、現状を確認することが多いですね。また『SX2』に保存されている顧客データを元に宛名ラベルを作成し、ダイレクトメールに貼って活用しています。『SX2』を使いたおしています(笑)。クラウド版なら稚内店の売り上げ状況もリアルタイムで把握できるようになりますね。

蝦名朗太・顧問税理士 マル道よしや様では『SX2』をフル活用いただくことにより無駄な在庫が減り、資金繰りも心配のない、スリムで健全な企業体質につながったと実感しています。

蝦名優・監査担当 月次監査にさいしては、あらかじめ『RATパトロール』で『FX2』の残高一覧表などを確認してから訪問しています。いまでは25日前後で決算数値が確定するようになりました。

タッチ式キーボードをメーカーと共同開発

──新たに申請中の特許もあるそうですね。

社長 タブレット端末が普及しつつあることを念頭に、画面をタッチして操作できるタッチパネル式キーボードを長野テクトロンさんと共同開発しました。たとえば『SX2』の伝票入力、商品検索、得意先検索といったショートカットキーをボタンに割り当てると、画面かボタンのどちらかをワンタッチするだけでシステムを短縮操作できるようになります。開発資金は北海道中小企業総合支援センターのファンドを活用しました。

蝦名税理士 決算申告のさい、「試験研究費の税額控除申告書」という珍しい書類を作成することになるとは思いもよりませんでしたね(笑)。

──今後はいかがでしょう。

社長 道北エリアの人たちによりいっそう足を運んでいただけるよう、店舗の改装など積極的に設備投資をおこない、将来は札幌市内にもお店を構えたいです。
 今後もTKCシステムをフル活用していきますが、『SX2』を利用する仲間が増えてほしいと思っています。法改正もタイムリーに対応でき、来たる消費税率変更作業も苦痛にはならないはずです。会計事務所とTKCの社員さんが支援してくれます。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社マル道よしや
設立 1976年12月
所在地 北海道枝幸郡枝幸町梅ヶ枝町801番地
TEL 0163-62-3588
売上高 約2億円
社員数 10名
URL http://yoshiya.hp.gogo.jp/pc/

CONSULTANT´S EYE
システムの合わせ技であらゆる業績数値が改善
室長 社会保険労務士 蝦名 優 蝦名朗太税理士事務所
北海道稚内市中央2-3-1 TEL:0162-23-3062
http://ebina.tkcnf.com/

 私がマル道よしや様を担当させていただくようになったのは、8年前からです。当時すでに『FX2』を利用されていましたが、新たに『SX2』および『社長メニュー』の利用を提案しました。『SX2』導入前は独自に作成された資料で売れ筋商品、粗利率、商品回転率などを把握されていました。戸田社長から「より正確かつ具体的に、タイムリーに自社の状況を把握したい」というご要望をいただき、『SX2』をおすすめしたのがそもそもの始まりです。以前、開設した支店を閉鎖されたこともあり、商品構成をしっかり管理したいという思いが強かったのではと感じています。

 社長は『SX2』のみならず『FX2』や『社長メニュー』の機能を自ら研究し、使い込んでいます。電話でご質問をいただくこともしばしばで、私が分からないことはTKC旭川センターのSCGの方々に協力を仰ぎ、解決していました。この場を借りて感謝いたします。『SX2』導入後は一つひとつの商品を分析し、売れ筋商品や成長を期待できる商品等に分類し、それにより商品回転率、利益率の改善につながりました。売掛金も取引先ごとに管理し、《売掛金残高一覧表》を毎朝開催されている会議の参考資料として活用し、早期回収に役立てられています。

 今では『継続MASシステム』で策定した目標数値を予算として『FX2』に登録し、毎月予実対比をおこなうことで、財務体質の改善に役立てています。きめ細かい在庫管理により、在庫のダブつきが解消し、商品、在庫回転率は年を追うごとに改善し、当期においては優良企業の平均値に引けを取らないほどにまでなりました。商品構成を見直されたことにより、財務面も安定し、総資本経常利益率も年々上向いてきています。

 現在、『SX4クラウド』への移行を前向きに検討いただいています。私もシステム知識をさらに身に付け、マル道よしや様の経営にいっそうお役に立ちたいと考えています。

掲載:『戦略経営者』2013年5月号