首都直下地震が発生した時の、企業に求められる帰宅困難者対策について教えてください。(システム開発)
首都直下地震の発生時には、救急・救助活動、消火活動、緊急輸送活動等の応急活動を迅速・円滑に行う必要があります。しかし公共交通機関が運行の停止等を行っている中で、大量の帰宅困難者が徒歩等により一斉帰宅を開始した場合には、緊急車両の通行の妨げになる可能性があり、応急活動に支障をきたすことが懸念されます。
このような帰宅困難者の一斉帰宅に伴う混乱を回避するとともに、企業においては安全の確保を図るため、従業員などを施設内に待機させることが重要となります。
そこで、国、地方公共団体、民間企業等は「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会」を設置して検討を重ね、昨年9月に企業等がこれらの対策を適切に行うための参考となる手順等を示した「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン」を策定しました。
そのなかでは平常時における対策として、
- 従業員等の施設内待機に係る計画を定め、周知しておくこと
- 水、食料、毛布、簡易トイレ、衛生用品(トイレットペーパー等)、燃料(非常用発電機のための燃料)等の備蓄を進めておくこと
- 備蓄量の目安は3日分とするが、震災の影響の長期化に備え、3日分以上の備蓄についても検討していくこと
- 3日分の備蓄を行う場合も、外部の帰宅困難者(来社中の顧客・取引先や発災時に建物内にいなかった帰宅困難者など)のため、例えば10%程度の量を余分に備蓄することも検討すること
- 施設内に従業員等が留まれるよう日頃からオフィスの家具類の転倒・落下・移動防止対策、事務所内のガラス飛散防止対策等に努めること
などが示されています。
また、「発災時における従業員等との連絡の手段・手順をあらかじめ定めておくとともに、従業員等が安心して施設内に待機できるよう、その家族等との安否確認手段を従業員等へ周知すること」や「従業員等と家族等との安否確認の訓練を行うように努めること」「従業員等の居住地、家庭の事情などの把握に努め、帰宅者の順序をあらかじめ定めておくこと」なども必要となるでしょう。
「地震発生時」の対策
そして発災時においては、「まず従業員等が安全点検のためのチェックリストにより施設の安全を確認。さらに国や都県、政令指定都市の一斉帰宅抑制の呼びかけ等を受けた後は、災害関連情報等を入手し、周辺の火災状況等を確認し、従業員等を施設内または他の安全な場所に待機させる。来所者についても、従業員等に準じて、施設内または他の安全な場所で待機させるようにする」ことが求められます。ほかにも「建物や周辺が安全でない場合は、行政機関からの一時滞在施設等の開設情報等をもとに、一時滞在施設等へ従業員等を案内または誘導すること、事業継続のための要員を除き、可能な範囲の人員で被災者支援・復旧活動(特に災害時要援護者の保護等)に努めること」などが示されています。
また混乱収拾時以降においては、企業等は、行政および関係機関(テナントビルの場合は、施設管理者を含む)から提供される災害関連情報等により、従業員等が安全に帰宅できることを確認したうえで、あらかじめ定めたルール等にもとづいて従業員等を帰宅させることが必要とされます。
このガイドラインを参考として、それぞれの会社が従業員の安全を確保しつつ帰宅困難者対策を適切に実施できるよう努めていただきたいと思います。