食品表示の見直しが予定されていると聞きました。改正内容の詳細について教えてください。(洋菓子製造)
日本の食品表示制度は、複数の法律を別々の省庁が所管しているため、複雑でわかりにくいと言われてきました。それを是正するべく「食品表示一元化検討会」で議論された結果(報告書)が、8月に消費者庁から発表されました。検討会による主な提言の内容は以下の4点です。
- 食品衛生法、JAS法、健康増進法の表示部分の一元化
- 食品衛生法とJAS法の用語の統一・整理
- 栄養表示の義務化
- 文字表記を大きくするための取り組み
消費者庁は「来年の通常国会での法案提出を目指したい」と発表しています。この法案は、食品衛生法とJAS法、健康増進法の表示部分を一本化した「食品表示法(仮称)」といわれます。今回の見直しは「3つの大きな食品表示の法律を一つにする」という抜本的な改正を目指しています。
実際に新しい法律案が示されないとはっきりしたことはわかりませんが、3つの法律がひとつになるので、かなり大がかりな改正になると思われます。
まだ不確定な栄養表示
まず改正の目玉である3.栄養表示の義務化についてですが、表示項目をはじめ、対象となる品目や業者等はまだ決まっていません。
現在の5品目(カロリー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム)に加え、飽和脂肪酸や糖質が義務表示に加わる可能性はありますが、トランス脂肪酸の義務表示は見送られるでしょう。消費者に塩分の取り過ぎをよりいっそう注意喚起するために「ナトリウムの表示順をカロリーの次にする」「食塩相当分表示を義務化する」といったことが検討課題になっています。
対象品目として、ばら売り商品や通販商品、飲食店などの外食産業が扱う食品も検討されましたが、従来通り「容器包装された加工食品」だけになりそうです。対象業者については、規模を問わずすべての製造・加工・販売業者にするのか、中小企業に対しては負担が大きくなるので「年商10億円以上の企業のみ義務化する」といった案も取り沙汰されています。
次に4.の文字表記についてです。ただでさえ情報量の多い現状のまま文字を大きくすれば、食品表示面積がますます広くなり、ラベル代などのコストが増えます。小さな商品だと、パッケージの大部分が食品表示になってしまい、中身がわからなくなる恐れがあります。
そこで文字を拡大するかわりに、既存の情報の一部を減らす案が出ています。もっとも賞味期限やアレルギーに関する情報は安全面から表示が必須とされているので、例えば「主要原材料の上位3品目だけを義務表示とする」とか「添加物は記号や数字で表示する」、「商品のホームページ上で知らせる」などの方法が考えられます。しかし、原材料や添加物の情報量が減ると、消費者の理解が得られるか疑問が残ります。なお、消費者の関心の高い原料原産地表示や、遺伝子組み換え食品表示の強化は見送られました。
3つの法律を一本化するには、用語の定義(例・生鮮食品と加工食品)や、義務表示項目(例・製造者と加工者)の統一など、懸案事項が山積しています。食品表示法として一本化されるという、大枠の方向は固まりましたが、具体的な詳細は今後審議されます。法律が施行されても、完全実施までの猶予期間は数年間設けられます。法律の全容が明らかになってからの対応でも遅くないでしょう。