「中小企業経営力強化支援法」が今年8月30日に施行されたと聞きました。どんな内容の法律か教えてください。(機械部品製造)

 中小企業経営力強化支援法のポイントは、中小企業の経営力の強化を図るために次の2点を進めることにあります。

 (1)中小企業支援事業の担い手の多様化・活性化
 (2)海外展開に伴う資金調達支援

 (1)には、より高度で専門的な経営支援を担う人たち、つまり金融機関や税理士(税理士法人)等のプロフェッショナルを取り込んで、今まで以上に充実した経営支援を実現しようという狙いがあります。従来、商工会や商工会議所などの「既存の中小企業支援者」は各地域できめ細かい経営支援を行ってきました。しかし、中小企業の経営課題が多様化・複雑化するなかで、これまでの経営支援機関だけでは十分な対応ができないケースも増えています。そうした中で新たな専門家の力を借りながら経営支援を実現することが大きなテーマとなっています。

 さらに(1)に関して言えば、来年3月に期限切れを迎える中小企業金融円滑化法の問題も絡んでいます。企業によっては、今後の成長をきちんと示した経営改善計画を策定し、経営の見える化を実現したうえで、その計画どおりの成長を自ら実現してもらうことが求められます。そのサポートが担える専門家ということで今回、税理士の存在がクローズアップされることになりました。

 次に(2)については、中小企業が海外展開を行うにあたって、海外子会社の資金調達需要が生まれていることが背景としてあります。これまで親子ローンのかたちで日本から海外の子会社にお金を送るのが一般的でしたが、為替リスクや送金規制などの問題があり、現地の金融機関から資金を調達したいというニーズが高まっています。そこで、「信用力の補完」という観点からの措置などを新たに講ずることにしたわけです。

「チーム」として企業を支援

 支援事業の担い手の多様化・活性化をすることは、いわば中小企業に対して「チーム」として専門性の高い支援を行うための体制を整備することです。これにより地域全体における中小企業への支援機能の質がさらに高まり、地域の中小企業に対する支援の輪がいっそう広がることを期待しています。

 このチームとしての支援体制の仕組みを示したのが図(『戦略経営者』2012年10月号31頁図参照)です。認定を受けた「経営革新等支援機関」が中小企業の経営状況の分析や事業計画策定などの指導・助言を行っていきます。

 ちなみに認定支援機関になるための基準には「税務、金融および企業の財務に関する専門的な知識があること」「財務内容等の経営状況の分析等の指導および助言に一定程度の実務経験があること」「長期かつ継続的に支援業務を実施するための組織体制や事業基盤があること」の3つがあります。

 中小企業をとりまく経営環境は厳しさを増しています。生き残りをかけた経営戦略がこれからますます重要になってきますが、その手助けをしてくれる地域のパートナーとして、経営革新等支援機関をうまく活用してもらいたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2012年10月号