炭火で焼いた滋養鶏とオリジナルの焼酎がうりの「ととや魚丸」をはじめとした居酒屋店を営む倉持商事。従業員の給与計算にとどまらず、労務管理のデータベースとしてもフル活用しているのが『PX2』である。顧客志向の店づくりで新たな客層を開拓しつづける倉持優社長と、会計課を束ねる串田菜穂子さんに話をきいた。

自慢の食材と銘酒そろえ“顔の見える”店をつくる

倉持商事:倉持社長(中央右)

倉持商事:倉持社長(中央右)

――居酒屋チェーンを展開されているそうですね。

倉持 東京都内で和食居酒屋を6店舗運営しています。「ととや魚丸」「一の倉」「花さんしょう」というお店で、炭火で焼いた焼き鳥と、鮮魚を使った料理を中心にお出ししています。当社では“手づくりの居酒屋”をモットーに掲げており、既製品を使わずほぼすべてのメニューを店内で調理しているのが特徴です。

――使っている食材について教えてください。

倉持 一口に鳥と言っても飼育日数や飼料によって名前が変わってくるのですが、飼育日数が45日前後をブロイラー、80日以上のものを地鶏とよんでいます。例えば皆さんもよく耳にすると思いますが「名古屋コーチン」や「比内鶏」など、有名なブランドの鶏は地鶏にあたります。そして飼料として、地養素やナラの樹液・海藻・ヨモギ粉末等の特殊純天然飼料を与えたものを滋養鶏といいます。当社でメーンに使っているのは、宮崎産の「日向鶏」や鳥取産の「大山鶏」といった滋養鶏です。そのほか、魚介類は築地市場から仕入れていて、野菜はほぼ毎日のように産地に足を運び、直接買い付けています。

――素材と鮮度にこだわられているわけですね。

倉持 お客さまにアピールするため、毎日旬の素材を用いた料理を従業員が手書きし“本日のおすすめメニュー”としてお店の入口に掲示しています。オリジナルの蔵出し焼酎もうりにしている商品のひとつです。契約を結んでいる佐賀県の蔵元から原酒ごと買い取り、2年間ねかせたうえでご提供させていただいています。「芋」と「麦」の2種類あり、まろやかな飲み口が好評です。当社の系列店でしか販売していない完全なプライベートブランドですので、価格も抑えることができました。

――なるほど。お店づくりではどんな点を心がけていますか。

倉持 調理している様子がお客さまにわかるよう、カウンター席を設けオープンキッチンにしています。というのも自分が作った料理をお客さまにどんな顔をして味わっていただいているか、わからなければおいしい料理は作れないと思うからです。ホールだけでなく調理場のスタッフも直接料理をお出ししたり、お客さまにあいさつをして出迎えたりすることでお店全体の活気も出てくる。そういったお客さまとの距離感を大事にしています。

――立地戦略は?

倉持 現在は茅場町や京橋、八重洲など、オフィス街を中心に展開しています。
 私自身は大手居酒屋チェーンの「養老乃瀧」で11年間働いたあと独立し、新宿御苑前に1店舗目を構えました。創業したてのころは正月の三が日以外、年中無休で朝から晩までそれこそ馬車馬のように働いていました。ほとんど休みを取ることができなかったので、なるべく日曜日を休業日にできるような場所にお店を出したいとかねがね考えていたのです。1号店は当時の従業員に譲渡してしまいましたが、当社の店舗網は都心に集中しているため、仕入れた鮮魚や野菜などを店舗間で融通しあえるというメリットがあります。ただ、オフィス街という立地なので、サラリーマンやOLの方が最も多いのですが、以前のように夜遅くまで飲み歩いている人は減ったように感じています。

――そんな逆風をはね返す打ち手は?

倉持 昨年から、平日の11時30分から14時30分までランチ営業を始めました。最近はアルコールばなれとよく言われているとおり、どちらかというとお酒より食事関連のほうが回転が早い。宴会メニューの売り上げが減ったぶん、昼食の需要でカバーできたのは大きかったと思います。また価格設定はできるだけ安くしているつもりです。メニュー表を見て「高いな」と感じる商品があれば教えてください(笑)。

クラウドの勤怠システムでデータ連携が容易に

――税理士法人TMCとの関与のいきさつを教えてください。

倉持 経営していた四谷のパブに藤原先生がよく来られていて、そこで知り合ったのがきっかけです。以来25年間、法人化や新たな出店計画に際してなど、さまざまなサポートをしていただいています。

藤原仁義顧問税理士 TMC浜松事務所の所長(斎藤昌弘税理士)とよく社長のお店に飲みに行っていました。居酒屋店というと3店ぐらい出店すると行き詰まるケースが多いのですが、これまで極端に規模の大きなお店を出店してこなかったことがよかったのではと思っています。

――毎月の給与処理に『PX2(戦略給与情報システム)』を利用されているとお聞きしています。

倉持 1993年に「ととや魚丸」を大塚にオープンしたころから従業員が一気に増え、毎月の給与計算にかなり時間がかかり負担になっていました。藤原先生から「入力作業が楽になる」と提案をいただき『PX2』を使い始めました。

――使い勝手はいかがですか。

串田 関連会社を含めて3種類の関与先コードに分け、100名ほどの給与計算を行っています。システムが変なエラーを出したりせず安定しているので、いったん社員情報や給与体系等を登録してしまえば、毎月の入力作業自体は非常に楽ですし安心してできます。

――アマノ社のタイムレコーダーを使われているそうですね。

串田 ええ、藤原先生から紹介をしていただきました。以前は店舗ごとに従業員のタイムカードを集計して『PX2』に入力していたのですが、アマノ社の勤怠管理システムを導入してからは、タイムレコーダーで打刻したデータが自動集計されるので、ヒューマンエラーが入り込む余地がなくなりました。なおかつアマノのソフトはクラウドサービスなので、インターネット経由で『PX2』にデータ連携でき便利ですね。

――『PX2』のどのような資料を活用していますか。

倉持 《部課別支給総額分布表》で深夜のシフトにばかり入っている従業員がいないか、あるいは各店舗の人件費をチェックし、極端に突出しているお店があるときは、店長に確認するようにしています。あと《一人別賃金台帳》ですね。社会保険料や所得税の金額が網羅されているので、藤原先生や社労士に提出する資料として使っています。

串田 ふだん最もよく見ているのは《支給控除一覧表》です。5つある給与体系ごとに社員一人ひとりの計算結果が表示されるので、正しく計算ができているかもれなくチェックしています。

倉持 「社員情報データの切り出し」機能も頻繁に使います。官公庁や民間の調査会社から雇用状況に関するアンケート調査を依頼されることがよくあるのですが、内容は従業員数にはじまり、女性のスタッフ数や管理職数など、さまざまな項目におよびます。そのため、該当する項目をCSV形式で切り出し、さらに並び替えといった加工作業を行い統計データを作成しています。リストをもれなく作れるので、健康診断を受ける社員の名簿づくりに利用することもあります。そういった給与計算以外の人事、労務に関わるデータベースとしても、『PX2』はなくてはならないシステムだと感じています。

――毎月の監査ではどんなことを話されていますか。

小園文夫所長代理 財務システムとして『FX3』をご利用いただいていますが、数字面だけでなく経営全般について話し合っています。
 串田さんに直近1カ月間で起こった出来事をあらかじめ報告書にまとめておいていただき、ひと通りうかがったうえで監査に入ります。従業員でけがをされた方がいるといったことから、お客さまとの細かいやり取りまでとても詳しく記していただいているので、財務データの裏付けがはっきりし、経営の見通しがよりクリアになっていると感じています。

倉持 藤原先生も含めて監査のときは営業中の店舗に来ていただいて、食事をとりながら色々な話をするので、1日がかりでご指導をいただくことが多いですね。

――今後の事業計画をお聞かせください。

倉持 お座敷での夜の宴会は、以前に比べてかなり減ってきている印象があります。メニュー面では食事の部分に力を入れ、パスタなどの洋食や新鮮な野菜を使った料理を加えていけたらと思っています。店づくりではいまの“手づくり感”を大切にして、店長ではなく店主とよばれる個人店のようなお店を目指していきたいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社倉持商事
業種 居酒屋店経営
代表者 倉持優
設立 1983(昭和58)年7月
所在地 東京都豊島区南大塚3-44-13 クレスト南大塚ビル301号
TEL 03-3987-6995
売上高 5億9000万円
社員数 約100名
URL http://www.totoya-ichinokura.co.jp/

CONSULTANT´S EYE
TKCとタッグを組み日常業務全般を支援
所長代理 小園文夫
税理士法人TMC(浜松事務所)
静岡県浜松市中区曳馬6-22-10 電話053-473-4647
URL:http://www.tkcnf.com/tmcservice/

 倉持商事様とは当社開業時より、長いお付き合いをさせていただいております。焼き鳥をメーンとした居酒屋から、最近では豊富な創作料理を取りそろえる店舗まで、個性的な店舗展開をされております。

 倉持社長から「川の流れに身を任せる」という言葉を以前聞いたことを今でもよく思い出します。その意味するところは、何か問題が起こったり経営方針に迷いが生じたときは、流れに歯向かうのでなく身を任せて周りの意見を聞き、その時々の決断をするということだと思います。社長はこのようにお客さまや従業員、同業者、取引先等色々な方々の意見を聞き、経営に取り入れておられます。

 監査にあたっては会計事務所としての税務的なものにとどまらず、従業員の不正等が起きないように内部監査のつもりで厳しく実施しております。あわせて業務の効率化や省力化を提案できるよう常に心がけています。

 TKCとの連携による提案としてはパソコンの導入にはじまり、『FX2』、『PX2』、『FX3』さらにはIP電話、店舗節水システム、POSレジ、仕訳連携システム、タイムレコ-ダー等々、業務のあらゆる面において幅広くご活用いただいております。

 現在では財務面では『FX3』と各店舗のPOSレジを連携し、店舗ごとに売り上げや小口の仕入れ・経費等の仕訳をレジで作成し、本部のパソコンで吸い上げて『FX3』へ自動仕訳として読み込んでいます。毎月の巡回監査では、各店舗の部門ごとの実績を正確に把握いただくなど、前向きな経営に取り組まれています。

 給与計算業務ではアマノ社のタイムレコ-ダ-と『PX2』を連携させ、入退社した従業員をインタ-ネット経由で即座に本部で把握し、デ-タで読み込んで計算処理を行われております。

 今後は震災等への対策を考えると、クラウドの時代へと変わっていくと思います。TKCと協力し、倉持商事様のいっそうのご支援ができればと考えております。

掲載:『戦略経営者』2012年7月号