幹線道路をへだて札幌ドームのはす向かいに本社を構える竹内建設。新設住宅着工戸数が年々減少傾向にあるなか、自社ブランドの開発を起爆剤として新築住宅棟数を着実に伸ばしつづけている。「よそがまねできない家を造る」と意気込む竹内俊朗社長(62)と橋本正美常務に事業戦略と利益を生む体質づくりを聞いた。

現場の組織力を武器に指名客を引きつける

竹内建設:竹内社長(中央)

竹内建設:竹内社長(中央)

――住宅建築を手がけられているそうですね。

竹内社長 店舗やアパートも建てていますが、メーンは新築住宅とリフォームです。創業30周年を迎えた4年前から販売を始めた、木造住宅ブランド「ココ・ティーク」が好評をいただいており、昨年完成した55棟のうち7割を占めています。

――ココ・ティークの特徴は?

社長 ココ・ティークとは“心地よさ”と“アンティーク”を組み合わせた造語です。道内でもアメリカ風やカナダ調、フィンランド調の輸入住宅はよく見かけますが、ココ・ティークは長く住むほど愛着が増し、風格の出る南欧調のつくりになっています。具体的には、むくの床材や瓦屋根、しっくい壁など自然素材をふんだんに使っています。欧州の住宅は内装や窓はそのつど取り替えますが、外壁は古くなってもそのままにしていますよね。あれがすごくいいなと……。ココ・ティークの販売を機に、年間棟数は30棟から年々増えてきました。今は札幌市内と近郊を中心に手がけていますが、ゆくゆくはココ・ティークを道内に知れ渡ったブランドにしたいと思っています。

――どのように自社ブランドをアピールしていますか。

社長 価格からコンセプトにいたるまで、自分たちの生活スタイルに合致したこだわりの住まいを求められる方が増えているため、営業担当者にただ売ってくるように指示しても売れる時代ではありません。当社では“商品力”“現場力”“人間力”をスローガンに掲げ、トータルで勝負をしています。まず商品である住宅についてですが、江別市にある自社工場で構造材のプレカット、床や壁のパネルを製作しており、風雨にさらされない環境で施工できるのが強みです。スケルトン(構造体)の耐震性、耐久性が高く、リフォームも容易にでき、何世代にもわたって住んでいただけます。
 住宅の品質を支える社員や職人には、現場の施工風景などの写真を数多く載せたマニュアルを作って教育を行い、業務品質を徹底させています。例えば建築中の住宅の床にはビニールを一面に張り、常に清潔さを保つようにしており、素足で上がれるほどです。これが「札幌でここまで徹底している建設会社はない」とすごいインパクトを与えたようで、昨年には業者さんから紹介をいただいたお客様の比率が最も多くなりました。こと現場の組織力にかけては、札幌のどの工務店にも負けないという自負を持っています。

――“紹介”がメーンの顧客獲得ルートになっていると……。

社長 お客様には施工会社を当社に絞り込んでいただいて、はじめてお住まいの具体的なプランを提案しています。ですから同業他社と価格競争になったりしません。本社2階にあるショールームやモデルハウスにお越しいただき、商談が進んでいくうちに、実は職場の同僚や友人の方が当社のお客様だったと打ち明ける方も多くいらっしゃいます。つまり“来場型集客営業”スタイルといえるかも知れません。なかには「他社を選ばないで竹内建設が来るのを待っている」と2年間、着工を待ってくださっていた登別や白老のお客様もいらっしゃいましたね。また「住宅ローン・資金計画相談会」も無料で随時開催していて、営業担当社員が親身にご相談にのっています。

――一方、リフォーム部門で手がけられている具体的な業務は?

社長 耐震性、省エネ性などを現在の住宅の水準にまで高める、リノベーション事業に特化していて、政府が推進する「北海道R住宅」プロジェクトに加盟しています。「新築2世」というブランドで販売していますが、昨年20棟を建て道内でナンバーワンの実績でした。もともとリフォームのフランチャイズに加盟していたのと、新築同様、35年ローンを活用でき、200万円の補助金が国から出るのが大きな要因だと思います。北海道R住宅は全国に先駆けてのプロジェクトなので、視察ツアーを組み社員全員を引き連れて当社に見学に来る工務店も多く、その時はショールームや施工中の現場にもご案内し、積極的に情報公開をしています。

付番の徹底で粗利意識高める

――『DAIC2』を導入されたいきさつを教えてください。

橋本常務 私が竹内建設に来たのは5年前ですが、その前年から『DAIC2』を使い始めていました。

中川一俊顧問税理士 「工事別の原価管理をしっかりやりたい」という社長のお考えにお応えするべく、関与させていただくと同時にご利用をおすすめしました。運用が軌道に乗るまでは試行錯誤がありましたが、常務が竹内建設様に来られてから一気に活用が進みましたね。

常務 以前、私自身TKCのシステムを利用していたことがあったため、『DAIC2』の仕組みをわりとすんなり理解できました。『DAIC2』を使うまでは、日々の取り引きを手書きで伝票作成する一方で、工事台帳については積算課でつけていたようです。工事台帳と財務が分離していたわけです。

――社内にシステムを定着させるため、何に着手されましたか。

常務 まず工事ごとに工事番号を付けることがひとつと、2つ目に取引業者にも番号の付いていない請求書は支払わないというほど付番を徹底させたことです。

中川 入力いただきたい項目を網羅した入力票を独自に作成し、今まで2、3回は作り直しています。社員さんたちが合言葉のように入力票を“TKC”と呼んでいて、監査でおうかがいしたときに「TKCはちゃんと出したか」という言葉が飛び交っているとうれしくなります。

――『DAIC2』をご利用されて6年目ですが、効果のほどはいかがでしょう?

常務 なにより安心できるのは工事ごとの原価がはっきりわかることです。システム上、新築部門とリフォームを手がけるホームウェル部門、ハウスメーカーの下請け業務部門の合計3部門に分けて管理しており、さらに新築工事、ホームウェルの100万円以上、500万円以上、新築2世といった切り口で工事を抽出した、さまざまなオリジナルの会議用資料を作成しています。そして工事ごとに1件ずつ、予算と差額が出ていればその原因を追究します。ただ全ての資料の原点になっているのは、工事ごとに出力できる《現場別工事台帳》です。

社長 それと毎月の売り上げと利益をしっかり把握できるようになりました。以前は受注状況から期末にはだいたいこのぐらいの数字になるだろうと予想するしかなかったのですが、これは不安ですよね。でも毎年、私の頭の中にある期末予測と結果が当たっていました、不思議と……(笑)。それがデータとして明確に見えるようになったわけです。

常務 駐車場代にしろ高速道路代にしろ、どんな領収書や請求書も原価管理に反映させるため、工事番号を付けています。そのため社員一人ひとりの工事の粗利に対する意識が高まったのも効果といえるかも知れません。昨年は震災があったので「削減できた経費を義援金として送ろう」と呼びかけ、カラーコピーをやめたり、日中は不要な電気を消したり節電営業を心がけ、だいぶ無駄な経費を削減できました。

社長 3年ほど前、税務調査を受けたときに調査官から「北海道の建設会社でここまでしっかり原価管理をしている会社はない」といわれました。これはうれしかったですね。

――今後の事業展開は?

社長 地域においてさまざまな連携をしていくことが大事だと思っています。一昨年の10月に「公共構築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、3000平米以下の公共の建物の木造化が今後促進されていくと見込んでいます。実際に、学校や図書館などの木造化が一挙に進んできており、この動きに刺激されて民間企業でも、木造建築の社屋や店舗を建てる会社が見られるようになりました。
 設計事務所や工務店、地場のゼネコン等とうまく連携していけば、住宅以外の分野も手がけるチャンスが広がってくると思います。そして北海道の木材を活用し植林することで森林が維持され、地域貢献や環境保護にもつながります。国がすすめる政策に連動しながら、独り勝ちではなく連携を図って地域、業界全体を盛り上げていきたいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 竹内建設株式会社
業種 木造建築工事業
代表者 竹内俊朗
設立 1981(昭和56)年10月
所在地 北海道札幌市豊平区月寒東1条18-1-35
TEL 011-851-2430
売上高 約18億円
社員数 34名

CONSULTANT´S EYE
発進大会と『DAIC2』でPDCAサイクルを回す
顧問税理士 中川一俊
中川会計事務所
北海道札幌市豊平区月寒東4条16丁目2-3 電話011-836-8666
URL:http://ns-kaikei.tkcnf.com/pc/

 「私たちは、家づくりを通してお客様と一生涯のおつき合いをさせていただくことを大きな喜びとします」――この企業理念に基づき、社員・業者全員が一丸となってお客様のためにまい進している竹内建設様との出会いは2006(平成18)年でした。かけがえのない財産であるマイホームを設計・施工・増改築まで1社直営で行う責任施工体制を構築されるなか、工事別の管理をさらに的確に実施したいとの竹内社長の思いにお応えするため、『DAIC2』の導入をご提案しました。

 しかし、導入するにあたっての社内打ち合せ、研修および業者への協力依頼などにかなりの時間を費やすことになり、システムを活用するための体制を構築するまでに2年の歳月を要しました。今では工事の規模にかかわらず、すべての工事に工事番号を付け、社員はもとより施工業者にも工事番号による個別管理の意識を持っていただいたことにより、的確な原価管理を行うことが可能になりました。そのデータに基づきさまざまな分析を行い、毎月の社内会議において戦略を練っておられます。

 また、竹内建設様では、毎年4月にその年度の事業方針等について意思統一を図るため、竹内建設グループの全社員および関係業者による「発進大会」を開催されており、平成23年度は「商品力」「現場力」「人間力」をモットーに取り組まれておられます。私が関与させていただいて痛切に感じていることは、PDCAサイクルが完璧に社内に構築されているということです。そして非常にうれしいことは、その一端を『DAIC2』が担わせていただいているということです。竹内建設様のお客様に対する熱い思いは、お客さまだけではなくその周りのすべての人々に感動を与えていくものと確信しております。

掲載:『戦略経営者』2012年1月号