今年(2012年)4月に改正介護保険法が施行されると聞きましたが、その内容について教えてください。(サービス業者)

 昨年(2011年)6月15日に「介護保険法改正案」が可決されました。介護保険制度は制度開始から10年が経過していますが、サービス利用者も施行当初の約3倍に増加し、制度も定着してきました。

 今回の改正では、高齢者の1人暮らしや重度の介護状態になっても住んでいる地域で自立した生活を営めるようにすることを推進しています。そのため、医療と介護の連携強化が実施されることになります。医療、介護、予防、住まい――生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」の構築が実施されます。

 改正の一番の目玉は、24時間対応の訪問介護・看護サービスという新サービスの創設です。これは「定期巡回・臨時対応型訪問介護看護」および「複合型サービス」が従来の地域密着型サービスに追加されるというものです。このサービスによって、単身の高齢者や重度の要介護者などの在宅者に対して、定期巡回型訪問や随時対応ができるようになります。

 具体的には、利用者からの通報により電話応対や訪問などの随時対応を行ったり、訪問介護と訪問看護が密接に連携しながら、短時間の定期巡回型訪問が行われたりします。

 また、医療と介護の連携強化の一つとして、保険者である市町村の判断による介護予防のための生活支援サービスの総合的な実施が可能となります。この新しい制度により、要支援者・介護予防事業対象者向けの介護予防・日常生活支援のためのサービスを総合的に実施できるようになります。

 その内容は、(1)要支援と非該当を行き来するような高齢者に対し、総合的で切れ目のないサービスを提供(2)虚弱・ひきこもりなど介護保険利用に結びつかない高齢者に対し円滑にサービスを導入(3)自立や社会参加意欲の高い高齢者に対し、社会参加や活動の場を提供、など総合的で多様なサービスが実施可能となります。

 なお、介護療養病床については、平成24年3月31日までに、老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護施設等に転換し、制度は廃止される予定になっていましたが、転換が進んでいない状況により、現在存在するものについては6年間転換期限が延長されることになりました。ただし、平成24年度以降の介護療養病床の新設は認められません。

 このほか介護人材の確保とサービスの質の向上についても改正があり、介護福祉士の資格取得方法の見直し(一定の教育課程を経た後に国家試験を受験する形へ)が平成24年度から実施の予定でしたが、施行が3年間延期されます。

 また、介護事業所における労働法規の順守が徹底され、事業所指定の欠格要件および取り消し要件に労働基準法等違反者が追加となります。介護事業を含む社会福祉関係の事業は、全産業と比較して労働基準法の違反の割合が高いことから、労働基準法等に違反して罰金刑を受けている者等について、指定拒否等を行うことに改正されます。

 これらの改正は、一部を除き平成24年4月1日から施行されます。今後は介護職員の給与水準を維持する財源確保のため、大企業の会社員の介護保険料を引き上げ、介護サービスの一部利用者の負担増加について検討が進められるとみられます。

掲載:『戦略経営者』2012年1月号