自社製品の中国展開を検討しています。ブランドのコピーが心配なのですがどういった対策をとればいいでしょうか。(雑貨小売業)

 日本貿易振興機構(ジェトロ)など専門家の力を借りながら、商標の不正利用を防ぐ万全の対策をとることをおすすめします。日本で知名度がある製品の場合、すでに模倣品が出回っている可能性があるからです。とくに世界的な模倣品の一大拠点となっているのが中国で、中でも商標模倣による被害が後を絶ちません。これは特許・実用新案や意匠など、ある程度模倣に技術力を要する知的財産に比べると、容易に模倣または便乗できるからだと考えられます。

 では次に、模倣品によってどんな影響が出るのでしょうか。模倣品は本物よりも極端に安価なことが多いため、自社で製造している本物の製品・ブランドの売り上げが落ちます。偽物は当然品質が劣りますから、劣悪な模倣品を購入した顧客から苦情が来たり、さらには人体に影響を及ぼすような故障・事故が発生し損害賠償請求を受けたりする危険性も生じます。

 また、一度も中国で事業展開をした経験がないにもかかわらず、進出してみたら実は第三者が同じ商標をすでに登録していた――というケース(冒認出願)では、不正な登録行為を抗議したところ逆に法外な値段で商標権の買い取りを要求される、という事例も起きています。せっかく良い製品・サービスを提供しようとしても、このようなことで多大な損害を被ってしまうことになってはやりきれません。この冒認出願がなされていないかについては、中国国家工商行政管理総局商標局がホームページで公開しているデータベースに直接あたってみるのもよいでしょう。

 従って、中国に代表されるような模倣品被害の多発している国はもちろん、海外で事業展開する場合にはまず現地の模倣品の現状を調査するのが賢明です。中国の場合は、先ほどの商標局データベース以外にも、中国国内の著名な商品取引サイトで自社の製品・ブランド名を検索する方法があります。もちろん正規品や正規品が中古品として流通している場合もありますが、10分の1など極めて安い価格のものがあった場合は模倣品と考えられます。さらに現地の調査会社などに依頼して模倣品の現状を調べる手法も一般的で、これは製品分野や調査場所などにもよりますが、1件あたり20万円程度の費用がかかるようです。

 模倣品の存在が明らかになり損害賠償請求などを行う場合は裁判所に提訴する必要がありますが、慣れない他国でこのような手続きをするのは多大な労力と費用がかかるため、工商局や質量技術監督局といった行政機関による摘発を利用するのも一案です。模倣品業者は横のネットワークを持っていますから、権利侵害に対する毅然とした態度をとることで、「あの会社に手を出すとややこしい」という情報を広める効果もある程度期待できます。

先手を打って出願を

 中小企業は大企業に比べマンパワーや資力が不足気味で知的財産保護の対策が後手に回りがちですが、中長期的にグローバルな事業展開を考えているのであれば模倣品対策は避けては通れない問題です。新たな製品を開発したり、キャラクターやブランドを考案したりした場合は、たとえ今のところ海外展開する予定はなくとも中国など模倣品製造が多い国であらかじめ商標出願を検討すべきです。登録までの期間もおおむね1年半前後と以前よりだいぶ早くなってきています。先手を打って早めの予防策を講じておくことが大切でしょう。

掲載:『戦略経営者』2012年1月号