学習塾をはじめたばかりなのですが、入会金をいただいた後に「クーリングオフしたい」との申し出を受けました。応じる必要はありますか。(学習塾経営)
クーリングオフは、通常、訪問販売や電話勧誘販売など、予期しないときに勧誘されて契約してしまった場合の救済措置で、店舗販売や通信販売には適用されません。しかし、「特定継続的役務提供」の場合は、販売方法にかかわらずクーリングオフができます。
特定継続的役務提供については特定商取引法に規定があり、典型的なものとしては、エステティックサロン、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス等があります。理髪やマッサージなど基本的に1回の役務提供で終了し、継続的に役務提供を受ける必要がない役務は該当しません。
なお「学習塾」および「家庭教師」については、小学校または幼稚園に入学するためのいわゆる「お受験」対策は含まれません。「学習塾」では、浪人生のみのコースも対象外になります。
このような役務を、一定期間を超える期間にわたり一定金額を超える対価を受け取り提供するものが規制対象となります。問い合わせのような学習塾の場合、「期間」が2カ月を超え、「対価」については入学金(入会金)・受講料・教材費・施設利用費、関連商品の販売等契約金の総額が5万円を超えていると規制対象になるので注意が必要でしょう。消費者は、事業者と特定継続的役務提供契約を締結した場合、契約書面を受領した日を含めて8日間を経過するまでの期間はクーリングオフができます。
契約書面の確実な交付を
契約書面の交付は事業者が立証しなければなりません。契約書面が交付されなかったり、内容が不備であったりした場合には、上記の期間制限はなく、消費者はいつでもクーリングオフを行うことができるので、法定の要件を満たした契約書面を確実に交付することが必要です。また事業者が消費者に対して、「これは特別な契約なのでクーリングオフできない」等の虚偽の説明をしたり、威迫(脅し)を行ったりした場合には、上記の期間制限はなくなりますが、事業者が消費者に対して、クーリングオフができる旨を記載した書面を改めて交付した場合には、消費者がクーリングオフが行える期間は、その日から8日間となります。
特定継続的役務提供契約をクーリングオフした消費者は、役務の提供を受けるに当たって必要があるとして購入した商品(関連商品)についてもクーリングオフできます(関連商品のみのクーリングオフはできません)。クーリングオフを行使することができる関連商品は一定の商品に限定されていて、具体的には、語学教室、家庭教師および学習塾については書籍(教材を含む)、いわゆるソフト(カセットテープ、CD等)、ファクシミリ機器、テレビ電話が対象商品として指定されています。
ただ関連商品のうち、政令で指定された消耗品(健康食品、化粧品、医薬品以外の石けん、浴用剤)を消費してしまった場合にはクーリングオフはできなくなります。
なお特定継続的役務提供契約は、クーリングオフ期間経過後も、契約期間中であればいつでも、理由のいかんを問わず、中途解約することができます。ただし中途解約の場合は、消費者は事業者に対して、すでに提供された役務の対価分(例えば契約後3カ月で解約した場合には3カ月分の役務の対価)と法令で定める一定額以内の損害賠償を支払う必要があります。事業者側がすでにこの額を超える金額を受け取っている場合には、超過部分を速やかに返還しなければなりません。