節電に協力していますが、万が一の停電時の備えはまだ手つかずです。中小企業でも可能な電力確保のための取り組みを教えてください。(飲食業)

 夏の電力不足は、節電要請や電力使用制限令で乗り切ることができました。しかしいまや、当然のように電気が使える時代は過ぎ去りました。冬の電力需要や原発の稼動停止などで、今後も節電が求められるでしょう。

 しかし店舗や飲食店の照明を暗くしすぎると購買意欲に水を差す可能性があります。明るい店舗は約800ルクスとされていますが、その半分で消費意欲が薄れるといわれているからです。節電だけでは商活動が制約され、電力事情に振り回されると事業継続に大きく影響しますので、中小企業も電力確保策を準備しておく必要があります。

 自分で電力を確保する目的やメリットには「顧客の目をひき有利になりやすい」「事業マインドを高めるための保険」「過度な節電をしなくても隣接店舗などに気兼ねする必要がない」「長期活用によって将来的にコスト削減が期待できる」などがあり、具体的な方法としては以下のようなものが挙げられます。

1.太陽光発電(自立運転モード)
 屋根やベランダなどに設置した太陽光パネルから、自立運転モードで電力を確保します。一度設置すれば長期利用で投資回収できますが、ある程度のスペースが必要です。既に設置済みの場合は固定費が最小で静かといったメリットがある半面、今後設置する場合は初期費用が高額になります。天候で発電量が左右され、スペースの割に発電量が少ないという欠点もあります。費用はベランダ設置の場合20~30万円程度(100~200ワット)、屋根に設置する場合には200万円弱(3~4キロワット)になります。

2.防災用自家発電装置の活用
 キャンプ用のガソリン発電機や自家発電用ディーゼル発電機を屋外に設置します。工場や郊外向きですが、発電効率が高いうえに用途や規模に応じて家庭・事務所から工場まで幅広く対応できます。ただし不安定な燃料価格に加え、メンテナンスの必要性や音がうるさいなどの課題があります。1600ワットのガソリン発電機が20万円程度になります。

3.ポータブル電源
 防災用品ですが、内部電池によって非常用の電力を満たします。費用が安く照明や携帯電話の充電など最低限の需要を満たしますが、長時間持たないため定期的に充電する必要があります。およそ2~3万円で収まります。

4.蓄電池
 コンセントから充電できるリチウムイオンの蓄電池で、電力使用量の多い冷蔵庫などにも使えます。電力を蓄えることができ、音が静かで発電量が大きく(3時間の充電で500リットルの冷蔵庫を5時間冷やせる)、電力需要の多い時間帯にも利用できますが、いまだに価格が高いのが難点です。安くても90万円程度かかります。

5.ハイブリッド車からの電源確保
 最近の乗用車は最初からコンセントがついている場合が多いですが、ハイブリッド車の動力用電源を電気製品に使う方法です。特にミニバンタイプは性能に余裕がありIT機器やヒーターなどを使うことができますが、季節によって充電能力に差が出ることもあります。費用はミニバンタイプの場合で三百数十万円からとなります。
 ここ数年「所有から利用」がトレンドとなり、本業以外に固定費をかけない傾向となっていました。ところが電力事情が一変したことで、業務継続や店舗の魅力を確保するために戦略的な経営資源を自前で確保する必要性が出てきたといえそうです。

掲載:『戦略経営者』2011年9月号