夏場の電力不足が予想されることを踏まえ、今すぐできるオフィスの節電対策を教えてください。(雑貨製造業)
ディグ社は東京都内で印刷業を営む中小企業ですが、6年ほど前から“エコ経営”に取り組んでおり、その成果からご質問にお答えしたいと思います。最初の1年間で徹底したのが「本社ビルの電力削減」でした。(1)室温設定の見直し(2)無駄な照明を減らす(3)エレベーターの使用制限、という3つのアプローチから節電に努めました。この3つは、どの企業でも今すぐ着手できるオフィスの節電対策といえ、なかでも(1)に関しては一定の効果が期待できます。
というのは、特に夏場においてエアコンの占める使用電力の割合は高く、事務業務が中心の建物だと全電力の約40%にもなります。しかし設定温度を1度上げれば、10%前後の電力量(kWh)を削減できるといいます。当社では、冷房時は28度を最低室温、暖房時は21度を最高室温とすることに決め、それを徹底して年間11%の電力使用を抑えました。「夏場に28度の設定温度では少し暑いのでは」と思われるかもしれませんが、サーキュレーター(扇風機)をうまく活用して室内の空気を循環させたり、ブラインドで太陽光の入射をさけるなどの工夫で従来よりもさほど違和感なく仕事ができるはずです。
次に、(2)無駄な照明を減らすという点では、本社ビル各階の配線を見直し、各セクション(部署)単位で蛍光灯をつけたり消したりできるような「ゾーンニング」(ゾーン設定)を行いました。要するに、その部署のメンバーがいなくなるときは必ず照明を消すことを徹底し、無駄な電気の使用を抑えるようにしたわけです。
そして(3)のエレベーターの使用制限については、「45歳以下の社員は階段を使う」ということを推進して年間1万4000回の使用を減らすことに成功しています。
電力使用状況を測定・分析する
東日本大震災による夏場の電力不足が叫ばれるなかで政府は、東京電力・東北電力の管轄内にある企業や家庭に対して、瞬間最大使用電力を昨年よりも15%削減することを求めています。電力使用が発電容量を超えると大規模停電になるため、それを回避するためにも各企業の協力が必要とされています。一度、大規模停電が発生すると、その復旧は容易ではありません。実は1年を通じて最も電力使用が増えるのが、夏の午後1時から4時頃にかけて。この時間帯の使用電力のピークをいかに抑えるかが、重要な鍵を握ります。
各企業がこの夏、節電対策をするうえで、まずはオフィスや工場で最大どのくらいの電力を使用しているかを調べておくとよいと思います。これは、電力会社から送られてくる請求書を見るか、電力会社に問い合わせれば教えてもらえます。たとえば昨年夏の電力使用の最高値が150キロワット(kW)だったとしたら、15%のピークカット(最大使用電力の抑制)を実現するには、150kW×15%=22.5kWの削減を目指すことになります。
ちなみに当社では15%のピークカットを行うための対策として、印刷工場で稼働している印刷機の生産速度を通常よりも落としたり、始業時間を3時間早めることを計画しています。生産速度を落とすことにより、瞬間最大使用電力を抑えるわけです。こうした節電対策は他の製造業者などでも十分に応用可能ですが、まずは工場内にある各電気機器の電力使用状況を測定・分析したうえで、15%の節電目標に見合ったエネルギーコントロール(省エネ最適化)をしていくことをお勧めします。