4月1日から施行される経営事項審査の基準改正についてポイントを教えてください。(土木建築工事業)
経営事項審査(経審)は、公共工事の発注で企業を評価する重要な物差しです。X1=完成工事高、X2=利益および自己資本額、Y=経営状況、Z=技術力、W=社会性の評点項目に分かれており、それぞれさらに細かい評価項目を含んでいます。今回の改正では、経審にかかわる不正をできるだけ排除するとともに、審査項目の一層の充実を図る方向性がはっきりしました。4つのポイントについて説明しましょう。
第1は、技術者に必要な雇用期間を明確化したことです。企業に技術者が在籍していればZ点について評点が上がりますが、その基準はこれまで「雇用期間を特に限定することなく常時雇用されているもの」だけでした。そのため雇用関係の実態がないにもかかわらず申請時だけ技術者を登録し評価を高めようとする「名義貸し」という行為が横行していたのです。このため新たに「審査基準日以前に6ヵ月を超える恒常的雇用関係がある者」という基準を設け、ペーパーカンパニーなどによる不正な高得点の取得を防ぐ意図を鮮明にしました。高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用制度利用者についても、評価の対象とすることにしました。
次は完成工事高(X1点)と元請完成工事高(Z2点)についてですが、これは金額に応じて評点が決まっている「評点テーブル」を上方修正したものです。全国的な建設投資の減少で工事高の平均額は減少傾向にあり、従来の評点テーブルを使用したままだと各事業者のランクが低下してしまいます。評点の平均点を制度設計時の700点に保つため、今回、工事高に応じた評点を底上げすることになりました。
3点目は、民事再生法や会社更生法に基づく法的整理を行った再生企業に対し、ペナルティを課す項目を創設したことです。債権カットなどで地域の下請企業に多大な負担を強いている現状を考慮し、これら再生企業については社会性などを評価するW点で減点する措置を講じることになりました。再生期間中は一律60点の減点で、再生期間終了後も営業年数の評価がゼロ年からのスタートになります。
W点をプラスに評価する項目を追加したのが最後のポイントです。ショベル系掘削機やトラクターショベルなど、自然災害時に地域の復旧に不可欠となる機材を一定程度保有している企業を積極的に評価することを決めました。実質的に保有と同等のリースについても加点の対象となります。除雪作業の担い手が激減していることが問題になっていますが、このようなインセンティブがあれば中小建設業が地域貢献で活躍するチャンスが広がることになります。
このほか、ISO9000シリーズ(品質管理)とISO14000シリーズ(環境管理)の取得状況もW点の評価項目に追加することになりました。両シリーズはこれまで、各都道府県が別途実施する「発注者別評価点」で評価されていましたが、今後は他の評価とともに経審で一元的に評価を行うことができるようになります。受発注者双方で事務作業の負担軽減が期待できるでしょう。
中小建設業を取り巻く経営環境は極めて厳しい状況にあります。一般競争入札の拡大によって生じたダンピング合戦も後を絶たず、業界全体の収益は悪化の一途をたどっています。今回の審査基準の改正による多少の評点の変動は、各企業にとって軽微なものにとどまるというのが実際のところでしょう。