2024年10月号Vol.136

【トレンドビュー】「固定資産税 償却資産(知事・大臣配分資産、大規模償却資産)」申告の電子化

地方税共同機構 システム部開発グループ 柴山拓哉

 令和5年度税制改正において、「償却資産(知事・大臣配分資産)」に係る固定資産税(※1)の申告について、2025年度分以後からeLTAXを通じて電子的に行うことができるようにするとされました。
 これを受けて、地方税共同機構では「PCdesk Next」で知事・大臣配分資産に係る固定資産税の申告ができるよう、システムを構築しています。これと並行して「償却資産(大規模償却資産)」に係る固定資産税(※2)の申告についても、「PCdesk(DL版)」から行えるようにします。
 本稿では、来年1月6日から開始される知事・大臣配分資産および大規模償却資産の電子化の概要と、今後の予定などをご紹介します。

1.「知事・大臣配分資産」申告の電子化

 PCdesk Nextは、電子申告等手続きの拡大へ柔軟に対応できるよう開発されたWeb型の汎用的な申告システムです。23年10月16日から地方たばこ税等の4税目の申告・申請を開始し、24年10月28日からは軽油引取税に係る申告・申請の電子化にも対応します。
 図表に、納税義務者と団体の電子申告に係る手続きの流れを示しました。
 図表のとおり、従来の市町村向けの固定資産税 償却資産に係る申告はPCdesk(DL版)により行われます。一方、知事・大臣配分資産に係る申告の電子化では、PCdesk Nextの申告書等の作成をサポートする「データ作成支援ソフト」機能を活用することになります。
 これは、納税義務者等が正確かつ容易に申告等データを作成できるよう、①項目間の関連チェックが適切に行える、②操作が分かりやい──ことに配慮したExcel形式のツールです。知事・大臣配分資産の全14業種それぞれの様式に合わせたものを提供し、これを活用することで業種に対応した申告書等を容易に作成できます。なお、自社システム等で作成したデータについても、データ作成支援ソフトを通してチェックを行います。
 また、データ作成支援ソフトの利用に当たっては、多くの業種において付属表で繰り返し記載が必要となる項目を事前にリストアップする「申告指示シート」や、資産ごとに明細形式で入力できる「申告詳細シート」を活用することで操作性が向上します。これにより、申告書本表および付属表の様式に合わせた成型が可能となり、複雑な申告書の作成が一段と容易になります。
 さらに、この税制改正では「知事・大臣配分資産に係る配分通知(所有者あて)」(※3)についても、所有者が電子申告を行う際に電子的に通知を受けることを希望した場合、総務省や各地方団体はこれに応じなければならないとされました。そのため、電子的通知の希望の有無を申告できるよう併せて対応しています。

電子申告等手続きの全体像

2.「大規模償却資産」申告の電子化

 大規模償却資産に係る申告は、前述の知事・大臣配分資産とは異なり、従来の市町村向けの固定資産税 償却資産に係る申告と同じ第26号様式に基づきます。そのため開発費用削減の観点から、市町村向けの固定資産税 償却資産に係る申告と同様にPCdesk(DL版)から行います。
 市町村向けの固定資産税 償却資産に係る申告とほぼ同じ手順で申告書を作成でき、また申告書本表および種類別明細書は同一の様式としています。これにより、事業者は従来と同様に申告することができます。また、プレ申告データ(※4)による申告も可能です(資産が所在する地方団体がプレ申告データを送付した場合のみ)。

3.今後の予定と団体の対応

 現在、地方税共同機構では、26年9月に「地方税ポータルシステム(eLTAX)」の更改を予定しています。
 ここでは、納税義務者等の利便性向上を目的としたシステム改修や運用時間の見直し、地方団体間の情報連携業務、国税局・税務署との照会・回答業務の電子化等を予定しています。それらへの対応の中で、「知事・大臣配分資産に係る配分通知(市町村あて)」(※5)についても電子化する方針としています。eLTAXホームページで、システム更改に係る見積参考資料を公開しています。地方団体においては、この資料を参照の上、予算措置など必要な対応をお願いします。

(※1)地方税法第389条第1項等の規定による固定資産税。申告対象の償却資産が2以上の都道府県にまたがる場合は総務省、右記以外で2以上の市町村にまたがる場合は、都道府県に申告することとされている。
(※2)地方税法第349条の4第1項等の規定による固定資産税。一の納税義務者が所有する償却資産で、一の市町村に所在するものの価額の合計額が課税定額(人口規模に応じて規定される金額)を超えるものをいう。大規模償却資産に市町村が課税しうる限度額を定め、その限度額を超える部分については道府県において課税することとされている。
(※3)地方税法第393条第1項等の規定による固定資産税の課税標準となるべき価格等の通知。申告された情報は、総務省または都道府県にて配分作業を行い、所有者に「配分通知」として通知される。
(※4)申告を行う際の参考となるよう、申告先の地方団体から納税者へ送付されるデータ。地方団体で保有する課税情報をもとに、申告データの一部の項目(納税者の名前等)があらかじめ設定されている。
(※5)地方税法第389条第1項等の規定による固定資産税の課税標準となるべき価格等の通知。申告された情報は、配分作業を経て各市町村に「配分通知」として通知される。各市町村は、通知された情報をもとに納税通知書を作成、発送する。

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