2024年10月号Vol.136
【ユーザー事例2】ワンスオンリーから始める、窓口改革
かんたん窓口システム > 東京都清瀬市
経営政策部DX推進課 課長 海老澤 悟 氏 / 係長 豊田永輔 氏 / 主事 傳 結香 氏
- 住所
- 東京都清瀬市中里5丁目842番地
- 電話
- 042-492-5111
- 面積
- 10.23平方キロメートル
- 人口
- 74,952人(2024年6月1日現在)
──2023年11月から、書かない窓口を開始されました。
海老澤 清瀬市では22年6月に『清瀬市DX推進計画』を策定し、行政手続きのオンライン化を推進してきました。この利用が順調に広がる一方、行政手続きにはオンラインで完結できないものもあります。そこで対面が必要な住民異動関連の20手続きを対象に、かんたん窓口システムを活用した書かない窓口「らくらく窓口きよせ」をスタートしました。これにより窓口手続きの〝ワンスオンリー〟(*)を実現し、市民サービスの向上を図るものです。
検討のきっかけは、国の「引越し手続オンラインサービス」でした。住基システムとの連携で業務を効率化できるのではないかと、市民課から提案があったのです。これを受けて、22年度に住民異動の関係課が集まり、ワンスオンリー窓口のシステム導入検討部会を発足。先進自治体の視察も行い、清瀬市ではどう運用するかなど検討を進めていました。そんな折、東京都市長会の23年度実証事業テーマが窓口DXとなり、これに採択されたことで、導入に向けて一気に動き出しました。
職員の5割が、効率化を実感
豊田 らくらく窓口きよせは、各課の窓口が連携する運用となっています。また、住基システムと自動連携させているほか、関連システムについてもRPAツールを活用して入力作業を自動化し、業務の効率化を図っています。
実証事業では、20業務を対象として、主に①申請書の作成から受付・審査の所要時間、②受付後のデータ処理までの所要時間、の二つの観点から業務効率化の効果を検証しました。その結果、一定の業務効率効果は見られたものの、一部では課題が残りました。一例を挙げると、介護手続きでは1件当たりの所要時間が19分減となりました。しかし、市民課では、後続課の手続きにひも付けるために市民への説明や聞き取り、審査を行ったことで、受付時間が増加したのです。これらの課題は今後も継続して改善に取り組みます。
──サービスの利用状況は。
傳 市民課では窓口にタブレット端末を3台設置しています。サービスを開始したばかりだったこともあり、今春の繁忙期は紙の申請書と併用して対応しました。このため、23年11月から今年5月末までの累計で、らくらく窓口きよせの受付件数は、窓口の4,437件のうち2,555件(月平均365件)と約60%になりました。内訳は、転入が1,227件、転出が782件、転居が335件、出生が211件です。
市民の反応は、実証事業の満足度調査では98%と高い評価となりました。
職員に関しては、今年4月に対象手続きの窓口対応に従事する職員にアンケートを行いました。その結果、半数の職員が「窓口の業務効率が向上した」と感じていることが分かりました。理由として申請書の入力・審査などの負担軽減のほか、高齢者に対応する場合「直接、確認しながら入力できる」ことが利点という意見もありました。
なお、アンケートでは改善点も聞いており、これらの意見は今後に生かしていく考えです。
──導入や運用で留意されたことは。
豊田 実証事業では、まず窓口業務のBPRに取り組んだのですが、その検討はワークショップ方式で行いました。業務分析など職員にはかなり負担をかけましたが、この場が業務を見つめ直す機会となり、いろいろな気付きにもつながっているようです。
また組織横断で導入する場合は〈運用の統一〉が必要です。例えば、窓口によって〈職員が入力/市民が入力〉が混在すると市民は混乱します。そこで窓口の対応手順を整理し、それを運用マニュアルにまとめました。
市民・職員の利便性を探求
──今後の計画を教えてください。
海老澤 市民サービス向上の観点では、対象手続きを拡大したいと考えています。特に、介護など申請手続きが煩雑な分野では時間削減効果が期待されることから、他課での利用についても検討を開始しました。
また、前提として職員に「書かない窓口は業務改善につながる」と認知してもらうことが欠かせません。そこで情報共有のための部会を開催し、成功体験の共有にも努めています。
業務効率化の観点では、市民課の受付時間の削減が課題と捉えており、市民が〝待たない〟ためにも早急な改善が必要です。しかし、職員が応対する対面型の場合、タブレット端末の台数を増やすことでは解決できません。
その解決策の一つとして、市民自身が入力する「セルフ方式」の書かない窓口に注目しています。市民が入力した申請情報を、職員が確認し間違いがあれば修正する──ことで、受付時間の削減や職員の負担軽減につながるのではないでしょうか。
市では、これまでも複写式の申請書を活用して〝何度も書かない〟手続きを志向するなど、市民の利便性向上を探求し続けてきました。その手段がアナログからデジタルに変わったということです。将来的には、フロントとバックオフィスの連携がさらに進み、市が保有するデータをもとに申請情報が自動的に入力され、市民は署名だけで手続きが完了できるようになるといいですね。理想は、市民が市役所に行かないで手続きできること。その実現に向け、まずは行政手続きのオンライン化と窓口のデジタル化を着実に進めていきます。