2024年10月号Vol.136

【スマート行政最前線】迫るシステム移行、いまやるべきことは?

自治体システム標準化対応プロジェクト 井上 伸

 いよいよ来年夏から、標準準拠システムへの移行が本格化します。本稿では、システム移行に向けてやるべきこと、留意すべきことを紹介します。

*本内容は、2024年8月30日時点で公表されている情報に基づきます。

1. 本稼働日の決定

 標準準拠システムの本稼働日について、市区町村とシステムベンダーによる調整が進んでいます。
 基幹系システムの移行時期は、当初賦課など繁忙期を避けるため、一般的に7月から翌1月の約半年間に集中します。多くの団体がこの期間で稼働日を調整していると思われますが、複数ベンダーのシステムを利用している場合は、できる限り各システムの稼働日を一致させた方がいいでしょう。
 例えば、システム間でデータ連携している場合、連携元・連携先のシステムで本稼働日がずれると、どちらかが過渡期にしか使わない連携機能を実装しなければデータ連携できません。また、標準化によって文字コードやデータ項目の仕様が変わり、標準化前後のシステム間では適切に連携できないことも考えられます。
 とはいえ、どのベンダーも限られた期間で全てのユーザを移行するため、稼働日を分散して作業の平準化を図っています。移行スケジュールの自由度が低く、日程変更が難しいケースも少なくないでしょう。どうしても稼働日を一致させられない場合は、重要度の低いデータは過渡期の連携を諦める(手入力で対応、連携元の画面や帳票で確認など)ことも選択肢の一つです。
 なお、標準化対象外システムや外部機関とのデータ連携についても調整が必要です。特に標準化対象外システムは、ベンダーが標準化対応を想定していないことも懸念され、漏れなく調整するよう留意しましょう。

2. 稼働日を踏まえたインフラ整備

 現在、多くの団体がガバメントクラウドへの移行に向けて準備を進めていると思います。実態として、どのクラウドソリューションプロバイダー(CSP)を利用するかは、契約するベンダーあるいは運用管理補助者によって決まるケースがほとんどですが、ガバメントクラウド接続回線は団体に選択の余地があります。
 LGWANガバメントクラウド接続サービスを含むガバメントクラウド接続サービスは、提供ベンダーにより回線開通までに必要な準備期間が異なります。加えて、ネットワーク構築には、あらかじめガバメントクラウドのアカウント(GCASアカウント)の取得が必要で、そのための期間も踏まえて計画することが大切です。
 なお、ベンダーによってガバメントクラウド接続が必要となる時期が異なります。例えば、TKCでは3カ月の移行準備期間を設定しており、本稼働日の4カ月前にはガバメントクラウドに接続いただくよう調整しています。移行準備期間として半年から1年を設定している例もあるので、それに合わせて準備する必要があります。

3. 帳票や業務委託の確認・調整

 業務・システムと標準仕様書との差異分析や、分析結果に基づくBPRは、職員が業務多忙、あるいはベンダーから標準準拠システムに関する情報が十分に提供されない──などにより、うまく進んでいない団体もあるようです。何から手を付けていいか分からない場合は、証明書や通知書など住民向けの帳票から確認を進めるといいでしょう。
 まず、現在使っているものが標準仕様書に定義されるどの帳票に対応するのか確認します。対応する帳票がない場合、システムから出力できないことを前提に業務を見直す必要があります。一方、対応する帳票がある場合でも様式は変更になることがほとんどです。項目の過不足もあるでしょう。標準仕様書では、帳票によって様式の一部変更が認められていたり、任意の項目を自由に印字できるエリアが定められていたりするため、実際にシステムから出力される帳票サンプルを入手して確認を進めることが肝要です。
 また、印刷業務をアウトソーシングしている場合、印刷会社との調整も早めに実施しましょう。特に注意が必要なのが、印刷物の後加工、いわゆる封入封かんを委託している場合です。帳票の様式やサイズ、通知書と納付書の組み合わせなどが変わるため、これまで通りに委託できるのか確認が必要です。機械封入に必要なコード類の印刷など、システム側の対応が発生する可能性もあり、ベンダーにも早めに相談することをお勧めします。

4. コンビニ交付のサービス停止も

 証明書のコンビニ交付サービスを実施している場合、証明書の様式変更に伴い実店舗試験などが必要となります。一定期間サービスを停止しなければならないため、住民への周知も検討しましょう。納付書の様式が変更となる場合は、郵便局での様式審査や指定金融機関でのeL–QRの読み取りテスト、コンビニ収納のテストなども想定されます。テストの要否・内容・時期について関係機関との調整が必要です。
 また、証明書などの様式を例規に掲載している場合はその変更も必要です。変更となる帳票を特定し、例規に掲載する帳票イメージを準備しましょう。
 その他にも、文字要件(行政事務標準文字)やアドレスベースレジストリへの対応、今後対応が必要となる法改正案件の整理(標準化前後どちらで何を対応するか)など、やるべきことは多岐にわたります。標準化期限まで残り1年半、時間を有効に使って準備を進めましょう。

図表2 「書かない窓口」を導入済み・検討中の団体割合(人口規模別)

申請から開通までのスケジュール例(LGCS(*1)で4月接続開始の場合)
出典:地方公共団体情報システム機構総合行政ネットワーク全国センター資料

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