事務所経営

税理士の4大業務を同時提供するための「近未来の巡回監査」とは

目次
出席者写真
◎パネリスト
TKC全国会システム委員会 岩崎博信委員長、TKC全国会巡回監査・事務所経営委員会 吉野 太委員長、
株式会社TKC 飯塚真規代表取締役社長
◎コーディネーター
TKC全国会 加藤恵一郎副会長

■とき:令和6年7月19日(金) ■ところ:ヒルトン福岡シーホーク

4大業務の同時提供と巡回監査

4大業務を標準業務と位置づけて業務プロセスの作成と職員教育に注力を

加藤(司会) 本日は「税理士の4大業務を同時提供するための『近未来の巡回監査』とは」をテーマに全国会の岩崎博信システム委員長、吉野太巡回監査・事務所経営委員長、飯塚真規TKC社長を迎えて、①4大業務と巡回監査、②環境変化と巡回監査、③予想される「近未来の巡回監査」、④「近未来の巡回監査」に向けて今から実践すべきこと──の順にご議論いただきます。はじめに4大業務の同時提供と巡回監査の関係について、吉野委員長からご説明ください。

吉野 太TKC全国会巡回監査・事務所経営委員長

吉野 太TKC全国会巡回監査・
事務所経営委員長

吉野 まず税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の全容を説明します(7頁スライド1参照)。4つの業務はそれぞれ独立した業務ではなく、相互に重なっており、その中心には会計帳簿(仕訳)があります。そして、「巡回監査」と「システム」を会計帳簿(仕訳)の信頼性の確保に欠かせない手段として位置づけています。
 では、巡回監査と各業務との関わりを確認します。まず、税理士業務の根幹である「税務業務」です。坂本孝司全国会会長は「税理士業務は法律業務である」ことを強調されています。そして、巡回監査は「事実認定と法律判断業務であり、会計帳簿の証拠力の確保に欠かせない業務」としています。次に「会計業務」における巡回監査が果たす役割です。これは関与先企業に適切な記帳を指導し、中小会計要領などに準拠した決算書の作成を支援することであると言えます。そして、「保証業務」ですが、税理士が行う書面添付について、『TKC会計人の行動基準書』では、添付書面の作成にあたり、巡回監査で確認した取引事実とそれに対する会計処理および税務判断などを記載することを定めています。税務申告書に書面添付が行われれば、間接的にその基となった決算書に一定の信頼性が付与されることになりますので、ここでも巡回監査が保証業務の基盤になっていると言えます。さらに「経営助言業務」は、巡回監査を通して把握した企業実態と財務データを基にした経営者とのコミュニケーションを重ねる中で行えるため、やはり巡回監査は欠かせないものです。
 このように4大業務は巡回監査を軸に展開されますので、巡回監査を会計事務所の標準業務にすることで、4大業務の同時提供が可能になります。

──次に岩崎委員長にお聞きします。「税務業務」と「会計業務」の一部は、ITやFinTechによって置き換え可能であると言われています。これからは「保証業務」と「経営助言業務」が重要になってくると思うのですが、我々はどう捉えればよいでしょうか。

岩崎博信TKC全国会システム委員長

岩崎博信TKC全国会
システム委員長

岩崎 まず、基本的な問題として、所長が事務所経営における「保証業務」と「経営助言業務」の位置づけをどのように考えているのかを確認する必要があります。もし、標準業務ではなく、特別な業務だと位置づけてしまうと、事務所の業務は複雑になります。所長は、対象関与先企業・提供時期・報酬料金・担当職員などを決めることに多くの時間とエネルギーを割かなければなりません。ここは腹を括って「4大業務を標準業務として同時提供する」との方針を決め、それを実現するための業務プロセスの作成と職員教育に力を注ぐべきです。 
 ご存じの通り、国税庁が公表した「申告書の作成に関する計算事項等記載書面の記載要領」で、書面添付に「税理士が行う納税者の帳簿書類の監査の頻度」の記載を求められるに至ったことは、私達が行う月次巡回監査と、保証業務としての書面添付との一体感を強く感じさせるものです。

──次に、4大業務を同時提供するためにTKCシステムが果たしている役割について、飯塚社長にお聞きします。

飯塚 坂本会長の4大業務の図にある通り「TKCシステム」は「仕訳という単一のソース・データから、多角的に高度な経営計算資料を自由自在に取り出し得るトータルシステム」であることが重要だと考えています。つまり、仕訳を中心に、科目配置基準にもとづいて4大業務の履行に必要なデータをシームレスに連携するということです。
 クラウド化が進めば進むほど、これらのデータはクラウド上でリアルタイムにつながるようになります。制度対応などでますます増加する職員さんの業務負荷を軽減し、会計業務の自動化や継続MASとFXクラウドのデータ連携を強化し、会計帳簿をより充実したものにする機能を提供できないかと考えています。

環境変化と巡回監査

人手不足や多様化する働き方へはFXクラウドでの業務効率化で対応

──次は、我々の「あるべき姿」の実現に影響する社会環境の変化と巡回監査の関係についてお話しいただきます。まず「あるべき姿」の実現の妨げとなる問題について、吉野委員長にお聞きします。

吉野 一番は人手不足に直結する少子高齢化の問題です。厚生労働省が公表しているデータによると、2023年の日本の出生数は過去最少の約76万人で、8年連続で減少しています。私の事務所がある神奈川県伊勢原市(人口約10万人)でも出生数は2023年までの20年間で半減しており、約550人でした。今でも求人に苦労していますが、今後はさらに少ない人数を企業間で取り合う一層厳しい状況になることを実感しています。
 また、現在事務所で働く職員へも育児や介護との両立といった多様化する働き方への対応が必要です。今はフルタイムで働く前提で、午前と午後に1件ずつ関与先企業を訪問して巡回監査するスケジュールを組んでいますが、その前提が崩れつつあります。これまでの品質を維持したまま巡回監査をどのように行っていくかが事務所の大きな課題となっています。
 課題解決のカギはDX(デジタルトランスフォーメーション)です。FXクラウドを導入することで会計事務所の業務プロセスを見直し、効率化が図れます。FXクラウドは関与先企業のデータを事務所と常に共有しているので、事務所のOMSからデータを事前確認しておき、現場でチェックすることで時間を短縮できます。また、複数担当者制にして、事務所で事前確認する職員と、現場に行って社長とじっくりと話をする職員とに役割分担するなど、クラウド化の特長を生かして、働き方を工夫しながら品質を下げずに業務ができると思っています。

岩崎 関与先企業の人手不足への対応も待ったなしの状態です。経理担当者が退職された場合に後任がなかなか見つからないという問題が全国的に起きているのではないでしょうか。この状況を放置すると、せっかく築いた自計化の体制から記帳代行へ後戻りする事態を招き、自計化を前提とするTKCのビジネスモデルの崩壊につながります。

──どんな打ち手がありますか。

岩崎 これからは「経理担当者の後任者はいない」との前提で巡回監査に臨む必要があります。経理担当者がいるうちに、仕訳計上や支払業務、資金繰り表の作成などの業務を極力自動化して、もし、経理の専任者がいなくなったとしても、日常業務が滞らない状態を作り上げておく必要があります。
 TKCはFXクラウドの証憑保存機能やペポルインボイスへの対応など、次々と業務の合理化につながる機能を提供してくれています。我々は、TKCシステムに搭載されている機能の一つ一つをしっかりと理解して活用すれば、まだまだ関与先企業の経理業務を効率化でき、会計事務所は経営助言などの本来やるべき業務に集中できるという認識を持つことが大事です。

巡回監査機能のレベルアップで、圧倒的な生産性の向上を実現したい

──DXの積極的な推進による効率化の話がありましたが、飯塚社長、人工知能(AI)を巡回監査機能の中に入れ込む余地はあるのでしょうか。

飯塚真規TKC代表取締役社長

飯塚真規TKC代表取締役社長

飯塚 TKCでは専門部署で日々進化するAIを研究していますが、現時点では、AIを巡回監査機能に搭載するのは時期尚早だと思っています。というのも「AIは間違える」からです。それも、「人が信じて疑わないくらい綺麗に間違える」のです。きちんと裏付けを取らずに、出された結果をそのまま巡回監査や「税務業務」「会計業務」などに利用することはとても危険です。
 一方で、「TKC税研データベース」が持つ膨大な税務事例から、注意が必要な点をかんたんに検索するような使い方はできると思っています。これはほんの一例ですが、AIの得意な分野を活かして4大業務を支援できないかということは常に研究しています。
 巡回監査機能の今後の進化という観点で申し上げると、今から申し上げる機能は、すでに一部実現しているものですが、取引先に着目して、一定の範囲を超える取引金額や、過去に発生したことのない勘定科目と課税区分の組み合わせの仕訳があった場合に注意を促す機能。あるいは、仕訳辞書や銀行信販データ受信機能に登録している仕訳ルールから「取引先」「勘定科目」「課税区分」が変更された仕訳を抽出して確認を促すような機能を搭載しようと考えています。
 また、過去に入力された膨大な仕訳からシステムが最適な仕訳ルールを考えて、ユーザに提案するレコメンデーション機能なども考えられます。このような入力担当者や巡回監査担当者をアシストする機能を、システム委員会で先生方にご指導いただきながら提供していきたいと考えています。

──今のお話はキャット(CAAT:Computer Assisted Audit Techniques)の応用でしょうか。

飯塚 キャットとは少し異なります。キャットは公認会計士監査で利用する前提の統計的なアプローチです。今考えているのは、あくまでも全部監査を前提とした税理士用のキャットというイメージです。

予想される「近未来の巡回監査」

税理士業務は法律業務である現地で行う巡回監査は変えてはならない

コーディネーター/加藤恵一郎TKC全国会副会長

コーディネーター/
加藤恵一郎TKC全国会副会長

──将来の環境変化を念頭に置き4大業務の同時提供の実現に向けた「近未来の巡回監査」を考える上で、「法律業務である巡回監査」との考え方があります。吉野委員長からその意義をお話しいただけますか。

吉野 巡回監査は、飯塚毅博士が米国の「フィールド・オーディット」の概念からヒントを得た造語です。この言葉には、現場に行き、経営者や経理担当者と顔を合わせて、実物を確認することへの思いが込められているのではないかと思います。
 『TKC会計人の行動基準書』では、巡回監査の意義を「関与先を毎月及び期末決算時に巡回し、会計資料並びに会計記録の適法性、正確性及び適時性を確保するために、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導することである。」と定めています。坂本会長は「適法性」の確保、とりわけ税法への適法性は租税法律主義を貫徹するもので、税理士業務が法律業務である所以であり、巡回監査が、公認会計士が行う会計監査と一線を画すものであると述べられています。
 適法性を確認するための事実認定は現地に行かずして実施できないため、巡回監査における現場主義・証拠主義はこれまでどおり、DXがどんなに発展しても変わりません。
 ただし、DXをうまく活用し、例えば、FXクラウドで巡回監査前に「事前確認業務」として、関与先企業の会計資料などの数字の誤差や消費税の課税区分などのチェックはできます。しかし、クラウド上に保存した領収書などの電子データを現地に行かずにチェックすることだけでよしとする考え方は間違いです。それでは事実認定したことにはならず、あくまで「事前確認業務」であり、これは巡回監査の範疇には入りません。クラウド化のメリットを上手く活用し、全部監査を考えていくのが、我々の腕の見せ所です。

──飯塚社長にお聞きします。「変えてはいけない基本的な考え方」として、巡回監査を長年支えてきたTKCシステムの開発思想をお聞かせください。

飯塚 税理士の先生方は、税理士法第45条が定める非常に厳しい相当注意義務が課せられています。この税理士法の定めを完璧に履行していただけるようシステムでご支援します。
 TKCは、飯塚毅博士が創業して以来、ITを使って「帳簿の証拠力」を確保することを最重要視してきました。証憑から仕訳、試算表、決算書のトレーサビリティを確保すること。月次決算が完了した後は仕訳の遡及訂正・削除を禁止し、電子帳簿保存法の要件に完全準拠すること。そして、誰が起票したのかを明らかにしておくことも、絶対に変えてはならないことだと思っています。TKCは、これらの点を絶対に守ってまいります。
 一方、ITだけで帳簿の証拠力を確保できるかというとそうではありません。この点は、『TKC会報』2024年7月号での増田英敏専修大学法学部教授と坂本会長との巻頭対談が大変参考になりました。
 増田教授は、伊藤滋夫元東京高裁部総括判事の「証拠となる会計帳簿には証明力に差がある」というご発言を紹介されています。TKCシステムは、あくまでも「帳簿の証拠力を確保」するためのツールですので、このシステムを使って、関与先が記帳し、会員事務所が月次巡回監査することで、「帳簿の証拠力」が確保されます。
 ただ、法制度の複雑化によって、監査しなければならない項目が膨大になってきています。この点を何とかしなければならない状況に来ているのだと思っています。

大量の自動仕訳を全部監査するために仕訳ルールと異常値の設定に関与する

──次に、時代対応のために「変えていくべき巡回監査の手法」について考えていきます。

飯塚 私から先生方に伺いたいことがあります。それは、業務システムとの連携で自動生成された仕訳(自動仕訳)を巡回監査でチェックする必要があるのかということです。もちろん残高は変更不可で、会計の専門家による仕訳ルールが設定済みといった前提は必要でしょうが。

──飯塚社長からの問題提起に関して、「最新技術の活用」と「巡回監査」という観点で岩崎委員長からお話しください。

岩崎 まず、ITがどんなに進化しても、我々が行う巡回監査が全部監査であることは変わりません。問題は、全部監査をどのように実現するのか、という点です。経営に役立つ会計帳簿を作ろうとすると、一つの会計事実をできるだけ細かい粒度で仕訳に起こしていく必要があります。例えば、月末に一括計上していた売上の仕訳を日々取引先別かつ部門別に計上すると、仕訳数は何倍にも増えますが、巡回監査は全部監査が前提ですので、自動生成された仕訳であってもチェックは省略できません。
 この場合の対応には二つのポイントがあると考えています。それは、①「仕訳生成プロセスに積極的に関与すること」、②「異常値の定義を自分で決めること」──です。①「仕訳生成プロセスに積極的に関与すること」とは、例えば業務システムとデータ連携する際に、仕訳計上のルール作りへ我々が能動的に関与することです。運用開始後にルールを変更する際も関与が必要です。②「異常値の定義を自分で決めること」は、システムが自動判定する異常値の指摘だけに頼るのではなく、異常値の範囲を自ら設定することです。何が異常値かは、関与先によって異なるからです。
 この2点が、膨大に増えた仕訳をどう全部監査するのかという問題への解決のヒントになると考えます。

全部監査の効率的実施体制の構築が税理士にとっての唯一無二の成功条件

──吉野委員長からも「法律業務を前提としたIT活用による全部監査の効率化」の観点からご説明ください。

吉野 先ほど巡回監査の意義を確認しましたが、会計資料並びに会計記録の適法性、正確性及び適時性を確保するという目的は、DXの時代も変わりません。 ただし、全部監査は全ての取引を対象とすることは当然ですが、取引の重要性を鑑みて、業種・業態、企業規模、経営者や経理担当者の人柄、内部統制のレベルなどを推し量りながら、会計事実の確からしさを確証することに必要な監査手続きを実施することが重要です。飯塚毅博士は、全部監査(試査ではなく)の効率的実施体制の構築が税理士にとっての唯一無二の成功条件だと言われましたが、全部監査の効率化はこれまでも大きな課題でした。
 しかし、今はITの活用で、大量のデータから異常値を発見したり、並び替えや比較したりする分析的手法が容易に利用できます。また、証憑保存機能を使えば、証憑に紐づいた正確な仕訳の計上ができます。
 そして、FXクラウドシリーズに搭載している巡回監査機能は、税理士が「真正の事実」に基づく業務遂行を実現するために、TKC会員の先生方の英知を集めた機能ですので、これらをフル活用することで、全部監査の問題は解決できるものと思っています。

今から実践すべきこと

変動PLから分かることを素早く伝える「月次決算速報サービス」を提供

──「近未来の巡回監査」に向けて我々が今から実践すべきことを考えていきます。飯塚社長にお聞きします。会計事務所の生産性が向上し、付加価値が高まる、さらに関与先企業が手放せないシステムとするために、我々は何をすべきでしょうか。

飯塚 外部環境の変化に対して、とにかく圧倒的な業務の効率化を図ることだと思います。そのために、クラウド化は絶対に必要です。TKCはFXクラウドを推進するために、移行を妨げていると思われる三つの要因の解消に向けて動き出しています。
 一つ目は、データ閲覧期間の3年間から10年間への延長。二つ目は、従来版を利用されている方が違和感なくFXクラウドを操作できるようなトップメニューの開発。三つ目は、ホスト帳表といった納品物がなくなってしまうことに対して、新たに「月次決算速報サービス」を提供することです。
 この「月次決算速報サービス」のイメージはスライド1をご欄ください。月次巡回監査、つまり月次決算が完了するとただちにこのメールを経営者に送ることができるようになります。特長は左下②「売上高の内訳と変動損益計算書から分かること」の①から⑤のコメントです。変動損益計算書から読み取れる情報を文字でお伝えし、経営者に自社の状況を素早く読み取っていただけるようにしています。また、グラフの表現をより充実させて関与先企業が手放せない仕組みを提供できないかと考えています。
 また、今後は巡回監査機能に、先ほど申し上げた税理士向けのキャット機能を盛り込むことで、全部監査を省力化できるようにしていきたいと考えています。

クラウド化の意義をしっかり認識し近未来の巡回監査にチャレンジを

──続いて、会計事務所の経営革新に向けたTKCシステムの徹底活用について、岩崎委員長からお話しください。

岩崎 会計事務所の経営革新に向けて、TKCシステムを推進していくためには二つのポイントがあります。
 一つ目は、クラウド化の意義の共有です。よく、クラウド化のメリットとデメリットについて議論されますが、その議論の前にクラウド化の「意義」をしっかりと認識する必要があります。その意義とは、会計帳簿を関与先企業と常時共有できることです。会計帳簿を常時共有しているというのは、お互いの関係性を深めていく上で強烈なインパクトを持ちます。この意義をみんなで共有できれば、もっとクラウド化が進むのではないかと思っています。
 二つ目は、「デジタル化の推進にはアナログ力の鍛錬が必要である」という点です。例えば、経営者や経理担当者から一番困っていることを聞き出す力や、デジタル化が進まない関与先企業があれば社内の雰囲気から事情を察知する力、現状を変えることに消極的な経理担当者を味方につける力などは全てアナログ力です。デジタル化のご支援には、このようなアナログ力の鍛錬が欠かせないと思います。換言すれば、思いやりの気持ちを事務所の中で育んでいく必要があると思います。

月次決算速報サービス

──最後にTKC会員に向けてメッセージをお願します。

吉野 変化の激しい時代の中で挑戦することがTKC会計人の生きがい、やりがいだと思います。我々TKC会計人は、飯塚毅博士から税理士としての生き方を考えさせられ、教えを実践してきました。飯塚毅博士の言葉は、約50年前の言葉ですが、会計事務所が抱える人材不足などの悩みは今も変わりません。その言葉を時代に合わせて読み替えることが、税理士あるいはTKC会計人としてどう生きていくかのヒントになり、課題解決へつながるものと思います。
 巡回監査・事務所経営委員会の今年度のテーマは「監魂電才」です。この言葉は、幕末から明治時代に使われた「和魂洋才」の言葉をヒントにした造語です。巡回監査の意義を忘れず、DXをフル活用した巡回監査の徹底実践できるよう支援します。一緒に頑張りましょう。

岩崎 全国会には、4大業務の同時提供という明確な方向性と、それを支える強力なTKCシステムがあります。あとは会員先生がシステムをきちんと勉強して、関与先企業に思いやりを持って丁寧に説明できれば、我々には、クールなシステムと温かい人間関係とで関与先企業とつながった、明るい未来が待っていることを確信しています。

飯塚 TKCが創業以来貫いてきた帳簿の証拠力を確保するためのシステム開発に加え、会員先生方の改善要望を踏まえて、しっかりと使い込んでいただけるインターフェイスやサービスをスピーディーに提供したいと考えています。どうぞご期待ください。

──厳しい社会環境の中でも、理想の事務所を築く方法はいくらでもあります。所長先生が確固たる実践意志を持って、事務所を変革していく気持ちがあればTKCシステムのフル活用でそれが実現できます。「近未来の巡回監査」を検討する「会計事務所の経営革新」検討プロジェクトの最終報告は来年に発表されます。ぜひご注目いただきたいと思います。

(構成/TKC出版 石原 学)

(会報『TKC』令和6年9月号より転載)