事務所経営

難易度が高くても楽しいコンサル業務乗り越えた先には事務所の成長がある

目次

 上場企業にASP1000Rを導入して10年以上、「親身な相談相手」として伴走支援を行った結果、確固たる信頼関係を構築。このたび親会社と月次顧問契約を締結した税理士法人パートナーズの村瀬潔会員(中部会会長)、武知卓氏、村瀬由樹氏にお話を伺いました。

村瀬由樹氏 村瀬潔会員 武知卓氏

左から 村瀬 由樹氏 村瀬 潔会員 武知 卓氏

「入力ゼロへの挑戦」を目標に事務所一丸で自計化推進

──税理士法人パートナーズ様は、村瀬会長の叔父様の個人事務所がルーツだとお聞きしましたが、創業が昭和47年とは歴史がありますね。村瀬先生の経営理念や事務所方針など教えてください。

村瀬 潔会員

村瀬 潔会員

村瀬 経営理念は、TKCの事務所ですから当然、自利利他の精神のもと、「租税正義の実現」を掲げています。そのための第一歩がTKCシステムの徹底活用だと思っているので、FX4クラウド、MISなど私から号令をかけて、事務所一丸となって推進します。現在も自計化の推進は「自動化──入力ゼロへの挑戦」を目標に頑張っていますが、うちの事務所の強みは、時代の最先端をいくことを目指していることかもしれません。今日、同席している武知も、うちの事務所に来て10年になりますが、いつも号令がかかると、サークルや部活動の雰囲気で、「やるぞ」と気合をいれて頑張ってくれます(笑)。

──武知さんは、どのような経緯で入社されたのですか。

武知 私はもともと静岡、名古屋のTKC会員の会計事務所で数年お世話になった後、介護業界で6年ほど働いていました。その施設では会計事務所勤務時代にお世話になった先輩に顧問してもらっていたのですが、その先輩が税理士法人パートナーズに合流する際、声をかけてもらいました。

──一般企業も経験されたことで、お客様目線での支援ができるのかもしれませんね。中堅・大企業へのコンサル業務は、武知さんがメインで担当されているのですか。

武知 村瀬(由樹)さんが事務所に入ってからは2名で担当しています。

──村瀬さんはいつ頃、入社されたのですか。

村瀬由樹氏

村瀬由樹氏

村瀬(由) 1年半前です。前職は全然違う業界の営業を5年やっていて充実はしていましたが、全国転勤もある会社だったので、ちょうど30歳の時、子供も生まれたタイミングで転職を考えました。お正月に実家に帰ったとき、簿記論の教科書を手に取って、勉強しだしたら面白くて。最初は「借方・貸方」もわからなかったですが、今は3科目受かったところです。

──全く違う業界からの転職なのに、早いですね。

村瀬(由) これまで大企業相手の営業をしていたので、逆に中小企業の経営者と色々な話ができるのが新鮮です。中小企業への支援と大企業への支援の違いを意識しすぎず、経験を積んでいければいいと思っています。

税効果とグループ通算をほぼ一緒のタイミングで導入

──それでは、中堅・大企業支援に関して、お話をお聞きします。税理士法人パートナーズ様には複数社、システム・コンサルタントとしてサポートいただいています。A社では税効果会計システム(eTaxEffect)やグループ通算申告システム(e-TAXグループ通算)などを導入されていますが、導入時の感想を教えていただけますか。

武知 卓氏

武知 卓氏

武知 A社のグループ通算申告は、連結納税制度からの移行でしたが、うちの事務所では会員利用型のeConsoliTaxを利用しているお客様もいましたので、その知識を活かせて良かったです。導入時の前年度の再現処理では、色々な経理処理の仕方があるのだなと勉強になりました。別表の調理については、上場企業なので調整項目が多く、正直、しんどかったですが、差額分析の検証結果が合致した時は本当に嬉しかったです(笑)。
 一方、eTaxEffectについては、システムも初めてだった上、導入のスケジュールがタイトで、eTaxEffectとe-TAXグループ通算の導入がほぼ一緒のタイミング。システムの仕様を理解するだけでも大変なのに、期限内に検証して、先方に検証結果を説明しないといけない。さらにコロナ禍でA社の導入はWebを通じてだったので、子会社に説明する際も先方の反応がわからない。「一方的に話していて大丈夫?」と心が折れそうでした(笑)。
 でもこうやって、閾値を超えること自体が、自分を成長させてくれるのですよね。先方からもたくさん質問が来るので、回答案については、他社事例を知っているTKC社員にも事前に見てもらうなど、ご支援いただきました。

──先方からの問合せはメールですか。

武知 メールです。そこが中小企業支援との違いの一つだと思いますが、先方の担当者は、上席に説明する都合、電話ではなく、根拠条文なども添付した文章としての回答を求めます。回答内容はもちろん自分で考えるのですけど、私は回答フォーマットや文章の添削は、ChatGPT(文章生成AI)も活用しています。

──さすが、税理士法人として時代の先端を行かれていますね。

村瀬 うちはRPA(Robotic Process Automation)なども活用して、業務の効率化をはかっています。新しいことを積極的に取り入れて、人材不足などの課題にもしっかりと対応したいと思います。

親会社と月次顧問契約を締結 消費税や試算表の課題を解消

──続いて、今回、直接契約を締結されたB社について、お聞きします。締結にはどのようなきっかけがあったのですか。

村瀬 B社のASP1000R導入は10年以上前なので、長いお付き合いです。経理担当の方々は、税制改正の内容などもよく勉強されていて理解も早いです。ただ、経理が財務諸表全部を作っているわけではなく、複数部門が関係しているので、部門間調整が常に必要です。会計と税務の担当も分かれていたのですが、昨年、経理部長の下で税務を総括していたメイン担当のCさんが退職されることになり、Cさんから武知に連絡をいただいたのです。

武知 最初、相談された際は、正直、業務負荷も重いですし、上場企業は何かあったときの影響が大きいので、受けるべきか悩みました。でも村瀬先生はポジティブ、村瀬さんは自然体で物事を受けとめるニュートラルなスタンス。二人を見ていたら、まずはやってみようと一歩ふみだす勇気も大事だと考え直しました(笑)。Cさんはご自身の退職のタイミングで、それまで顧問されていた税理士の先生を解除されていました。「税理士法人パートナーズにお願いしたらよいと思う」と社内での根回しも配慮してくださっていたこともあり、直接契約のやりとりもスムーズに進みました。

村瀬 あと今回、地方の子会社2社も支援を依頼されたので、TKC全国会ネットワークを活かして、地元の中大研会員の先生に顧問いただきました。

──税理士法人パートナーズ様とCさんの信頼関係から、ほかの地域の中大研会員の業務拡大にまでつながり、ありがたい限りです。B社とは税務相談というだけでなく、月次巡回訪問をベースにサービスを提供されているそうですね。

村瀬 月次で消費税や試算表の内容を確認しておかないと、決算申告のときに大変な思いをしてしまいます(笑)。

武知 データ量も多いので、全部監査まではいかなくても、月次で課題解消しておけば、安心です。今回、初めての決算申告でしたが、次年度以降は通年で把握できるので、さらに効率化を提案できると思います。

中堅・大企業での関与先拡大成功要因

ペポルインボイスへの対応=事業者のデジタル化への対応

──村瀬先生には、昨年7月より中堅・大企業支援研究会(中大研)の担当副会長を担っていただいています。中大研として取り組んでいきたいことなど、お聞かせください。

村瀬 すでに何度か幹事会にも参加していますが、中堅・大企業支援の経験豊富な先生方が真剣に研修企画や地域会活動を検討されているのがわかります。システム・コンサルティング業務は、多くの若手会員にも強みを活かしてチャレンジしてほしいと思っているので、ニューメンバーズ・サービス委員会と連携しながら、中大研会員増強活動を行いたいと考えています。幹事会など執行部にリクエストするとしたら、そういった初学者向けの研修コンテンツも増やしてほしいということ。誰もが中堅・大企業支援の経験があるわけではないので、少しハードルを下げて、受講者のモチベーションアップに繋げられればと思います。
 それから、中大研の会員は、先駆的に新しいことに取り組む実践力がとても大切。例えば、事務所から関与先企業への請求をペポルインボイスにする、そして関与先から取引先への請求に発展させていくことは、システムのクラウド化、証憑保存機能と相まって、国税庁が税務行政のDX化の中で掲げる「事業者のデジタル化」にも対応することだと考えています。もちろんうちの事務所でも、大号令をかけて取り組んでいます。

──関与先の反応はいかがですか。

村瀬 やる、やらないの選択肢を設けずに、「うちの請求書はペポルインボイスで送るので、届くように登録しておくね」というスタンスで対応しています。

武知 現段階ではメリットが伝わりにくいので、「ペポルの啓蒙活動をしています。日本のDX化のために協力してください」と言うと、社会貢献という意識になり納得感があるようです。それに関与先によっては、大企業との取引もあるので、相手から「ペポルで出そうと思うのだけど」と声がかかったとき、「当社は受けられます」と言えるようになりますと補足します。当然のように既に対応済みというのが、かっこいいですよね。

──貴重なお話をありがとうございました。最後にこれから中堅・大企業への支援業務に取り組みたいと思っている先生方へのメッセージをお願いします。

武知 私は、中堅・大企業のコンサル業務に携われたことについて、今後、税理士業界で働いていく上で本当に貴重な経験をさせてもらったと思っています。TKCのシステム導入・運用支援を柱に、そこから派生していく業務が無限にあって、お客様に伴走しながら課題解消に向けて寄り添う。半年ごとの改訂案内のためにユーザに該当する制度改正事項やトピックスを準備するのですが、その知識は、ほかのお客様にも展開できます。助言業務の幅が広がるし、自分の自信にもつながります。

村瀬(由) 私はコンサル業務に加わらせてもらって、自分自身の成長を感じています。日々、武知さんから色々教わっていますが、そのスキルが自分も目指すべきスタンダードになっています。目指すべきゴールを自然と高く設定できて、若手社員としても成長できる環境が嬉しいです。

村瀬 これから取り組みたいと思われる先生方に言いたいことは、「楽しいし、面白いから、まずは臆せずにやってみようよ」ということです。新しいことにチャレンジするのですから、難易度が高くても楽しいはず。乗り越えた先には、さらにブラッシュアップした事務所になっていると信じています。

取材日:令和6年6月4日(火)
(インタビュー・構成/中堅・大企業支援研究会事務局 今村こすみ)

事務所概要
事務所名 税理士法人パートナーズ
所在地 ・(大高事務所)名古屋市緑区南大高3丁目102番地
・(日進事務所)愛知県日進市香久山4丁目801番地12
設立 平成20年10月(昭和47年に創業した叔父の事務所を平成19年に承継した際、TKC入会)
代表者 村瀬潔(平成18年2月税理士登録)
職員数 大高事務所10名 日進事務所1名

(会報『TKC』令和6年8月号より転載)