寄稿
今こそ、能動的な中小企業支援を
コロナ禍の続く中、全力を挙げて中小企業を支援しておられるTKC会員、そして職員の皆さまに、心より敬意を表します。
前進の時は来た。今こそ能動的な運動が求められている
TKC全国会会長 坂本孝司
この3月から6月までを振り返ると、「今後日本はどうなってしまうのだろう」「コロナ禍はいつ収束するのか」という不安感や不透明感、あるいは新型ウイルスへの恐怖感が社会全体を覆っていたといえましょう。感染拡大防止および医療体制確保の観点から、3密の回避や接触制限・移動制限等の自粛が求められ、私たちはこれまでに経験したことのない日常生活を送ることとなりました。社会や人々のマインドの変化はめまぐるしいものがあり、その中でなかなか積極的な手立てを講じることができず、受け身でもどかしい思いや焦りを抱えていた方も多かったことでしょう。
ただ7月以降、私たちはまた新たな環境の変化に直面しています。端的にいえば、経済の危機です。新聞報道によれば、2020年4月~6月期のアメリカにおける実質GDPは、前期比年率32.9%減。ユーロ圏においては同40.3%減という非常に大きな減少幅を記録したことが発表されたのはご承知の通りです。
日本においても、本年4月~6月期のGDP速報値が発表されました。残念ながら、年率換算で「27.8%減」という戦後最悪の数字となりました。これはリーマン・ショック(2008年9月)後の2009年1月~3月期の「年率17.8%減」を大幅に超えており、衝撃的な数字といえましょう。実体経済への影響は必至で、帝国データバンクの2020年7月報では、倒産件数が2カ月連続で前年同月比を上回っているとのデータも示されています。
上記の数字が示す通り、いまや経済再生は一分一秒を争う喫緊の課題です。私たち職業会計人は、いつまでも「座して待つ」様子見の態度を示していてはなりません。私は今、座してコロナ禍の収束を待つよりも、従前にも増した積極的な運動、すなわち「能動的な中小企業支援」に向けた運動を展開すべきである──との思いを強くしています。
もちろん、これまでと同様、感染拡大防止に最大限の努力と配慮を払う必要があることは言うまでもありません。とりわけ我々TKC会計人は、『TKC会計人の行動基準書』の「2-8 健康体の維持」に基づいて、自分自身はもちろん、家族や職員、そして関与先の健康にも最大の関心を払う責務があります。「健康体の維持」を十分に意識しながら、感染拡大防止と経済活動の両立を目指していく。そのための能動的な中小企業支援が、今、我々職業会計人が社会から求められているミッションです。
「会計で会社を強くする」全国会運動のより着実な実践を
では、「能動的な中小企業支援」とは何か。それは、会計帳簿(仕訳)をベースとした「税理士の4大業務(税務業務・会計業務・保証業務・経営助言業務)」の全面展開にほかなりません。つまり、TKC全国会がこれまで取り組んできた「会計で会社を強くする」運動に専念して、着実に実践してゆくことです。
経済が縮小傾向にある今だからこそ、適時に正確に記帳された会計帳簿に基づく「税理士の4大業務」が、真に社会から必要とされています。なぜなら、正確な会計帳簿の存在こそ、経済の先行きがなかなか見通せない状況にあっても、中小企業経営者が経営の方向性を見定める拠り所となり得るからです。そして、正確な会計帳簿から作成される信頼性の高い決算書・税務申告書があれば、迅速な融資が受けやすくなります。そして正確な会計帳簿があればこそ、経営助言の専門家である我々職業会計人による経営全般にわたったアドバイスも活きてくる──。この論理をもう一度、一人ひとりがあらためて銘記すべきです。
それゆえに、会計帳簿の数字が正確でなければ、「税理士の4大業務」は実践不可能となります。そこで、正確な会計帳簿の作成のために、「会計資料並びに会計記録の適法性、正確性及び適時性を確保するため、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導する」巡回監査が特に重要となりますが(『TKC会計人の行動基準書』3-2-1【巡回監査の意義】)、コロナ禍の今、巡回監査時間の短縮やリモートでの対応等が余儀なくされています。
そういった制約がある中で、「TKC方式の自計化」を推進し、TISCバックアップサービスやリモートディスプレイサービス等のTKCシステムをフル活用して、巡回監査の事前確認や経営者とコミュニケーションを取ることで、「現場に行かなくても確認できること/現場でしか確認できないこと」をすみ分けしながら、効率的かつ時代に対応した巡回監査を実践することもできています。前例のないこの苦境の中、巡回監査の本質をとらまえた実務が継続的に実践できているのは、大変素晴らしいことです。
これは我々TKC会計人が、これまで「TKC方式の自計化」を積極的に推進してきた賜物です。そして本年9月、自計化システムと巡回監査システムとが一体化した「FXクラウドシリーズ」がTKCからリリースされます。コロナ禍の今だからこそ、「会計で会社を強くする」TKC会計人の取り組みが、中小企業の存続・発展の明暗を分けることとなります。「TKC方式の自計化」の重要性をもう一度理解し、より一層推進してまいりましょう。
最も期待されるのは「経営助言の専門家」の役割発揮
冒頭で示した経済状況に鑑み、「税理士の4大業務」のうち、我々が今最も力を注ぐべき業務は、経営助言業務です。どのように営業キャッシュフローを確保して事業を継続し、雇用を維持していくのか──という百社百様の課題にしっかり向き合い、課題解決の処方箋を中小企業経営者と一緒に考え尽くすことが求められています。そして、そうした支援ができるのは、全法人の9割に関与し、日々の取引を綿密に把握している中小企業の真の理解者、我々職業会計人のほかに適任者はいないと考えています。
歴史的に職業会計人は、企業経営者に最も身近な立場で経営の全容をつぶさに把握しながら、経営助言を行う外部専門家として発展してきた経緯があります。また、『TKC会計人の行動基準書』の「3-2-1 【巡回監査の意義】」には、「巡回監査においては、経営方針の健全性の吟味に努めるものとする。」との経営助言条項が示されています。つまり経営助言業務の基本は巡回監査にあるのです。我々TKC会計人の行う巡回監査は、すべての仕訳(取引)に目を通す全部監査(精密監査)です。そして、社長の顔色や社員の表情、会社全体の雰囲気なども含め現場でしか確認できないことを、五感を駆使してしっかり確認します。だからこそ、巡回監査を行う職業会計人は、経営の全容を把握した経営者の最も身近な親身の相談相手となり得るのです。
また、「経営方針の健全性の吟味」とは、会計帳簿の数字に基づき、その会社の方向性を経営者に確認した上で、正しい方向性や新たな可能性を提案することを意味します。もちろん最終的な経営判断は経営者が下しますが、我々職業会計人には、その判断の拠り所や気づきを与える役割があります。特に、現在のような危機的状況下では、中小企業経営者は下を向いたり、視野が狭くなったりしがちです。苦境にあえぐ中小企業が多い状況だからこそ、「経営助言の専門家」として果たすべき役割が従前よりも大きくなっていることをあらためて自覚しましょう。
これまでよりも幅広く奥深い経営アドバイスが求められている
TKC全国会ではその黎明期から、「MAS業務」として中小企業の経営全般を支援してきた経験とノウハウ、そして実績をすでに有しています。その歴史をもう一度思い起こしてください。加えて1999年には、同年に成立した中小企業経営革新支援法に呼応すべく、TKC全国会創業・経営革新支援委員会(現中小企業支援委員会)を立ち上げ、同法に基づく経営革新計画承認企業を大量に輩出するなど、組織的な運動を積極的に展開してきました。このとき我々は、経営助言業務に取り組むためのノウハウやツール類を数多く蓄えることができたのです。
そして、この中小企業経営革新支援法を基本法として、2012年に成立・施行された中小企業経営力強化支援法(現中小企業等経営強化法)に拠り、我々税理士が経営助言業務を行う法的根拠が与えられました。当時、TKC全国政経研究会(政経研)では認定支援機関の制度設計にあたり、中小企業の財務経営力や資金調達力を支援するため、その対象を「財務及び会計等の専門的知識を有する者(既存の中小企業支援者、金融機関、税理士・税理士法人等)」として、税理士以外にも門戸を広げるよう政・官に対して粘り強く訴えたものです。「社会の納得」を第一義としたこうした政経研の提言運動が実を結び、現在では、日本の税理士事務所の約8割が認定支援機関に登録し、活躍する状況を実現できています。
同法制定の目的は、「会計を軸とした税理士と地域金融機関の実質的な連携による中小企業支援の促進」にありましたから、同法の趣旨に則り、これまでTKC全国会は認定支援機関として、「7000プロジェクト(405事業)」「早期経営改善計画策定支援(プレ405事業)」等の中小企業の経営改善支援に積極的に取り組んでまいりました。金融機関の協力を得ながら経営者を励まし、継続MASを活用して実現可能性の高い経営改善計画を策定するとともに、「会計で会社を強くする」支援を強力に推進した結果、徐々にではありますが金融機関からの信頼を勝ち取るまでに至りました。
こうした我々の努力が認められ、認定支援機関による経営改善支援等の事業として平成30年度第2次補正予算で100億円、今回のコロナ禍における緊急経済対策の令和2年度補正予算で80億円という多額の予算措置がなされました。我々認定支援機関に対する、国による大きな期待の表れといえるでしょう。
加えて、コロナ禍が社会・経済・人々の価値観へもたらした影響はあまりにも大きいため、ワクチンが開発され、新型ウイルスの感染が終息しても、「コロナ以前」に戻る──ということは考えにくいと推測しています。今後は企業規模や業種にかかわらず、事業の抜本的な見直しや縮小、あるいは大胆な転換といった、経営改善よりも一歩踏み込んだ経営判断が必要となる事業者も少なくないでしょう。従来の延長線上で考えるのではなく、新たな社会経済環境の変化に対応し、たくましく勝ち残っていく中小企業を支援していく必要があります。今までよりも幅広く奥深い経営助言、つまり経営革新支援が求められている状況にあるといえます。
しかし、これまで確認してきたように、我々は長きにわたるアドバンテージを有しています。臆することはありません。認定支援機関としての存在感を存分に発揮してまいりましょう。
「三つの強制力」で確保されている税務関係書類の透明性・信頼性
税理士が認定支援機関として経営助言業務をあますところなく展開するには、基本である税務業務の万全な実践が前提となることは言うまでもありません。税務業務の本質は、飯塚毅TKC全国会初代会長や松沢智第2代会長もおっしゃったように、「租税正義の実現」です。「租税正義」は、「1円の取りすぎた税金も無く、1円の取り足らざる税金も無からしむべし」(飯塚毅博士)との確固たる理念のもと、税務当局と税理士が、ともに厳格な租税法律主義を貫徹することで実現します。
今回のコロナ禍で、両者による「租税正義の実現」を目指した取り組みが脚光を浴びることとなりました。具体的には、緊急経済対策において、持続化給付金や家賃支援給付金等の申請書類として確定申告書と法人事業概況説明書が必要とされたことです。
これら税務関係書類の政策への活用が実現した背景には、①公法である租税法の罰則②業法である税理士法による懲戒処分等③税務当局による調査──という三つの強制力があると考えています。そもそも公法とは、国家が国民にその遵守を求める法律で、違反者には罰則が規定されています。公法たる税法も然りで、不正に納税額をごまかした場合には、追徴金や重加算税、もっとも厳しい場合には刑事罰が課されることとなっています(法人税法第159条、所得税法第238条等)。また、業法である税理士法においても、税理士が脱税相談等を行った場合や、納税者の不正等に加担した場合には懲戒等の処分(税理士法第44条~第46条)が規定されていますから、税務の専門家による「納税義務の適正な実現」が約束されていることとなります。これらに加え、もしも税務関係書類の信頼性に疑義が生じた場合には、税務当局による調査という二次的な強制力が働きます。これら三つの強制力により、税務関係書類の透明性・信頼性は確保されているのです。
例えば、持続化給付金の申請要件の一つに「売上が前年同月比の50%超下落していること」があります。中には、「数字をごまかして国から給付金をもらおう」と考えた不心得な中小企業経営者も一部いたようです。しかし、実際に売上が下がっているか否かは、税務関係書類を確認すれば一目瞭然です。国の限られた財源を有効に配分するためにも、そして本当に困っている中小企業を優先的に支援するためにも、補助金・給付金等の申請に税務関係書類を活用することは理にかなっています。何より、国民一般の理解、つまり「社会の納得」も広く得られる最善の策なのです。
政経研は常々、「中小企業支援施策への税理士や認定支援機関の活用」を政府に提言してきました。今般の給付金等申請への税務関係書類の活用は、我々の提言内容が一部認められたといえます。もちろん一里塚ではありますが、今後の施策への税理士活用の道を拓く大いに期待できる出来事と受け止めています。今後も政経研は誠実な中小企業経営者を守るため、そして「職業会計人の職域防衛と運命打開」のため、政策提言運動を継続してまいります。
会計大国アメリカでも税務業務における独立性は確立されていない
税務業務と関連して、税務関係書類の信頼性を高める保証業務も、一層重要性を増しています。職業会計人が税務業務・保証業務を行うためには「独立性の堅持」が前提となりますが、比較のために、ここで会計大国アメリカの状況を概観してみましょう。
アメリカでは、1909年の法人消費税(the corporate excise tax)および1913年の連邦所得税(the Federal Income Tax)導入を契機として、税務業務と会計士の独立性についての議論が盛んになっていきました(Barry C. Broden and Stephen E. Loeb, PROFESSIONAL ETHICS OF CPAS IN TAX PRACTICE:AN HISTORICAL PERSPECTIVE, The Accounting Historians Journal, Vol. 10(2), 1983)。そして1917年、のちのアメリカ会計士協会(AIA)会長となるエドワード・E・ゴア(Edward E. Gore)氏は、同年秋のAIA評議委員会(Council)において、「内国歳入庁は、独立性を有する認定された会計士(accredited accountants)が関与した税務申告書の信頼性を尊重すべきではないか」といった提案を行っています。しかしこの時、会計士は「納税者の擁護者(advocates)」であるから、税務申告書の証明業務を行うことは現実的ではない──との意見が大勢を占め、ゴア氏の提言内容は否決されてしまいます。
時代は下り、1977年になって同様の議論が再燃しました。アメリカ公認会計士協会(AICPA)に「会計士の独立性」を議論する研究委員会が組織されたのです。このとき、会計士を監督する側の証券取引委員会(SEC)委員長の経験を持つマニュエル・F・コーエン(Manuel F. Cohen)氏が議論を導きました。「コーエン委員会」と呼ばれる歴史に残るこの委員会は、1978年の最終報告書の中で「税務申告書に監査済財務諸表が添付されている場合には、イギリス内国歳入庁(the Inland Revenue)は、アメリカでは日常的に行われている会計帳簿や会計記録についての検査を省略するのが通例である」と報告しています(Commission on Auditors' Responsibilities, The Commission on Auditors' Responsibilities: Report, Conclusions, and Recommendations, 1978, p99)。
当時のイギリスでは、勅許会計士(Chartered Accountant)がサインした税務申告書は、原則として税務調査がなされないとの制度が確立していました。そのような背景を踏まえ、同委員会は、会計士の社会的地位向上のためにも、会計士の立場は「擁護者」ではなく、独立・公正な第三者的立場を必要とする「仲裁人(Arbitrator)」として、税務申告書の証明業務を行うイギリスの勅許会計士をモデルにすべき旨を提言したのです。しかし、結果として同提言は退けられ、「擁護者」(弁護人)の立場が維持されてしまいました。それ以降、アメリカにおいては税務業務における独立性について議論されることがなくなり、現在に至っています。
日本固有の保証業務「書面添付制度」の意義を再確認しよう
一方で日本と同じく税理士制度を有し、「正規の簿記の諸原則(GoB)」に基づく厳格な法体系を誇るドイツでは、税理士の独立性(精神的独立性)の堅持が重視されています。そして、「べシャイニグング」という税理士等による決算書の作成証明業務が確立していますが、これは財務書類の信頼性を付与するものであって、税務関係書類そのものの信頼性を担保するものではありません。
この点に関して、私は2015年4月、飯塚真玄TKC会長(現名誉会長)の招聘を受けて来日され、TKC全国会システム委員会で講演をしてくださったDATEV理事長のディーター・ケンプ教授(Prof. Dieter Kempf、現ドイツ産業連盟会長)の言葉が忘れられません。ケンプ教授はこのとき、2014年に改正されたドイツコンピュータ会計法(「電子形態での帳簿、記録および証拠書類の正規の作成と保管ならびにデータアクセスに関する諸原則:GoBD」)について詳細にレクチャーしてくださいました。当時、私を含めた参加者は、「正規の簿記の諸原則」を重視したドイツの厳格なコンピュータ会計法に非常に感銘を受けたものですが、その質疑応答の中で、ケンプ教授は次のように発言されたのです(『TKC会報』2015年7月特別号『ドイツの最新「コンピュータ会計法」』27頁)。
私自身としては、各税理士会、連邦税理士会自身が、税理士の関与した会計処理そして作成した文書について、「いかに質が高いのか」ということをきちんと担保するようなしくみを作り上げてきた方がよかったのではないかと思っています。
ケンプ教授は、日本の税理士制度にも精通しておられます。書面添付制度が日本の税理士法に規定されていることをご存じの上で、このような発言をされたのです。「皆さまのドイツに学ぶ姿勢は素晴らしい。けれども日本の税理士はすでに、税務関係書類の信頼性を保証する書面添付制度という、ドイツ税理士にない特権を持っておられるではありませんか」といった、大変心強いエールを送ってくださったものと私は受け止めています。
日本の税理士には、税理士法第1条にいう「独立した公正な立場」に基づき、税理士法第33条の2に規定されている書面添付制度があります。つまり私たちは、AICPAですらなしえなかった税務業務における独立性および公正性を確立し、精緻な法体系を誇るドイツにも存在しない税務関係書類の信頼性を直接的に保証する書面添付制度を有している──ということです。日本の税理士はこの事実を重く受け止め、そして誇りとすべきです。
加えて、昭和55年の税理士法改正で「独立した公正な立場」という文言が第1条に明記された背景には、飯塚毅全国会初代会長による与野党議員への粘り強い提言運動があった事実を忘れてはなりません。このような先人たちの努力に感謝し、「独立した公正な立場」に基づく税務業務・保証業務の意義と重要性をかみしめ、両業務を着実に実践しましょう。だからこそ、認定支援機関として経営助言業務に取り組み、その力を発揮した時に、税理士の社会的評価が一段と高まるのです。認定支援機関として税理士が揺るぎない「社会の納得」を得るためにも、税理士の基本業務に真正面から向き合い、しっかり取り組んでほしいと強く願う次第です。
会計事務所発展の分岐点は「公共の福祉」に貢献できるか否か
最後に、アメリカのジャーナリスト、マイク・ブルースター氏の著書『会計破綻──会計プロフェッションの背信』(友岡賛監訳、税務経理協会、2004年)から、示唆に富む記述をご紹介します。同書は150年に及ぶアメリカ公認会計士業界の歴史を紐解いたものですが、その中には次のような記述があります。
成功を収めたのは、同時代の多くの事務所のなかでも抜きんでて公共心に溢れた(public minded)経営陣の導く事務所だった。戦争、金融パニック、大恐慌などの危機の時代、公共の福祉(Public welfare)にコミットした会計事務所は、重大な仕事を与えられるという報いを得た。
「公共の福祉への貢献」とは、TKC全国会の基本理念「自利利他」にほかなりません。コロナ禍の今だからこそ、公共心にあふれた仕事をしましょう。中小企業の存続・発展支援のため能動的な運動を展開し、認定支援機関としての役割を自覚し、その使命を果たしましょう。それが会計事務所発展の分岐点となります。
TKC会員の皆さんの、より一層の奮闘を期待しています。
(会報『TKC』令和2年9月号より転載)