全国会活動

国や社会からの期待に応え、企業の経営力強化を支援

中小企業の経営課題が多様化する中、①税務②会計③保証④経営助言の4分野の専門家である税理士がその専門性を発揮し、経営者の相談相手として国が進める支援活動などに取り組むことが期待されています。私たちは、地域の金融機関や中小企業支援団体と協力し、中小企業の経営力強化を支援します。

経営革新等支援機関(認定支援機関)として

 2012年8月に施行された「中小企業経営力強化支援法」は、中小企業の経営力の強化を図るための措置を講じた法律です。同法では、税理士・税理士法人等を「経営革新等支援機関」(認定支援機関)として公的な支援機関に位置付け、中小企業の経営力強化を支援するための担い手と定めました。

 TKC全国会はこうした税理士に対する期待に応えるため、TKC会員に認定支援機関への申請・登録を推奨するとともに、その積極的な活動を支援しています。

 認定支援機関の登録数は、2019年4月26日現在で3万3,162機関(うち税理士・税理士法人等は2万7,935機関)となっています。このうち、TKC会員の登録数は8,466機関で、税理士・税理士法人等の約30%を占めています。

経営改善計画策定支援の取り組み

 認定支援機関の大きな役割の一つが、中小企業の経営改善計画の策定支援です。国は2013年3月に、「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」を創設。これは、経営改善計画を自ら策定することが難しい中小企業が認定支援機関に経営改善計画の策定支援を依頼した場合、その費用の一部を国が負担するものです。国はこの制度をもとに、中小企業の経営改善を促進するための重点的な活動を行っています(図「既存(405)」)。

 これを受けてTKC全国会は、2014年から「経営改善計画策定支援7000プロジェクト」を始動し、関与先企業の経営改善やモニタリング支援等の積極的な運動を展開しました。

 その結果、TKC会員による支援実績は、全国の実績の約4割を担うまでに拡大。認定支援機関による経営改善計画策定支援は中小企業に欠かせない取り組みであることが、社会に認知される契機になりました。2016年9月に中小企業基盤整備機構が発表した「平成27年度に認定支援機関が実施した中小企業再生支援業務に関する事業評価報告書」では、事業の成果の一因として「TKCの活動(7000プロジェクト)が起爆剤となり」と特筆されるなど、高い評価を得ました。

早期経営改善計画策定支援の取り組み

 さらに2017年5月には、認定支援機関の役割として新たに「早期経営改善計画策定支援事業」への対応が追加されました。当制度は、資金繰り管理や採算管理などの基本的な内容の経営改善を必要とする中小企業の支援を目的にしたものです(図「新設(プレ405)」)。

2017.6.23 TKC全国会理事会 藤原敬三中小企業再生支援全国本部顧問
「早期経営改善計画策定支援のねらい」より抜粋・加工

 当事業を活用することで中小企業は、認定支援機関の協力のもとに、「ビジネスモデル俯瞰図」や「資金実績・計画表」等の早期経営改善計画を策定することができます。それを金融機関(メイン行または準メイン行)に提出することにより、早い段階から経営改善に取り組んでいくことができます。金融支援を前提としないため、金融機関の同意がなくても当事業を利用できるなど、従来の経営改善計画策定支援事業より一部条件を緩和しており、今後も多くの中小企業に利用されることが見込まれています。

 経営改善計画策定支援のメリットは、中小企業の経営者と金融機関、顧問税理士の3者の対話を促し、お互いの信頼関係を構築できる点にあります。対話によって中小企業の経営課題が抽出されるとともに、3者の相互理解が深まります。

 TKC全国会では、中小企業に対する早期経営改善計画の策定支援をTKC会員の標準業務と捉え、積極的な運動を続けています。

事業承継支援の取り組み

 中小企業経営者の高年齢化は急速に進んでおり、2025年には70歳を超える経営者が245万人にのぼると予測されています。また、その約半数に当たる127万人(日本企業全体の1/3)は後継者が未定とも言われています。この状況を放置すると、中小企業の廃業が急増し、650万人の雇用と22兆円のGDPが失われる可能性があるとの指摘もあり、日本経済にとって事業承継問題は深刻な課題となっています。

 国はこうした現状を踏まえ、2018年度税制改正で「特例事業承継税制」を創設。2018年1月から10年間の時限措置として、施行日後5年以内に承継計画を作成して贈与・相続による事業承継を行う場合の特例を定めました。非上場株式等の制限の撤廃や、相続税の納税猶予割合の引き上げ(80%から100%)、あるいは雇用確保要件の実質撤廃など、非常に利用しやすい制度となっています。なお、この特例を中小企業が受けるためには、認定支援機関の指導・助言を受けて「特例承継計画」を作成し、都道府県に提出することが必要となります。

 中小企業の身近な相談相手である税理士には、認定支援機関として他の支援機関・専門家との連携も視野に入れつつ、事業承継支援の中心的な存在になることが期待されています。TKC全国会では、中小企業の事業承継支援をTKC会員が果たすべき役割の一つと位置付け、積極的な運動を展開しています。

中小企業の円滑な資金調達に向けて会計を活用


出典:坂本孝司・加藤恵一郎
『中小企業金融における会計の役割』(中央経済社)

 右図は中小企業金融の相互関係をまとめたものです。この図にある“情報の非対称性”とは、融資の現場における貸し手(金融機関)と借り手(企業)との間の情報の格差を示しています。多くの金融機関では、企業の状況に関する情報が不足しており、金融機関は適切な融資判断ができていません。また、企業においてもこの格差は円滑な資金調達を妨げる要因の一つとなっています。

 これを解消する手段として会計の活用があります。
 TKC全国会第三代会長であった武田隆二博士は、会計が果たす役割について「財務諸表とは、企業の実像を数値で表現した一覧表であって、現にある企業の実像を『数と数との関係』として描き出したものである」*と指摘しています。つまり、会計の役割は「企業の実態把握」といえます。

*武田隆二『最新財務諸表論(第11版)』(中央経済社)

 私たちは、企業と金融機関の情報の非対称性を縮小し、相互の信頼を強固なものとするため、そして企業の実態を正確に示す役割を強化するため、これらの会計情報を利用して金融機関へ積極的に提示することを経営者にお勧めしています。


(『TKC全国会のすべて 2019年版』より転載)