ニュースリリース

和歌山県海南市、災害時にも住民サービス継続へ 県内で初めて住民情報など「データ復旧訓練」を実施―東海・東南海・南海地震を想定した防災訓練の一環として―

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平成20年9月8日

 和歌山県海南市(和歌山県海南市日方1525番地6/市長:神出政巳)と、株式会社TKC(本社:栃木県宇都宮市/代表取締役:飯塚真玄)は、平成20年9月9日、住民情報など重要データの復旧訓練を実施します。これは、9月7日に東海・東南海・南海地震が同時発生したとの想定で行われるものです。

 「データの復旧訓練」は災害等において万一、情報システムが被害を受けても住民サービスを確実に継続できるよう「ビジネスコンティニュイティプラン(BCP/業務継続計画)」の観点から実地訓練を行うもので、こうした災害発生を想定した情報システムの運用と、組織的対応などを検証する復旧訓練は和歌山県内でも初の試みです。

(*)BCP(Business Continuity Plan)/業務継続計画
 緊急時の重要業務の継続を目的とした計画。一般に民間企業では「事業継続計画」、行政では「業務継続計画」とされる場合が多い。また、重要業務の継続を達成するための管理プロセスをBCM(Business Continuity Management)、そのシステムをBCMS(Business Continuity Management System)という。

 地方公共団体は、災害時においても地域住民の生命・身体の安全確保や被災者支援などのために、災害応急業務・復旧業務に加えて、「住民票の発行・健康保険証の再発行」などの業務も平常時と同様に継続しなければならない責務を負っています。
 これらの業務を継続するには情報システムが不可欠ですが、災害時においては情報システムがほとんど使用できなくなるだけでなく、住民情報など重要なデータを失う事態に陥る可能性もあります。このため、必要な情報を「同じ災害で同時に被災しない場所」に保存し、万一の場合には代替手段による業務再開の手立てを講じておくことで緊急事態に備えることが必要です。

 そこで、海南市では平成19年10月に、平常時からの業務継続の備えとして「TKC行政ASP/市町村サーバの第2次バックアップサービス」を採用し、重要な行政情報を和歌山県から遠く離れた栃木県内の民間データセンター(TKCインターネット・サービセンター)で30分ごとにバックアップ。仮に庁舎や情報システムが被災した場合には、バックアップされたデータを使用して、迅速に行政情報を復旧し、コンピュータを現地へ運ぶことで、窓口業務を継続・回復できる体制を整えています。
 今回の訓練では、遠隔地でバックアップされたデータを使って、実際にデータ復旧を行うとともに、組織的な対応なども検証します。こうした訓練を行うことにより、今後、BCPの具体的な策定に向けての基礎資料とします。

復旧訓練の概要

  1. 実施日時 平成20年9月9日
  2. 場所 海南市民会館
  3. 訓練内容
    1. 分散保管されたデータの検証
      災害発生日時を想定し、災害発生時点(9月7日)でのバックアップデータを活用して、発生直前の住民情報等のデータベースを復元。また、復元データを実地検証する。
    2. データ復旧にかかる組織的対応の確認
      復旧依頼から実際のデータ復元作業、およびバックアップデータの削除までの一連の活動体制について組織的に再確認する。
    3. データの暗号化・復号化の技術的検証

BCP/BCMの動向

 企業や組織にとって不測の事態においても、事業をなるべく中断させず(中断してもできるだけ早急に)復旧させる方針や手続きをまとめたものがBCP(Business Continuity Plan)。また、BCPも含めて業務を継続させるための管理手法がBCM(Business Continuity Management)である。昨今、事業のITへの依存度が高まるなか、BCP/BCMを策定する上でIT抜きに考えることは不可能であり、これを継続的に改善するためのマネジメントシステムをBCMSという。
 現在、BCMSに対応する規格として英国規格協会のBS25999があり、国際標準化機構でもISO化の検討が進められている。日本国内においても、財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC)が、来年8月正式運用に向けて、このほど試験運用を開始した。

背景

 地方公共団体が保有する住民情報などは、災害時における被災者の特定・把握、ライフラインの復旧、地域の復興支援に欠かせない基本的なデータです。
 平成16年に発生した新潟県中越地震では、発生翌日には関東財務局および日本銀行が「預金証書、通帳を紛失した場合でも預金者であることを確認して払い戻しに応ずる」とした金融上の措置を公表したことで、住民票を求める住民が市町村の窓口に列をなしました。また、災害時には、被災者が医療機関にかかるための「健康保険証」、自動車等の損害保険請求手続に必要な「納税証明書」などの発行も必要となります。

TKC行政ASP/市町村サーバの第2次バックアップサービス」

 住民情報などを、総合行政ネットワーク(LGWAN)など通信経路を暗号化したネットワーク経由で、TKCインターネット・サービスセンターへ送り自動的にバックアップするサービスです。庁舎や情報システムが被災した場合でも、バックアップされたデータを使用して迅速に行政情報を復旧することが可能です。

  1. 30分ごとに重要な行政データベースを、遠隔地で分散保管(第2次バックアップ)
  2. 目標復旧時間内(*別途調整)でのデータベースの復元が可能
  3. BCPの一環としてバックアップデータからの復旧訓練も支援

当リリースに関するお問い合わせ先
株式会社TKC 東京本社 経営管理本部 広報部
TEL:03-3266-9200 FAX:03-3266-9161
Eメール:pr@tkc.co.jp


ご参考
国や他の地方公共団体の動き

 平成17年8月1日、内閣府は『事業継続ガイドライン第一版― わが国企業の減災と災害対応の向上のために ―』を発表。
 また、地方公共団体向けには、今年8月21日に総務省から『地方公共団体におけるICT部門の業務継続計画(BCP)策定に関するガイドライン』が公表されている。

 総務省では、全国の都道府県(47団体)、市区町村(1,810団体)を対象とし、平成20年7月1日現在における業務継続計画(BCP)の策定状況の調査を行った。
 本調査によれば、業務継続計画を策定している都道府県は3団体(6.4%)、市区町村は41団体(2.3%)。また、業務継続計画を策定していない団体のうち、都道府県の10団体(22.7%)、市区町村の20団体(1.1%)が今年度に、都道府県の12団体(27.3%)、市区町村の336団体(19.0%)が来年度以降に業務継続計画を策定する予定。
 さらに来年度以降策定予定または策定予定がない団体のうち、都道府県の15団体(44.1%)と市区町村の372団体(21.3%)が、本ガイドラインの公表を契機としてICT部門の業務継続計画の策定を検討する予定であるとしている。

東海地震/東南海・南海地震(中央防災会議資料より抜粋)

 東海地震、東南海・南海地震は、いずれもマグニチュード7.0を超える巨大地震で、揺れや津波により甚大な被害を出している。なお、3つの地震は比較的発生時期が近い(大体1年以内)場合が多い。過去、3つの地震が連動発生した例としては、「慶長地震」(1605年/マグニチュード7.9~8.0)、「宝永地震」(1707年/マグニチュード8.6)がある。また、「安政東海地震/安政南海地震」(1854年)では2つの地震が連続して発生している。
 発生が予測される連動型地震のうち最大のものはマグニチュード8.7とされる。
 こうしたことを受けて、中央防災会議「東南海・南海地震に関する専門調査会」は、平成15年9月に、3つの地震が同時発生した場合の被害想定を公表している。これによれば最悪の場合、揺れによる被害、津波による被害とも日本最大級となり、建物全壊が約90万棟、死者約2万5000人におよび、経済被害は最大81兆円にのぼるとしている。

海南市における過去の震災被害(海南市地域防災計画より抜粋)

 第二次大戦後、海南市に甚大な被害をもたらした地震としては「南海道大地震」(昭和21年12月21日)がある。震源は、潮岬南々西約50kmの沖合(東経135度36分・北緯33度00分)と推定され、和歌山測候所の観測によると震度5で有感継続時間5分であった。
 地震動そのものによる直接被害は少なかったが、津波による被害が甚大で、地震後40分ぐらいで第1回の津波が来襲し、大波は少なくとも3回以上あり、第3波が最も大きい。波高は3.5mに達したと記録されており、海南警察署管内の被害状況は次の通り。

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