2025年7月号Vol.139
【ユーザー事例2】市民サービス向上へ、カード交付・管理業務を変革
マイナンバーカード交付予約・管理 > 福岡県北九州市
総務市民局市民部区政推進課 戸籍住民係係長 山内博子 氏 /主査 村田国吉 氏 / 江頭佳恵 氏
- 住所
- 福岡県北九州市小倉北区城内1番1号
- 電話
- 093-582-2107(市民部区政推進課)
- 面積
- 492.5平方キロメートル
- 人口
- 909,192人(2025年4月末現在)

──システムを導入したきっかけは。
村田 北九州市では、七つの区役所でマイナンバーカードを交付するほか、夜間・休日の窓口として「マイナンバーカード特設コーナー」を設置し、利用者の多い二つの出張所とともに、予約を受けてカードを交付するなど、市民の利便性向上に努めています。
以前は、共有フォルダ上に各区役所が独自にエクセルの管理台帳を作成していました。区役所以外の窓口では、予約の情報からそのエクセル台帳を確認して該当者を探し出し、区役所にカードの配送依頼をする──という非常にアナログな処理でした。運用が非常に煩雑で、手間がかかる上にミスが発生するリスクもあり、限界を感じていました。
山内 市民のカード保有率が7割を超え、2025年度以降はカードや電子証明書の有効期限を迎える市民が急増します。市の試算では、電子証明書の更新だけで今後3年間で50万人超の更新対応が必要で、窓口の拡大など体制強化を図るためにも、システムを導入してカードの交付・管理業務の効率化・最適化が不可避となっていました。
決め手はシステムの〝柔軟性〟
──システム選定の決め手は。
村田 一番の決め手は台帳管理の機能が充実していたことです。特に、カードの区間移動や申請時来庁方式の運用に対応している点は大きなポイントでした。また、これまで各区役所が独自に台帳を作成していたためバラバラな管理項目となっていましたが、これを統一することで、市全体の運用が最適化できると感じました。
山内 もう一つの要因に、LGWAN-ASPサービスであったことが挙げられます。これにより、安全性を担保しながら、新たな拠点の開設や対応窓口の新設・増設が容易に行えます。
──活用の効果はいかがでしょうか。
村田 昨年10月からシステムの運用を開始しました。全区役所と三つの拠点で一斉に業務フローを変えたので一時的な混乱はありましたが、業務効率は格段に向上しています。以前は、カード交付の際に、予約者の情報から住基ネットや住民記録システムで対象者を特定した後、管理台帳を照合する──といった複雑な作業を行っていました。
システム導入後は、全区役所のカード管理情報を一元的に確認でき、さらに予約情報とも連動するため、申請から交付までの一連のカードの状態が全拠点でリアルタイムに把握できるようになりました。これにより、区役所以外の窓口で行っていた台帳照合やカードの送付依頼などの業務が不要となりました。
さらに、カードの区間移動を行う場合も、これまでは台帳が複数あることによる〝二重管理〟が生じていましたが、システム上で全て完結できるため、業務の透明性が向上し、ミス発生リスクの軽減にもつながっています。
山内 システムは職員のほか、会計年度任用職員や委託事業者が利用します。この点、システムの導入を機に全体的な業務の標準化が進みました。
市内には九つの出張所があり、うち2カ所の出張所でシステム導入を機に予約交付を開始しました。運用フローが統一されたことで、今後は新設窓口へのサービス拡大も容易になると考えています。これも、従来の運用を続けていたら実現できなかったことです。
江頭 私は、国の制度改正による運用の検討・案内を行うなど、市全体のカード交付・管理業務をサポートしています。最近では「特急発行」制度導入に伴う各窓口での再交付手数料管理について、システムの管理機能を活用して混乱することなく対応できました。このように、制度変更などにスムーズに対応できるのもクラウドサービスの強みだと感じています。
煩雑さを増す業務への備え
──今後の取り組みや、システムに期待することを教えてください。
江頭 26年にも導入が予定される次期マイナンバーカードは、デザインが刷新されるだけでなく、電子証明書の有効期限が5年から10年に延長されるなどの改定が見込まれています。加えて、外国人在留カードとの一体化の動きもあり、カードの交付・管理業務は今後ますます煩雑さが増すと想定されます。これらについては、国から発信される情報に注視しながら、迅速に対応していきたいと考えています。
山内 いまやマイナンバーカードをめぐる潮流は〝普及促進〟から〝利活用拡大〟へと移り変わりました。マイナンバーカードは、デジタル社会の〝キーデバイス〟です。
今後、マイナ保険証などカードの利活用が急速に進むにつれ、有効期限を迎えるカードや電子証明書の更新手続きに加えて、暗証番号の再設定など、いろいろな用件で市民の方が窓口を訪れる機会は確実に増えていきます。これに備え、システムの申請予約機能を用いて、5月から小倉駅前の行政サービスコーナーで電子証明書の更新手続きの予約優先対応を新たに開始しました。また、今年度中に特設コーナーをもう1カ所増やすなど、今後も需要予測をもとに市民により便利な窓口へと強化・拡充を図る考えです。
デジタル化の進展、社会ニーズの高まりなど、さまざまな要因によって行政サービスも多様に変化していきます。マイナンバーカードの更新・管理業務も、いま変革のときを迎えています。システムには、これからも自治体の動きにきちんとついてきてくれる、安心の存在であり続けてくれることを期待しています。(取材協力:株式会社NDKCOM)

左から、江頭氏、山内係長、村田主査(背景は小倉城)
掲載:『新風』2025年7月号