2024年1月号Vol.133

【スマート行政最前線】先進団体分析に見る「窓口デジタル化」の現状

株式会社TKC 自治体DX推進本部 武長 浩史

 「スマート行政」というと、皆さんはどんなイメージがありますか。担当業務の違いなどにより印象はそれぞれ異なると思いますが、TKCでは〈住民との接点から、職員の業務にいたる業務プロセス全体をデジタル技術で変革する〉ことと考えています。
 このページでは国や市区町村の最新動向なども交えながら、さまざまな観点でスマート行政を考えていきます。初回となる本号では、全国に広がる「窓口のデジタル化」を取り上げます。

庁内で利用広がる「書かない窓口」

図表1「書かない窓口」の利用状況

 TKCでは書かない窓口の現状を探るため、このほど「かんたん窓口システム」(導入実績は100団体超)を利用するお客さまにご協力いただき、統計データをもとに利用される手続きの種類や申請件数などの分析を行いました。
 お客さまの取り組み状況を見ると、それぞれの考え方を反映して〈局所的にスモールスタートし、対応窓口を徐々に拡大〉と〈最初から全庁を対象に推進〉という二つのスタイルに分かれます。傾向として、前者は「引越し手続オンラインサービス」を機に住民異動の手続きをスタート、あるいは「おくやみ手続き」に先行して取り組む団体で、後者はいち早く手続きの棚卸しを実施し、全庁的な推進体制を構築して取り組む団体といえます。なお、現時点では局所的な取り組みとなっているお客さまも、全ての窓口での利用を目指して手続きの棚卸しなどを進めているようです。
 書かない窓口の利用拡大で、高いハードルとなるのが関係部署との合意形成です。円滑に進める上では、多くのお客さまが「成功体験の積み重ねが重要」と述べています。
 では、書かない窓口はどんな手続きに利用されているのでしょうか。
 過去2年間(10月~9月末)における書かない窓口の利用状況を分析しました(図表1)。これを見ると、住民異動にかかる手続きなどを担当する住民課以外にも、納税や保険年金・国民健康保険の担当窓口などへと着実に利用範囲が拡大していると推察されます。
 また、図表2では各課で利用されている手続き例を示しました。これらは制度化されているなど運用フローが明確な手続きで、比較的容易に開始でき、高い効果も期待できるため、成功体験が得られやすいと想定されます。
 書かない窓口の利用拡大を考える上では、これらの手続きから開始するのが近道といえそうです。

国も「フロントヤード改革」に注力

図表2 各課の手続き例

 いま、行政DXの推進では「フロントヤード(住民との接点)」改革の重要性が高まっています。国も強力に支援する方針を打ち出し、窓口のデジタル化を進める上でも〈住民目線に立った創意工夫によるサービスの充実・深化〉が求められます。
 窓口デジタル化でも〝住民との接点の多重化〟が不可欠となり、今後は、書かない窓口から〈行かない窓口〉、あるいは〈窓口のセルフ化〉への進展が見込まれます。この点、「証明書コンビニ交付サービス」は行かない窓口やセルフ窓口の先駆けといえ、この仕組みを庁内でも応用し証明書交付申請をセルフ化する団体が登場しています。
 そこで重要なポイントとなるのが、マイナンバーカードの活用です。
 「かんたん窓口システム」は、マイナンバーカードのほかにもさまざまな本人確認証を利用して、申請書作成を支援する機能を有しています。そこで、〈利用された本人確認証の種類〉を分析したところ、運転免許証のほか在留カードなど多岐にわたっていました。特に、マイナンバーカードの利用率は4割以上と最も高く、行政手続きにおいて確実に浸透していることが分かります。カード利用が定着する中で、利便性の高い行かない窓口やセルフ窓口へのニーズも徐々に高まると考えられ、市区町村の早急な対応が望まれます。
 また、先述した利用状況の分析では、〈支所・公民館〉での利用が増えていることも注目されます。ここから出先機関での窓口のデジタル化も確実に進める必要があるといえますが、その場合、行かない窓口やセルフ窓口の整備だけでは不十分です。今後も対面での応対が必要な手続きが残るとともに、デジタルデバイドへの対応も必要です。
 そこで効果が期待できるのが、「遠隔窓口」です。遠隔窓口は、本庁と支所・公民館などの出先機関を接続し、住民が 〝近場〟にある窓口からビデオ通話や遠隔操作により対面同様の手続きや相談が受けられるものです。これは住民との接点の多重化・充実化に加え、市区町村にとっても業務集約と出先機関の行政サービスの維持・拡大という効果が期待できます。すでに本格的なサービスを開始する団体も登場し、今後、遠隔窓口は急速に拡大していくことが見込まれます。

◇   ◇   ◇

 窓口のデジタル化などフロントヤード改革を推進する上では、それを支えるバックヤード(内部事務)と一体的なデジタル化が不可欠です。
 事務処理の重複を解消する上でも、対面・非対面を問わずデータでの申請手続きを前提とし、基幹業務システムに自動連携させる。将来的には行政が保有する情報を申請時に活用することで、住民と職員双方の省力化を図る。さらには財務会計システムなどの内部事務システムとも連携させ、業務効率化による業務改善を進める──ことが期待されます。

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