2024年1月号Vol.133
【ユーザー事例】電子請求書で、一歩先の内部事務DXに挑む
公会計システム > 兵庫県多可町
行財政改革担当理事兼財政課長 土田五郎 氏 / 財政課 主査 上田慎吾 氏 /企画秘書課 主幹 藤原正和 氏 / 財政課 主事 高見奈央 氏
- 住所
- 兵庫県多可郡多可町中区中村町123番地
- 電話
- 0795-32-2380
- 面積
- 185.19平方キロメートル
- 人口
- 19,016人(2023年12月1日現在)
──2023年11月から、電子請求書サービスとの連携を開始されました。
土田 多可町では、財務会計システムのバージョンアップを機に内部事務のDX化を進めてきました。電子請求書もその一環として取り組んだものです。電子決裁の導入でペーパーレス化は進みましたが、請求書の処理に関しては紙で届いたものをスキャンしてPDFファイルを作成し、金額や適用などは財務会計システムに職員が入力・確認した上で電子決裁に回す──という具合に効率化が図れていませんでした。
加えて、民間では電子請求書が急速に普及する中、いつまでも行政が紙の請求書を求めるのは地域事業者のDX推進を阻害することにもなりかねません。そのため、いち早く受け入れ体制を整えるとともに、内部事務の効率化・業務改善を図ろうと、電子請求書サービスへの対応を決断しました。
計画的な導入で混乱回避
──導入にあたり、どのような準備をされたのでしょうか。
上田 いきなり業務を大変革すると職員に負担がかかるため、電子決裁、電子請求書と一つずつ段階を踏んで導入する計画を立てました。また、事務フローを極力変更しないよう努めたことで、違和感なく受け入れられているようです。
事業者向けには、昨年度に取引実績のある750社を対象に電子請求書への対応を案内するととともに、オンライン説明会を開催しました。この説明会には300社ほどが参加し、うち約180社から申請を受け、これまでに90社が登録を完了しています(2023年11月16日現在)。利用状況を見ると、サービス開始後3日間で3~4社から電子請求書が届きました。
──実際に利用された感想はいかがでしょうか。
土田 電子請求書は、メールに記載されたリンク先からPDFをダウンロードする方式が一般的で、この場合、発行者は郵送にかかる手間・コストの削減ができても、受け手側にとっては紙がPDFファイルに変わるだけでメリットはほとんどありませんでした。
しかし、請求書を電子データで受領し、それが財務会計システムに自動連携されて伝票入力が自動化される──これは〝革命的な変化〟でした。
請求書データがそのまま伝票に転記されるため、職員の作業は数回クリックするだけ。紙の請求書を見ながら内容を一つずつチェックする作業がなくなり、逆に「これだけでいいの?」と不安になるほどでした。これにより請求書の処理時間が短縮され、入力ミスも解消されると期待しています。
上田 また、請求書の処理状況を〝見える化〟したことによる管理のしやすさも挙げられます。
これまでは、紙の請求書がほかの書類に紛れてしまうことや、支払い期限間近に伝票入力を始めるといったこともありました。いまでは、受領した請求書データの処理状況を財務会計システムで把握でき、処理の漏れや遅れなどを防ぐことができます。なお、請求書の発行者も電子請求書サービス上で請求書の処理状況を確認できるため、事業者の利便性向上にもつながっているのではないでしょうか。
さらに、事業者が請求データの作成時に入金先口座を指定できるため、振り込み誤りが発生しません。加えて、住所変更など微細な修正・変更は、電子請求書を受領した時点で情報が更新されるなど、取引先の意図を汲みやすくなったとも感じています。
DX推進は利用者視点で
土田 財政課の視点では、電子請求書サービス連携単体での目に見える大きな導入効果は挙げづらい。しかし、個々の事務処理時間の短縮、あるいはミスの軽減など小さな成果が連なって、全体として業務効率化や業務改善につながると考えています。
上田 将来的には、事業者のニーズに合わせてさまざまな電子請求書サービスに対応することも必要でしょう。その点では、最終的にデジタル庁が推進する「ペポル」に集約されると、事業者も行政も一段と便利になると期待しています。
──今後の計画を教えてください。
土田 当初は徐々に地域に浸透していけばいいと考えていましたが、個人商店の方からも問い合わせを受けるほど、われわれの想像以上に事業者の皆さんはDXに意欲的であることを実感しました。1月には、「TASKクラウドスマート申請システム」を活用して、オンライン申請により新規登録の受け付けをスタートする計画です。将来、事業者のDXがさらに進めば、電子契約書など新たな展開も見えてくるでしょう。
藤原 多可町では、23年度末までに『DX推進計画』を策定する計画で、まずは昨年度から進めているオンライン申請のさらなる拡充を図ります。
並行してオンライン化できない手続きについても、窓口のオンライン予約を可能とすることで待ち時間の削減や職員の事務の省力化を図る考えです。これに加えて、書かない窓口の利用範囲の拡大にも取り組み、住民との接点の多重化を進めます。
さらに、オープンデータ化を進め、その活用を通じて地域課題の解決策を創出することなどにも取り組みます。職員の意見も聞きながら、これからも一歩ずつ利用者視点のDXを進めていきたいと考えています。
掲載:『新風』2024年1月号