【連載】どうするマイナンバー
宛名データの整備
株式会社TKC 行政システム研究センター 番号制度対応推進室長 松下邦彦
番号制度では情報連携が実現され、他の機関が持つ情報を相互に活用することになる。これにより情報を保有する機関は、他の機関から情報照会を受けた時に対象者の情報を漏れなく提供する義務がある。
そのためには各機関の内部で個人が特定され、一人に対して一つの管理番号が付与されていなければならない。市町村では業務で扱う個人は住民と住登外者からなる宛名として管理されている。番号制度を導入するには宛名データを整理し、一人に対して一つの「統合宛名番号」が割り当てられた状態にする必要がある。
同一宛名番号の重複排除
市町村の基幹システムにおいて、個人は宛名番号(当社では個人コード)で管理されている。住民基本台帳に登録されている住民は住民記録システムで一元的に管理されている。それに対し、住登外者は個別業務システムごとに登録する運用が一般的であり、同じ宛名番号がシステムごとに別の人に付与されているケースがある。
この状態を解消するため、個別業務システムが保持するすべての宛名データを統合宛名システムに集約し、同じ宛名番号が付与されているものを洗い出し、必要に応じて異なった宛名番号を振り直す。
同一人の名寄せ
同じ宛名番号が別の人に付与されているのとは逆に、同じ人が複数の宛名として登録され、それぞれに異なった宛名番号が付与されているケースもある。これは個別業務システムごとに住登外者を登録する運用で発生するとともに、住民が転出後に再転入した場合にも発生しうる。この状態を解消するために、同一人の宛名データを名寄せし、これらに一つの「統合宛名番号」を付与する。
名寄せの作業負荷を左右するのは、過去分の宛名データの範囲と突合のキー項目である。以前の市町村合併では、すべての宛名データを名寄せし、突合キーにはカナ氏名・生年月日等を用いた。件数は多く、突合精度は低かった。
それに対し、番号制度を導入するための宛名データ整備では、基本的には他の機関に提供する情報に関わる宛名のみ名寄せすればよい。他の機関に提供する情報は、過去分すべてではなく、番号制度開始後に業務で経常的に対象とする情報である。また、提供する情報に関わる宛名は個人番号を取得しておく必要があり、名寄せの突合キーとして個人番号を利用できる。個人番号さえ取得できていれば、突合は自動化できる。
他の機関に提供する情報に関する個人番号は、住民については住民記録システムで取得し、転出者・住登外者については社会保障給付の現況届等の手続きか、住基ネット端末の検索で取得する。番号利用開始から情報連携開始までの1年半は、宛名データを整備する期間といえる。
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なお、当社では統合宛名システムに宛名データ整備支援機能を実装し、同一宛名番号の重複排除と同一人の名寄せという宛名データ整備にかかる作業を支援する。
掲載:『新風』2015年4月号