ユーザ事例 社会福祉法人 はづき会
特別養護老人ホーム・オレンジの丘を主体に福祉サービスを提供してきた社会福祉法人はづき会では長崎市からの委託で配食サービスなども手がける。新会計基準への移行は何の問題もなくスムーズにできたという。山田由香里施設長と経理を担当する早瀬千穂さん、弥長一昭税理士にその顛末を語っていただいた。
経理事務の安心のためには会計専門家のサポートが必要
──新会計基準への移行は平成24年度に「TKC社会福祉法人会計データベース」のシステムを使い早々に済ませられましたが、TKCシステムはどのような経緯からお使いいただくようになったのでしょうか。
定員50名の特別養護老人ホーム
オレンジの丘
山田 措置費の時代から法人運営をしています。その後介護保険が導入されるようになり会計も複雑になってきていましたが、独自で何とかやっていました。しかし、不安もあったのでいよいよ専門の方に見ていただかなければならないと、社会福祉法人のことをよく知っている弥長一昭先生にお願いするようにしました。そのときに会計ソフトもTKCに全面移行しました。今回の新会計版についても当初から使っています。
弥長 平成15年の1月から先行して給与計算のPX2を導入し、会計のほうは同年3月から導入したのが始まりです。
山田 給与計算は以前使っていたソフトはうまく計算ができていなかったりして、年末調整のときは手計算で確認しながら行っていたので、手間とともに不安も大きかったところでした。
現在、経理の態勢は担当の早瀬が1人で行っていますが、弥長先生には毎月、チェックしていただいていますし、わからないことがあればいつでも教えてもらえますのでとても安心です。
弥長 TKCのシステムは会計専門家から見て、法令等に完全準拠し、法改正等にも迅速な対応ができていますし、訂正・加除履歴が記録されるため不正防止に役立つ点がよいところです。
──実務的には新会計基準への移行は早瀬さんが行ったわけですが、いかがでしたか。
早瀬 わからないところは弥長先生に聞きながらでしたが、大きな問題もなく、難しくもなくスムーズにいったと思います。
もともと建築の経理の経験はあったのですが、社会福祉法人の会計はほとんどはじめてのような状態でした。最初のうちは損益と貸借に資金収支が入ってきて、なじめませんでした。
──すると、事前に猛勉強され、移行処理を行ったのですか。
早瀬 施設でTKCの分厚い書籍(『社会福祉法人の会計実務』永田智彦・田中正明著)を買ってもらい、それを読んで覚えたのと、その前には、やはりTKCの移行セミナーに参加して、ある程度の概略は把握しました。講師は偶然にも弥長先生でした。とにかく、本を読んでひたすら覚えました。
弥長 とにかく熱心で社会福祉法人の簿記の研修などに参加して、ある団体の初級・中級などの資格を取得したりしています。
山田 経理だけに限ったことではなく、何でも研修には行かせるような体制をとって、個人のスキルアップをしてもらっています。
問題なくスムーズに進んだ移行処理
──移行に関して何をはじめに行われたのですか。
弥長 はづき会の場合は事業展開も特殊なものはなく、経理もしっかりしているということで移行しやすいと考え、こちらからお願いして初年度に移行したのです。実際にもシンプルで標準的な移行パターンで行えました。
具体的には、事業の把握と拠点の確定ということで、施設長と確認し合いましたが、従来の分がそのまま新会計に落とし込めました。拠点は1つで、8つの経理区分をそのままサービス区分としました。法人本部、介護老人福祉施設、短期入所、通所介護、訪問介護、生活援助、要支援の配食サービス、虚弱者向け配食サービスです。
新会計のスタートのときは預貯金の残高だけをおさえて、科目の残高などは確定させない段階で、日々の伝票は入力してもらうようにしましたが、それでも案外、手直しは少なかったと思います。
──勘定科目の設定などはどのようにされたのですか。
弥長 決算が終わったあとの移行作業のなかで、新会計の貸借対照表の科目を確定させ、収支についてはとりあえず標準のままでスタートしました。そのなかでいくつか細かい勘定科目について取扱いが違うということで、その分については、その都度、出てきたときに打ち合わせていきました。具体的には、賞与引当金の処理や賃借料などですね。
最後は移行仕訳での調整ですが、具体的には、新会計移行仕訳にかかる勘定科目として、過年度国庫補助金等特別積立金積立額の設定を行いました。
──予算についてはいかがだったのでしょうか。
山田 毎年、2月くらいまでの確定した金額から予算を考えていくのですが、移行の際も同様に旧会計のまま予算を立て、それを弥長先生と早瀬とで新会計に読み替え組み直してもらいました。
──経理規程については、初年度はモデル経理規程が出るのが遅かったので大変だったのではありませんか。
山田 3月の理事会で承認をしてもらいました。
ですから、とにかく時間がなく、見直すのが大変だったものですから、モデル規程に準じた形で、細部については見直すことも併せて承認をいただき、翌年に再度承認をいただきました。
入力の手間が少なくなった新会計基準
──新会計基準で決算を2度終えられましたが、新会計に変わっての印象というのは、どのようなものがありますか。
早瀬 良かった点は、入力が早くなりました。以前は経理区分ごとに元帳が1つずつあったので、量がすごく嵩張ったりしたこともそうですが、入力の際は経理区分を変えて同じことを打ち込む必要がありました。それがいまは、1つの伝票にサービス区分などを全部入れられるので1度で済み、時間的に短縮でき、それが何よりですね。
また、固定資産管理台帳についてですが、新会計基準では拠点ごとの作成になりましたので、個々の資産について、たとえば、この車は特養のものなのか通所のものなのか、どのサービス区分のものなのかわかるようにするため、新会計基準での台帳管理には注意をしています。
──施設長にとってはいかがでしょうか。
山田 とくに問題なく、今まで通りの感じで決算書も見られますし、伝票に関しては早瀬が言うようにサービス区分についてもわかるので前より見やすくなりました。
──システムの移行はいかがでしたか。
左から山田施設長、早瀬さん、
弥長税理士
早瀬 何も問題はなかったと思います。勘定科目のことでは以前と違うと思ったことはありましたが、入力やシステムでは特にありませんでした。入力はTKCの科目コードが頭に入っていますので、そのまま打ち込んでいきます。共通費用については、受託事業において細かい按分の指導がありますので、毎月エクセルで按分してから入力します。
山田 新会計基準の移行といわれても実際のところよくわかりませんでしたが、弥長先生がついて指導いただけるのなら問題ないと思い引き受けたのです。専門家のサポートが不可欠だと思いました。
(平成26年6月12日)
法人Data
社会福祉法人 はづき会
長崎県長崎市ダイヤランド3-31-8
理事長 濱辺淳一
- 特別養護老人ホームオレンジの丘 定員50名(従来型個室・多床室)
- ショートステイ 定員20名
- デイサービスセンター 定員25名
- 訪問介護ステーション
- 配食サービス(委託)
- 生活援助(委託)