事務所経営

「月次巡回監査に役立つコミュニケーション研修」を開催

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TKC全国会・大同生命業務提携50周年記念事業の一環として2024年9月~2025年1月にかけて、巡回監査担当者を対象とした「月次巡回監査に役立つコミュニケーション研修」が大同生命主催により全国48カ所で開催されている。

 当研修は、TKC企業防衛制度の推進において所定の基準を満たし、かつ、「TKC方式の標準保障額算定」を実践している会員事務所の巡回監査担当者を参加対象としている。研修は企業向けに教育研修事業等を展開する「株式会社ノビテク」が手掛け、アウトプットを重視した1日研修により、巡回監査担当者が①関与先の経理担当者と良好な関係を築く力②関与先が困っていることを聞き出す力──の2点を習得することを狙いとしたもの。
 その模様を紹介すると、まず冒頭、地域会企業防衛制度推進委員会書面により、研修の目的を説明。税理士法および経営助言の観点から月次巡回監査が不可欠であることや、関与先の理解や納得を得るためのコミュニケーション力を磨く必要性が語られ、当研修が保険指導のみならず、日常業務全般の支援につながるものであることが明示された。
 研修は、講師によるポイント解説と、個人ワークやグループワーク、ロールプレイングを繰り返す流れとなっている。

月次巡回監査に役立つコミュニケーション研修

写真はTKC八王子SCGサービスセンターでの開催の模様

1.コミュニケーションの基本

 最初に「伝わらなくて困った経験」をテーマに参加者がグループ内で日々の業務で感じているコミュニケーション上の課題等について意見交換。参加者の緊張がほぐれ、受講への姿勢が整ったところで講師から伝え方の4つのポイントについて解説。①結論から、②一文を短く、③肯定的に(できないことよりできることを伝える)、④相手の理解状況を確認。事例を交えたわかりやすい講義に引き込まれる。

2.アサーティブコミュニケーション

 良好な関係のためには相手はもちろんのこと、自分自身も(犠牲にすることなく)大切にする「アサーティブコミュニケーション」が重要。具体的な実践方法として、「DESC法」と「アイメッセージ・ユーメッセージ」について講師が解説。「DESC法」は対話に、D客観的な事実・状況の描写(describe)、E意見の表現・説明(express・explain)、S提案(specify)、C選択肢の提示(choose)の要素を盛り込む方法である。ケーススタディとして、外出しようとしている際に関与先から補助金の申請書類作成の至急依頼が入った場面を想定したロールプレイングを実施。参加者は自分と相手の状況を整理しながら会話することの重要性を理解。

3.課題・ニーズ把握のポイント

 関与先が真に求めていることを把握するためのポイントについて講師が解説。具体化された欲求「ウォンツ」(~がほしい=手段)に対して、「なぜ?」を繰り返して深掘りすることにより、理想と現実のギャップを埋める欲求「ニーズ」(~のために=目的)の把握が可能になる。例として、「新しいPCが欲しい」というウォンツに対し、質問して掘り下げることで「業務効率を上げて家族との時間を充実させたい」といった潜在ニーズの把握につながる。関与先の考えを引き出す質問スキルを活かして、「人材採用したい」と考えている関与先の潜在ニーズを探るペアワークを通じて、参加者は洞察力を働かせながら関与先が求めていることを把握する練習を実施。

ニーズとウォンツ

(株式会社ノビテク作成)

4.提案力を磨く

 提案のためのフレームワーク「PREP法」(主張・結論:point、理由:reason、具体例:example、結論・まとめ:point)により、人材採用したい関与先の潜在ニーズを踏まえた提案のロールプレイングを実施。
 研修の締め括りには、研修で得た気づきをグループ内で共有するとともに、それぞれが「今日からはじめること」を宣言することで、学んだ成果を実践に移す動機づけがなされた。

 全国各地の参加者による受講後アンケートでは、「研修で学んだ内容は今後の巡回監査等で役立つ」といった回答が大半を占める。研修受講により自身の行動変容につながる新たな気づきを得たり、コミュニケーションにおける課題解決の糸口にできるなど、満足度の高い結果となっている。巡回監査担当者が知識とともにコミュニケーション力を活かし、良き理解者・伴走者として関与先の発展にさらに貢献することが期待される。

受講者の声

(受講後アンケート抜粋)

(TKC全国会事務局 谷澤勇輝)
(会報『TKC』令和7年1月号より転載)