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リユース事業やカフェレストランの運営など、さまざまな“再生”ビジネスを手がけるGRACEは、創業からわずか10年で年商を100倍近く伸ばした。代表取締役である沢村優太氏の根底にあるのは「価値を失ったモノでも、光の当て方を変えればたちまち輝く」という考え方である。
沢村優太代表取締役
楽器・自動車・日用品の買い取りと販売、ウェブを活用した広告宣伝やマーケティングのコンサルティング、カフェレストランの運営など、横浜を拠点に多様なビジネスを手がけているGRACE。2012年の創業以来、右肩上がりのペースで業績を伸ばしており、23年は年商80億円を突破。今年度は100億円の売り上げ目標を掲げてスタートし、現在は目標達成が射程に入っているという。
「当社は多岐にわたるビジネスを展開していますが、そのすべてに“再生”という核となるテーマが存在しています。お金を稼げそうな事業に、やみくもに手を伸ばしているわけではありません」
代表取締役の沢村優太氏がこう断言するように、同社は「リユース(価値の再生)」「リビルド(ビジネスの再生)」「リフレッシュ(元気の再生)」をテーマに事業を手がけている。
多店舗展開を積極的に行っているところも特徴で、楽器事業(「UNI SOUND」「楽器の買い取り屋さん」)では全国20店舗、カフェレストラン事業(「UNI COFFEE ROASTERY」「Re:journal」「Re : Wharf」)では神奈川県内を中心に19店舗を構えている(24年7月現在)。
“音楽通”の従業員が多数在籍
父親が建設会社を営んでいた関係で、物心のつく頃から企業経営に関心があった沢村氏。ウェブ制作会社でデジタルマーケティングに関するノウハウを培ったのち、個人事業を経て12年にウェブ制作会社で切磋琢磨した清島萌氏とともにGRACEを立ち上げた。
創業直後は、楽器の買い取りとデジタルマーケティングの2本柱でスタート。「私自身がベースの演奏を嗜んでいることと、個人で中古楽器の販売ビジネスを手がけるなかで、多くのお客さまに喜んでもらえた経験から、楽器のリユース事業を立ち上げました」(沢村氏)と説明するが、当時さまざまな企業が楽器の買い取りビジネスに参入していた。競合他社と熾烈な競争を繰り広げるなか、同社はいかにして生き残ってきたのか。
「当社はリファラル採用を軸に人材を確保しており、楽器の扱いに慣れている人や実際に音楽活動を行っている人など、楽器や音楽に精通した従業員が多く在籍しています。プロ・アマチュア問わず、たくさんのミュージシャンが当社のサービスを利用しているのですが、その理由は演奏家特有のこだわりや楽器の価値を十分に理解している従業員が、お客さまの要望や楽器への思いに、真摯に耳を傾けているからだと思います。当社はミュージシャン向けの販売や買い取りの量で、トップを誇っている自信があります」(沢村氏)
海外での販売に注力していることも、同社が優位性を確立している理由の一つだ。競合他社の多くが国内を中心に事業展開する一方、同社では16年に海外向けの販売を開始。米国や中国、タイ、オーストラリアなど、海外40カ所以上に販売拠点を開設し、中古楽器を卸しているほか、越境ECサイトでの販売も行っている。
「楽器事業の売上高は70億円で、全社売り上げの7割を占めています。最近は円安の影響で海外向けの販売も好調です」(沢村氏)
愚直に突き進んできた10年間
楽器事業が飛躍的に成長したことから、沢村氏は矢継ぎ早に二の矢、三の矢を放つ。16年にカーリユース事業を、17年に日用品のリユース事業を、18年にカフェレストラン事業をスタート。事業規模の拡大に比例して、年商や社員数もまたたく間に伸びていった。
最近はM&Aを活発に行っており、運送会社や楽器メーカーなど、熟練の技術を持っているにもかかわらず、経営者の高齢化や後継ぎ問題といった経営上の課題を抱える中小企業を子会社化することで、事業や経営資源の“再生”を導いている。
「これまでさまざまな苦難に直面してきましたが、いま自分がなすべきことを愚直に取り組めば道が開ける。そう信じてがむしゃらに突き進んできました。創業から10年で年商・社員数ともに100倍に伸ばしたことが、私たちの選んだ道が間違いではなかったことの証しだと思っています。とはいえ、この10年間はオフェンス一辺倒だったので、今後は、会社経営の守りの部分であるバックオフィス業務をより盤石にしていきたいと考えています。相良貴裕先生とともに、経営管理体制をさらに磨いていきたいですね」
今年3月には、経営管理の分野で豊富な実務経験を持つ清水伸氏が、管理部門のマネジャーとして入社。堅牢な経営管理体制の構築に向けて弾みをつけている。
コーヒーかすの資源化に挑戦
22年、GRACEが創業10周年を迎えたタイミングで、沢村氏はコーポレートブランドの再構築を実行。新たな理念として「サステナブル(持続)からリジェネラティブ(再生)へ」を掲げた。
「この理念は『サステナブルはマイナスをゼロにする動きで、再生はマイナスをプラスに変える動き。これからの社会は後者がトレンドになる』という社員の意見から生まれました。例えば、脱炭素やごみの排出量削減はマイナスをゼロに近づける動きですが、われわれがチャレンジしているのは、廃棄物の資源化というマイナスのものをプラスに変える取り組みです。ポイントは、これまで廃棄物として処理されていたものに価値を付けて“再生”するところにあります」
現在、同社が取り組んでいるのが、コーヒーかすの資源化である。同社が展開するカフェで発生したコーヒーかすを、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度があるセルロースナノファイバーという資源としてよみがえらせる研究を、横浜国立大学と共同で実施。この素材を活用した新製品の開発を目指して、今なお研究を進めていると沢村氏は言う。
「目標はコーヒーかすからギターを作ることで、現在はセルロースナノファイバーを木材レベルの硬さにするためにトライ&エラーを重ねている最中です。まだまだ道半ばですが、実用化を目指して引き続き力を注いでいきます」
(取材協力・税理士法人レクラン/本誌・中井修平)
名称 | 株式会社GRACE |
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業種 | 中古楽器・日用品のリユース、飲食事業など |
創業 | 2012年11月 |
所在地 | 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-5 クイーンズタワーC棟8F |
売上高 | 81億7,000万円 |
社員数 | 830名 |
会計システム | FX4クラウド |
URL | https://gr1.jp/ |
コンサルタントの眼
税理士法人レクラン 栃木県宇都宮市昭和1-7-9 2F
パートナー税理士 相良貴裕 https://tax-lecrin.com/
沢村優太代表と初めて会ったのは、GRACEが創業してから1年が経過したころのことで、知り合いの経営コンサルタントから「とにかく勢いのある会社」と紹介されたのが関与のきっかけでした。初回の面談時に、沢村代表から「これから会社を大きくしていきたい。そのためにも、経理体制を本気で作り上げていきたい」という熱のこもった言葉が発せられたことを、今でも覚えています。当時の私は沢村代表の意気込みに負けないよう、「GRACEの伴走者として会社を成長に導こう」と決意しました。
会計システムは、当初『FX2』を導入してスタートしましたが、会社の規模が大きくなるにつれ、より緻密な管理が必要になったため、現在は『FX4クラウド』を利用しています。今では管理部スタッフ約10名で経理などのバックオフィス業務を行っています。エクセルデータの取り込み、銀行信販データ受信機能、証憑保存機能、スマレジとの連携など、あらゆる連携機能を駆使して、時短かつ正確な経理体制が実現できています。
業績管理も緻密です。GRACEでは「ビジネスコンサルティング」「楽器」「リユース」「カフェレストラン」の4部門に分け、さらに、その下に店舗別の業績をぶら下げています。それら部門業績の予実対比や店舗別業績の月次進捗状況など、最新データを活用して事業投資や店舗出店等の経営判断を下しておられます。
沢村代表のお話にもあるとおり、GRACEはモノやコト、企業や 地域など、さまざまな「再生」に取り組む、社会貢献度の高い会社です。私もそのような会社の顧問税理士として“次の10年の成長戦略”を共に描いていけるよう、税務デジタル化に伴う新技術・仕組みにもしっかり対応しながら、 GRACEのさらなる成長を支えていきたいと思っています。