地元の経済団体の集まりで、ある社長が「カスタマージャーニー」を経営に生かしていると話していました。興味があるので、概要を教えてください。(加工食品製造販売)
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを認知し、理解を深め、購入・契約に至るまでの道筋のことで、それを図式化することを「カスタマージャーニーマップを作る」と言います。カスタマージャーニーマップを作ることで、顧客との接点や、それに応じたコミュニケーション方法を明確化できます。定型フォーマットが存在し、横軸が時間軸で、縦軸に感情や接点、提供する情報・施策などを配置する図表のような形式です。縦軸には自社の商品や顧客に合わせて必要な項目を採用するようにしましょう。
例えば「混ぜるだけでプリンが出来上がるキット」という機能の商品があるとします。普段コンビニなどで市販のプリンを買っている人は、この商品を見て、いきなり「欲しい」となるでしょうか。恐らく、認知してから「調理時間は数分」「卵と牛乳だけで作れる」「やさしい素材だけで安心」「市販のプリンより甘さひかえめ」「お気に入りのインフルエンサーが使っている」などの情報に徐々に触れ、少しずつ買いたい気持ちが上がってくると思うのです。そのような購入までのストーリーをペルソナ(購入者のプロフィルや背景)ごとにシナリオとして描くことで、与える情報の内容やタイミングをあらかじめ設計して、チームで戦略的に商品への興味関心を上げていく活動が可能になります。
点と点の施策が線でつながる
カスタマージャーニーマップは、以下の手順で作成します。初めに、ペルソナ(顧客像)の設定を行います。顧客インタビューを行い「どのようなプロフィルの人が、何をきっかけに商品と出会い、購入に至ったのか」をヒアリングすることで、複数のペルソナを設定することが可能です。その一つのペルソナに対し、課題や背景・感情などの事情と、その時に与えたい情報(コンテンツ)と接点、そして、情報を与えることによってどう変化して欲しいのかを書き出していきます。つまり、カスタマージャーニーマップはペルソナごとに一つ作る必要があります。
カスタマージャーニーマップが出来上がったら、各部署で共有して意識合わせや、担当施策の共有をしていきます。広報・広告、マーケティング、ウェブやコンテンツ制作、営業など、複数のセクションでこのカスタマージャーニーマップが羅針盤となることで、点と点の施策が線でつながり、相乗効果を生むようになってきます。カスタマージャーニーマップは「作って共有して終わり」ではありません。新たな気づきや、新しく追加した施策を加筆・修正しながら運用していきましょう。
カスタマージャーニーの歴史は古く、1998年ごろから使われているフレームです。昨今では「古い」と言われることもありますが、検討期間が長く衝動買いしにくいアイテムのマーケティング活動において、複数回のコミュニケーションを設計するのに向いています。商品の特性を見極めて、カスタマージャーニーのアプローチを採用してください。