2024年7月号Vol.135

【レポート】行政手続きのDX自治体DXの進捗調査に見る行政デジタル化の状況

今年4月に公表された『自治体DX・情報化推進概要』(総務省)の結果から全国の市区町村での行政手続きデジタル化の進捗状況を確認する。

「オンライン申請」システム導入が急伸

 ここ数年で、市区町村における行政手続きのデジタル化が急速に進んだことは、皆さんも実感されていると思います。このことは、『自治体DX・情報化推進概要』でも明確に表れています。
 「オンライン申請を可能とするための汎用的電子申請システム」を導入済みの市区町村は1,079団体(全体の62%超)と、1年間で347団体増加しました。
 図表1は、市区町村の規模別に導入済み団体の割合を示したものです。これを見ると、規模に関わらず導入率が伸びていることが分かります。また、「システムを導入予定」も170団体以上となり、オンライン申請の普及に向けたシステム整備は今後も確実に進んでいくと見込まれます。
 次に、自治体が優先的にオンライン化を推進すべきとされる59手続きから、サービスの利用状況を確認します。「住民のライフイベントに際し、多数存在する手続をワンストップで行うために必要と考えられる手続」の利用率は、最大でも転出届の5・5%です。これは極めて低い数値で、オンライン利用はほとんど進んでいないように見えます。
 しかし、市区町村ごとの回答が記載された個別資料(オンライン利用状況調査)を見ると、その印象は一変。それぞれの手続きで、オンライン利用率が高い団体が存在します。利用率の高い手続きにばらつきがあるのは重点分野の違いと思われますが、これはオンライン申請へのシフトが進むことを示唆する結果といえるでしょう。
 では、窓口デジタル化はどこまで進んでいるのでしょうか。
 図表2は、「書かない窓口」を〈導入済み/導入を検討する〉団体の割合を示したものです。人口規模が大きくなるほど導入済みの割合が高くなる傾向は、他の調査項目と同じです。ここで導入済み団体の割合を見れば、本格的な普及はまだこれからといえます。
 注目されるのは、導入済み団体の割合と、これに導入検討中の団体を加えた割合との差で、全てのグループで数値が急上昇します。このことから、書かない窓口に対する市区町村の注目度・期待感の高さが伺えます。
 なお、『自治体DX・情報化推進概要』の結果は、23年4月1日現在の状況を取りまとめたものであり、先述の数値からも現時点までに行政手続きのデジタル化は一段と進んだと考えられます。

図表1 「汎用的電子申請システム」の導入割合(人口規模別)

図表1 「汎用的電子申請システム」の導入割合(人口規模別)

図表2 「書かない窓口」を導入済み・検討中の団体割合(人口規模別)

図表2 「書かない窓口」を導入済み・検討中の団体割合(人口規模別)

業務プロセス全体のデジタル化へ

 今回の調査では、『フロントヤード改革』で示された「住民との接点の多様化」についても項目が追加されました。まだ件数は少ないものの、リモート窓口や移動窓口に取り組む団体が登場しており、今後の動向が注目されます。
 さて、行政手続きのオンライン化と窓口デジタル化を本格的に普及させるには、住民と職員がその効果を実感・確信できなければなりません。そのためにはオンライン申請と窓口、そして業務のそれぞれのシステムを連携させる一気通貫のデジタル化が重要です。
 オンライン申請システムや窓口システムに登録された申請データを、基幹システムに連携する〈フロント–バック連携〉で、入力にかかる職員負担を軽減します。加えて、業務システムのデータをオンライン申請システム等で利用する〈バック–フロント連携〉により、住民の申請にかかる手間の削減と、正確な申請データの作成につなげます。
 これにより、住民との接点から職員の業務にいたる業務プロセス全体を、デジタル技術で変革することが最終的に目指すゴールです。TKCでは、「スマート行政DX」というコンセプトを掲げその実現をご支援しています。
 もちろん、システム導入だけではDXは実現できません。
 特集座談会(本誌2~7ページ)でも語られているように、DX推進には業務プロセスの見直しや組織文化の変革、職員のスキルアップなど多角的なアプローチが欠かせません。どの団体も悩み、試行錯誤しながら取り組んでいます。その経験の共有が、全国の市区町村の皆さんの参考となることを願います。

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