2024年7月号Vol.135

【スマート行政最前線】公金収納拡大で、進むキャッシュレス納付

株式会社TKC 自治体DX推進本部 武長 浩史

地方税お支払サイト等を利用した納付手段(公金収納拡大後の実現イメージ)

 『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画第2・3版』(2024年2月5日総務省公表)において、自治体DXの重点取組事項に「公金納付におけるeLTAXの活用」が追加され、eLTAXを活用した公金納付を〈遅くとも26年9月までに開始する〉旨が示されました。
 そして、今年6月に成立した「地方自治法の一部を改正する法律」では、eLTAXを用いた公金(地方税を除く)の収納事務を地方税共同機構が行う旨が規定され、対応に向けた準備が進んでいます。
 eLTAXを活用した電子納付は、19年10月に稼働した「地方税共通納税システム」から始まりました。23年4月からは、賦課税目の納付書に「地方税統一QRコード」(eL–QR)を印字することで、「地方税お支払サイト」による電子納付やスマートフォン決済などでの納付が可能となりました。
 地方税共通納税システムの利用実績は、24年3月末時点で約12兆円、納付件数8,000万件を超えています。今年度からは、その他全ての税目(確定税額通知分)の納付書にも原則としてeL–QRが印字されるため、これを利用した地方税納付が増大することが予想されます。DX推進計画の重点取組事項である「公金納付におけるeLTAXの活用」により、地方自治体へのキャッシュレス納付は今後さらに拡大することとなります。

eLTAX活用の検討経緯

 eLTAXを活用した公金納付の検討は、『規制改革実施計画』(22年6月閣議決定)からスタートしました。その後、『令和5年度税制改正大綱』で、地方税以外の公金の納付についてeLTAXの活用を検討することが示されました。
 さらに、23年の『規制改革実施計画』(6月21日閣議決定)では、〈遅くとも26年9月までに開始する〉ことが明記されました。これらの検討を経て、このほどDX推進計画の重点取組事項に組み込まれました。
 対象となるのは、「普通会計に属する全ての公金」と「公営企業会計に属する水道料金や下水道料金」です。
 特に重点的に要請するものとして、「いずれの地方公共団体においても相当量の取扱件数がある公金」が掲げられています。具体的には、〈国民健康保険料〉〈介護保険料〉〈後期高齢者医療保険料〉の三つです。地方税とこれらの公金の電子納付を実現することで、公営企業を除く全会計に属する公金の9割をキャッシュレス化できると想定されています。
 また、道路占用料や行政財産目的外使用許可使用料など、「当該地方公共団体の区域外にも納付者が広く所在する公金」についても、重点的に要請する対象とされています。

市区町村における影響範囲

 公金収納におけるeLTAXの活用に伴い、市区町村では以下の影響が想定されます。ただし、これらは本稿の執筆時点(24年6月)の予測であり、今後、詳細な要件確定に伴い変更の可能性があることをご了承ください。

1 業務システムの改修

 公金を取り扱う各業務システムにおいて、①eL–QRに対応した納付書の作成、②「共通納税インターフェースシステム」へのアップロード、③納付情報の取り込み──などの改修が必要です。公金を取り扱う業務システムは多岐にわたり、また市区町村によっては財務会計システム等で納付書を作成する運用ケースもあり、システムの改修範囲は非常に広範となることが想定されます。
 加えて、対象となる公金には国民健康保険料や介護保険料、後期高齢者医療保険料といった「自治体システム標準化」の対象業務も含まれます。これを並行して実施する必要があるため、標準仕様書の規定を考慮しつつ、計画的かつ手戻りのない対応が重要です。

2 導入に向けた準備

 eLTAXで新たなサービスを開始する場合、団体連動試験を行う必要があり、公金収納の対応も同じと考えられます。これまでeLTAXに馴染みのない担当部局での導入を考慮すると、庁内インフラの環境整備や業務整理など早期の取り組みが欠かせません。
 また、納付書へのeL–QR印字に伴い納付書の様式変更が想定されます。納付書様式の変更にあたっては、ゆうちょ銀行や金融機関に加えて、コンビニ収納を行う場合はコンビニ収納代行業者などの関係機関の審査や読み取りテストなども必要です。審査や読み取りテストには一定の期間を要するため、これらに向けても早期の準備と対応が必要です。
 さらに、同時期には次期eLTAXの更改業務(26年9月)を控えており、団体連動試験の期間が重なることも予想され、効率的・確実な導入に向けた準備が必要です。

◇   ◇   ◇

 地方税共通納税の税目拡大に伴い、市区町村では収納チャネルの拡大や納付情報の電子的受領といったメリットがありました。また、金融機関にとっても窓口業務の削減につながり、公金収納の対応で享受できるメリットはさらに広がると考えます。とはいえ、導入にあたっては市区町村の負担が大きく、時期的に自治体システム標準化の対応と重なることから、計画的な準備と体制整備が重要です。

アーカイブ

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

※掲載団体様への直接のお問い合わせはご遠慮くださいますようお願いいたします。

  • お客様の声
  • TKCインターネットサービスセンター「TISC」のご紹介