税務官公署出身会員に聞く

きめ細かなサービスで関与先に安心を与えたい

髙橋正幸会員(TKC九州会沖縄支部)
髙橋正幸会員

髙橋正幸会員

35歳の若さで税務署を退官した髙橋正幸会員。不動産鑑定士の資格を持ち、資産税を得意とする髙橋会員には金融機関からの信頼も厚い。「税理士はサービス業の一つ」と語る髙橋会員に、関与先拡大法や事務所運営にあたる心構えについて聞いた。

「独立は早いほうがよい」と35歳で退官

 ──退官前のご経歴を教えてください。

 髙橋 普通科45期の採用で、担当は一貫して相続税・贈与税・土地の売買などの資産税でした。地元は愛知県ですので、採用は名古屋国税局です。最初の4年間は名古屋税務署の勤務でした。
 平成3年、2年間の期限付きで沖縄へ転勤で来たのですが、家内と知り合いまして(笑)。名古屋に帰らなければならないところを、お願いして退官するまでの11年間、沖縄に継続勤務していました。退官は平成14年、35歳のときです。

 ──かなり早い決断ですね。独立をお考えになったのはなぜですか。

 髙橋 退官前、すでに不動産鑑定士と税理士の資格を持っていて、「せっかくの資格を生かしたい。独立するなら早いほうがよい。気力も体力もあるうちに」と考え退官を決意しました。
 今では2つの資格の知識と税務署勤務時代の経験を生かし、相続税のご相談があれば実際に現場へ行き、写真を撮ったり実際に土地を測ったり、行政の規制を調べたりして精度の高い評価ができるよう心がけています。多くの場合、財産評価は路線価方式で行いますが、実際に調べないと分からない部分もあります。特に相続については不安を抱えている関与先が多いので、「安心した」「頼んでよかった」というお言葉をいただくときは、非常にやりがいを感じますね。

NMFであるべき税理士像を確信した

 ──TKCに入会された理由は?

 髙橋 いざ会計事務所を経営するとなると会計ソフトが必須ですが、実はどんなシステムベンダーがあるかあまり知らなかったのです。ただ税務署に『TKC会報』が届いていたので、TKCだけは知っていました。とりあえずパンフレットだけもらおうという軽い気持ちでTKC沖縄SCGサービスセンターに行ったのです。するとセンター長から「第7回TKCニューメンバーズフォーラム(NMF)in横浜」に誘われ、オブザーバーとして参加することになりました。
 税理士登録直後で事務所経営のノウハウもなく、本当に右も左も分からない状態で参加したのですが、講演や分科会など耳にすることすべてが新鮮でした。TKC理念を共有している方たちが大勢集まって独特な雰囲気に圧倒されながらも、あるべき税理士像や事務所像が明確になり「TKCの流れに乗っていかなければいけない」と思い、入会を決めました。

 ──TKCシステムについてはいかがですか。

 髙橋 平成18年に事務所を構えるまでの2年間、川畑順義先生(沖縄支部)の事務所で職員として実務を勉強させていただいていました。川畑先生はかなり縦横無尽にシステムを使われる方で、おかげで開業時にはある程度のシステムは使えるようになっていましたね。
 お気に入りのシステムはFX2MX2です。医療法人の場合、都道府県知事届出書類として「事業報告書」「監事監査報告書」を提出する必要がありますが、提出用の仕様で入力・印刷できるのは大変便利です。また「窓口収入集計表」等の入力画面から日報を打ち込めば、自動的に仕訳がされるので非常に良いですね。データの遡及処理ができない面も、私にとっては楽です。期末の時点で正しい月次データが確定しているので、決算処理は決算整理だけ。すべての関与先の処理が数日で終わります。

金融機関交流会が関与先拡大の主軸

 ──関与先拡大方法を教えてください。

 髙橋 私にとってメリットが大きいのは、金融機関との交流会です。面識のできた支店長や行員の方もよく事務所に来てくださいますし、銀行窓口に相続の相談で来られた方を紹介していただくことも多いですね。関与先になってくれた社長がまた紹介してくれることもあります。
 もちろん自分でも開拓しています。商工会議所や法人会、青色申告会などの会合には積極的に出かけて名刺交換の機会を増やしています。その縁でセミナー講師や、各組織の役職にお声かけしていただいたらできるだけお引き受けして、なるべく会の運営に参加・協力し、広い人脈づくりを心がけています。
 関与先の中には、ほかの事務所から移ってきた方もいらっしゃいます。「毎月集金にしか来ない」「聞いても十分に教えてくれない」など基本的な部分での不満が大きいようです。税理士はサービス業の一つと考えていますので、むやみに売上や関与先の拡大を追求することはせずに、関与先に納得してもらえるようきめ細かなサービスを提供していきたいですね。

覚悟を決めてどんどん外に出て行こう

 ──最後にメッセージをお願いします。

 髙橋 私は35歳で退官したので、年金や退職金はほとんどゼロでした。ある程度の売上がないと家族に辛い思いをさせてしまいますので、それなりの覚悟と努力、アピールは必要だと思います。どんどん外に出て「何かあったら、ぜひ声をかけてください」とお願いすることは重要になるでしょう。また同じ税金に携わる職業ではありますが、税務署と税理士事務所は全然立場が違います。事務所経営ノウハウを直に学ぶためにも、ぜひTKCの仲間になって事務所見学会へ積極的に参加したり、実務経験を積んだりすることをお勧めしますね。

事務所を手伝う美香子夫人と

TKC出版 篠原いづみ)


髙橋正幸(たかはし・まさゆき)会員
 平成14年に税理士登録、同年11月TKC入会。平成18年に開業。関与先件数は法人20社、個人25件。42歳。
 髙橋正幸税理士事務所   沖縄県沖縄市美原3‐19‐12‐202

(会報『TKC』平成22年7月号より転載)