- 目次
-

「もっと、ある。木工にできること。」をモットーに掲げ、木工部材製造業を営むトクエー。東京都内にショールームを開設するなど、近年は受注型のビジネスモデルからの脱却を目指している。徳永崇社長に意思決定のベースとなっている経営数値の見方を聞いた。
持ち前の技術力を生かしオーダーメード領域に進出
──業容を教えてください。

徳永崇社長
徳永社長 おもにシステムキッチンや洗面化粧台、家具に使用される木工部材の製造を請け負っています。もうひとつの柱がオーダーキッチン事業です。顧客からの要望に基づき、設計図の製作、部材選定からキャビネット、扉等の製造、施工まで行っています。
──40年以上の業歴をお持ちです。
社長 現会長である父が立ち上げた、徳永杢研がルーツです。創業当初はキッチン扉の製造をなりわいにしていましたが、加工機の導入など機械化を推し進め、キッチンキャビネットのパーツ生産も手がけるようになりました。
──強みは?
社長 システムキッチンは多品種、小ロット、かつ短納期の生産が要求されます。約1万種類の規格部材を保有し、1個から注文を受け付け、翌日出荷できるのが強みです。それと、オーダーキッチンや保育園向け家具といった、さまざまなオーダーメード製品に対応できる技術力もアピールポイントかもしれません。
──注力されている分野は?
社長 今後伸ばしていきたいと考えているのは、オーダーキッチン事業です。オーダーキッチンを完成させるには顧客のイメージした意匠に仕上げるべく、綿密なコミュニケーションを重ねる必要があります。規格品であるシステムキッチンと比べると、高度な技術とノウハウが求められる分、付加価値は高い。キッチンに対するニーズが多様化するなか、オーダーメード案件へのシフトは、時代の要請であると捉えています。
──具体的にどのような手を打たれていますか。
社長 昨年5月、東京都内に完全予約制のショールーム「MOK東京」を開設しました。われわれが設計、製造したキッチンと洗面化粧台を展示していて、製品に実際にふれて品質を確かめていただけます。ショールームを開いたのは、より多くの方にオーダーキッチンを身近に感じてもらえる場をつくりたかったから。企画、設計から施工まで、一貫して手がけられる点をアピールしたいとの思いもありました。
──反響はいかがでしょう。
社長 引き合いは着実に高まっていて、受注に結びついた商談も複数あります。来店の動機は、MOKウェブサイトからの申し込みや設計士からの紹介などさまざまです。個人客だけでなく住宅工務店からも、キッチンや家具に関する問い合わせが入るようになりました。オーダーキッチンで差別化を図ろうとしている住宅工務店と対等である“横請け”の関係を築きたいと考えています。顧客のニーズや製品に対する評価が、ショールームに常駐している営業担当者から直接届くようになったのも大きな効果です。

東京・中野区にあるショールーム「MOK 東京」(左)、システムキッチン等の部材を製造する本社工場(右)
計数管理の細分化で精緻な分析が可能に
──浅野雅大税理士と4年前に税務顧問契約を締結されたと聞いています。
社長 顧問契約を結んだきっかけは、中小企業家同友会主催の勉強会への参加です。経営指針をテーマとする内容で、浅野先生が講師を務められていました。創業以来お世話になっていた顧問税理士の方がご高齢だったこともあり、ちょうど新たな税理士先生を探している時期だったんです。浅野先生のお人柄と、月次決算可能なTKCシステムに引かれ、顧問契約を結びました。
──以前は、いわゆる年一決算だったと……。
社長 日々の取引をエクセルシートに記録して月末に集計するという、月次決算に近い作業は行っていました。ただ、月ごとの大まかな業績がわかるレベルで、翌月にふたを開けてみたら赤字だったというケースも少なくなかった。前年の実績や予算、同業他社と比較する発想もありませんでした。

徳永美由紀経理担当
徳永美由紀経理担当 当時はエクセルシートに、仕入れや外注加工費といった項目名と金額を取引ごとに入力していました。そして入力がひととおり終わったら、あらかじめ組んでおいた計算式で集計して、利益が出ているか確認するんです。1人で運用していたので作業がおくれてしまうときがあり、入力ミスがないか不安な面もありました。
──『FX2クラウド』では、業績を部門別に管理されているとか。
社長 システムには5つの部門(本社工場、特注工場、坂祝工場、平島工場、東京営業)を登録しています。オーダーキッチンは特注工場で、システムキッチン等の規格品は、それ以外の3カ所の工場で生産しています。業績を細分化して管理することで異常値が見つかった場合、問題が発生している部門を特定し対策を早期に施せるようになりました。
──注目されている業績指標を教えてください。
社長 やはり経営活動の原資となる限界利益を最も注視しています。限界利益を左右するのが材料費で、木材価格はウッドショックといわれるとおり、高止まりしている状況です。そのため《365日変動損益計算書》で材料費の動向に気を配り、販売価格の見直しを適時図っています。加えて、人件費も気になるところです。大手企業が賃金を引き上げているなか、中小企業もこの動きに追随しないと人材を獲得できません。当社でも人件費は上昇基調にあり、付加価値の高い業務に軸足を移し、限界利益を増やして人件費に充てていきたいと考えています。
月次業績を共有して打ち手を迅速に施す
──業績を詳細に分析して手を打てるようになったわけですね。
社長 TKCシステムを利用して、月次決算の内容がガラリと変わり、前年同月あるいは目標と比較して業績を把握でき、差額の原因を掘り下げられるようになりました。変動の大きい勘定科目が見つかったとき、浅野先生と一緒に要因を考えられるのも心強いです。

浅野雅大顧問税理士
浅野 巡回監査時に部門ごとの限界利益率を確認しており、目標とかい離があると、徳永社長は大抵原因を言い当てられます。『FX2クラウド』が登場して間もないころに利用を始められましたが、奥さまと従業員の方がシステムの操作にすぐに習熟され、精度の高い仕訳を実践されています。
──経理業務は変わりましたか。
徳永経理担当 システムを従業員のパソコンにもインストールして、仕訳を分散入力しています。「銀行信販データ受信機能」の活用により、預金取引を簡単に仕訳計上できるようになったので助かっています。また、TKCシステムから質問できる「まいサポート」によって、操作方法等の不明点を解消できるのもありがたいです。
──巡回監査時以外にどのような場で業績を確認していますか。
社長 取締役や工場長などが出席する役員会を毎月オンライン形式で開催し、全社業績をメンバーと共有しています。業務が計画どおりに進んでいるか工場長から報告してもらうほか、部門別の月次業績を事前に送付して、目標達成の打ち手を話し合っています。
浅野 業績開示にも積極的です。「TKCモニタリング情報サービス」で5つの金融機関と保証協会に月次試算表を送信されています。この取り組みが経営者保証解除にもつながりました。
──目標を教えてください。
社長 オーダーキッチン事業を軌道に乗せ、2倍の生産体制を整え、他メーカーと一緒にオーダーキッチンをもっと世の中に広めたいと思います。われわれの仕事が認知されれば、社員はいっそう誇りをもって働けるようになると期待しています。
(取材協力・浅野雅大税理士事務所/本誌・小林淳一)
名称 | 株式会社トクエー |
---|---|
業種 | 木工部材、家具製造業 |
創業 | 1982年8月 |
所在地 | 岐阜県羽島郡岐南町野中7-135 |
売上高 | 6億円 |
従業員数 | 49名 |
URL | https://www.tokuee.co.jp |
顧問税理士 |
浅野雅大税理士事務所
顧問税理士 浅野雅大 岐阜県本巣郡北方町曲路3-46 URL: https://www.asano-zeirishi.jp |