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北海道帯広市のELEZOは、全国の著名レストランにジビエ(食用となる野生の鳥獣)の肉を卸販売している。狩猟から生肉処理、食肉加工まで一気通貫で行える生産管理体制を構築しているほか、レストラン事業なども評判を呼んでいる注目の企業だ。

プロフィール
ささき・しょうた●北海道帯広市生まれ。東京都や長野県軽井沢市の有名店でフランス料理の修業をした後、3代続く実家のカフェレストラン「繪麗(えれ)」に就職。2005年、独立。社名を長兄が継いだ家業の店名と「蝦夷(えぞ)」を組み合わせた造語、ELEZO(エレゾ)とした。
佐々木章太 氏

佐々木章太 氏

 当社は北海道十勝に生息している野生動物を狩猟し、いただいた命を解体処理し、部位ごとに分けた肉を食材としてレストラン等に卸す事業を行っています。扱っている食材は鹿、ヒグマ、ハト、カモ、エゾユキウサギ、エゾライチョウ、キジなど。当社では野生肉本来のおいしさを最大限引き出し、かつ衛生面でのリスクを極力減らす仕組みをつくっています。

 ハンターは、当社の定める狩猟ポリシーに同意し、その基準をしっかりと順守できる会員に限定しています。当社が厳格なルールをもとに手掛けるジビエは、①最良の食材となるように、臓器や身体を傷つけないよう首と頭しか狙わない②野外での解体処理は行わない③1時間30分以内に当施設に運び込み処理を行う④対象月齢は雌4歳、雄3歳を上限とする──など人の口に入る食材としての基準を定めています。

 狩猟は、当社独自のルールを理解し実行するハンターとの信頼作業でもあります。これまでのハンターは「立派な角を持ち帰ることが誇り」とばかりに、より高月齢で体格のよい獲物を狙いがち。しかし歳を重ねた鹿は、肉質が劣化します。ハンター目線でなく料理人目線で狩猟を実行できる体制や環境を仕組み化していることが最大の特徴です。現在、会員ハンターは約30名で独自のネットワークがあり、日本で始めてハンターを正社員として雇用したのも当社です。

販売先は口コミで全国300店

 2009年に、とかち帯広空港から車で1時間ほどの豊頃町大津に食肉総合ラボラトリーを建設しました。ラボラトリーでは食肉解体処理、食鳥処理、加熱加工製造、生ハムやサラミなど非加熱加工製造等を一気通貫で行っていますが、一つの施設でこれだけの複合的な役割を果たせる仕組み作りは世界的にも例がなく、大きな特徴の一つになっています。

ジビエの知見を家畜にも応用

ここがポイント▼
  1. ①厳しい基準を設けた会員制のハンターネットワークを組織
  2. ②世界でも珍しい生肉解体から熟成加工までの一貫管理体制を構築
  3. ③ノウハウを生かし、業界の発展に貢献

 当社の構成としては、①狩猟や家畜家禽の生産を担う「生産狩猟部門」、②全国のレストランに生肉の卸販売を行う「枝肉熟成流通部門」、③美しい仕立てで各界から好評のテリーヌやパテドカンパーニュなどの製品を百貨店やセレクトショップ・自社サイトで販売する「シャルキュトリ製造部門」、④「レストラン部門」の4部門を展開しています。卸売先のレストランは日本全国で現在約300店を数えますが、ありがたいことほぼすべてクチコミでのご紹介によるものです。またレストラン部門は東京・虎ノ門ビジネスタワー内の「エレゾゲート」、北海道・豊頃町大津のラボラトリーに隣接して2020年10月にオープンしたオーベルジュ「エレゾエスプリ」の2店舗で運営しています。

 さらに10年ほど前から、ジビエの狩猟・生産部門で得られた知見を転用して家畜や家禽でも最高品質のクオリティーとなる生産物の育成を目指しています。ラボラトリー周辺の山林で、豚やシャモ、マガモなどを野生の生活を意識した放牧型スタイルで飼育しています。

 例えば放牧豚では、通常生後6カ月で屠殺されるところを1年半の期間をかけています。第1次成長期に満たない生後6カ月の間にいかに早く成長させ、現金化するかというのが経済動物を扱う経営者の視点になります。しかし、野生肉がおいしくなるプロセスを畜産に落とし込もうとしている当社は、できるだけ自然な環境で健康に成長した肉の味わいや奧深さを追求しているので、第2次成長期が終わるタイミングを着地点と見据えています。

 今後は①積み重ねてきたノウハウを海外でも確立する②日本の食肉産業をより強くしていくための若手育成アカデミーの設立を検討しています。狩猟や生産、生肉解体などそれぞれの分野で「エレゾあり」と評価していただけるような会社を目指したいですね。

(協力・Abliss税理士法人/本誌・植松啓介)

会社概要
名称 株式会社ELEZO
業種 食肉生産・狩猟、食肉加工製品製造販売、レストラン運営
創業 2005年10月
所在地 北海道中川郡豊頃町大津125
社員数 15名
URL http://elezo.com/

掲載:『戦略経営者』2023年9月号