東京都では、育児・介護と仕事の両立を後押しする独自の登録制度を設けていると聞きました。同制度の概要と登録することのメリットを教えてください。(金属製品製造業)
東京都は家庭と仕事の両立について積極的に取り組む事業者に対し、「家庭と仕事の両立支援推進企業」として当制度への登録を促すとともに、「両立支援推進企業マーク」を付与しています。具体的には「育児と仕事との両立」「介護と仕事との両立」を2本柱とし、事業者が提出する申請書類に基づいて、東京都職員が申請事業者へ訪問し、ヒアリングや制度の整備状況、および利用実績の確認などがおこなわれます。
その結果、制度の整備状況や利用実績をポイント形式で集計し、その点数に応じて育児・介護それぞれ3段階の★マークがついた「両立支援推進企業マーク」が付与され、東京都の専用ウェブサイトに事業者名などが公表されます。評価については「育児」と「介護」で分けて行われるので、例えば介護休業の利用実績が全くないといった場合でも、育児休業の取得実績があるというような場合であれば登録が可能です。
実際に登録するためには、①都内で事業を営んでいる企業等であること(個人事業主も含む)②常時雇用する従業員を2名以上雇用していること。なお、常時雇用する従業員のうち1名は、6カ月以上継続して雇用していること③加入条件に該当する従業員を雇用保険の被保険者としていること④就業規則を作成して労働基準監督署に届け出を行っていること⑤過去5年間に重大な法令違反等がないこと──などの要件を満たしている必要があります。
採用への効果が期待
当制度の登録には大きく分けて2つのメリットが考えられます。
1つ目は登録を目指すことで、無理なく社内環境の整備が進められる点です。評価項目はいずれも育児・介護休業法に対して「法定以上の定め」となっているか、「就業規則等にきちんと明記されて届け出がなされているか」など、社内環境の整備における基本事項が中心であり、加えて育児・介護休業等の取得実績があればさらに加点されるといった仕組みになっているため、極端に難しいものがないと言えます。そのため比較的に中小企業でも取り組みやすい内容になっています(大企業は原則、法令を上回る対応が必要です)。
2つ目は採用活動への活用です。現在、どの事業者においても従業員の確保は事業拡大・安定にむけた最重要課題ですが、社会環境の変化も相まって、求職者が会社に求めるものにも変化が見え始めています。例えば大手就職サイトの調査によれば、新卒採用において学生が就職先に求めるもの1位だった「自分のやりたい仕事ができる会社」が、2020年卒を境に「安定している会社」に入れ替わったという結果が出ています。
安定している会社とは、福利厚生の充実、安心して働ける環境のことなどを指しており、後者には育児との両立などを含む社内環境の向上にむけた取り組みも関係しているとされています。
両立支援推進企業マークがあることで、感受性豊かな若年層の求職者に対して、自社の環境を東京都からのお墨付きという分かりやすい形で堂々とホームページや求人広告等でアピールすることができるので、応募者増加への施策としても期待できると言えます。